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9 帝都学園入学前夜

 帝都学園の入学日は4月1日だ。いよいよ2日後に迫った。シルビアは、トールウォールの拠点に戻っている。パーティーのメンバーたちは、僕らのダンジョン攻略の日、シルビアが僕の屋敷で寝込んでいると思い、揃ってお見舞いに来ていた。ところが、僕らがシルビアを連れてダンジョンに潜っていると聞き、唖然としたそうだ。そして翌日には、シルビアが僕たちと新規の第13階層を攻略したことを知り、皆は開いた口が塞がらないで開きっぱなしだったようだ。悪かったね。知らせる間もなかったんだよ。


 帝都のトーマス商会から知らせが来ていたので、僕は協会に出掛ける。頼んでいたことがあったのだが、それが調ったようだ。

「こんにちは、エルンストさん。」と支店長にあいさつをする。

 まず、頼まれていた美容ポーションの2回目の追加オーダー1,000本を卸す。今度は、完全な帝都用だ。先日ダンジョンで回収した水晶で瓶を作ったので、上級品となる。小売価格は、小金貨4枚と従前の倍だ。さすがに帝都は、貴族の別邸もあるし富裕層が多い。皇族の献上品の噂は広がるのが早い。この金額でも早々に売り切れになるのは確実と見ている。6掛けで代金小金貨2,400枚分の金貨を受け取る。

「では、こちらにお越しください。」とエルンストは、僕を連れて奥の部屋に案内する。そこには、僕と同じくらいの背丈の2人の女性が僕を待っていた。


 アンナとエルザは、地方都市の大商人の子弟だ。家を継ぐ兄弟はいるが、自分たちもゆくゆくは商人になるか、商人の家に嫁いで商売を盛り立てたいという願いを持っている。そこで、父が懇意にしている大商会に頼み、見習いとして修行をさせてもらっているのだ。

 2人は、ほとんど同じ時期にトーマス商会の見習いとなったが、年も同じなので、お互いに困ったときは助け合ったりして仲良くしている。

 先日、商会本部のトーマスが帝都支部に立ち寄った際、2人は呼び出され、今回の話を打診された。エルンスト支店長の推薦があったのだが、ミッションが特殊で、2人がプレッシャーで潰れてしまわないか心配しての打診だ。

 しかし、およそ挫けるという言葉を知らない2人は、二つ返事で了解した。

「こんなやりがいのありそうなお話し、是非お請けさせていただきます。」と。

 そうして、この日が来た。


「こちらがアンナ、こちらがエルザです。2人は、大商人の娘で、当協会で3年ほど修業し、成人して1年ほどになります。礼儀作法をわきまえ、世の中のことにも明るく、もってこいの人材でございます。」とエルンストは、僕に2人を紹介する。想定の僕より年上か。

「僕はアキラ・フォン・ササキです。2日後に、帝都学園に入学するので、そのために御側付きとして、僕の身の回りの世話係をしてほしいのです。話は聞いていますね。学園では僕と一緒に行動することになります。お茶会に呼ばれることもあります。皇族とも付き合うことになりますが、務まりますか。」と念のため確かめる。

 2人は、揃って、「かしこまりました。お任せください。」とスカートを少しつまみ、ちょこんと膝を折ってあいさつを返した。


 このあと、2人の給料や雇用条件を話し合い、2人の荷物を馬車に積み込み、トーマス商会を後にした。屋敷に戻る途中で馬車を停め、2人に学園用の服を何着か求めた。日数がないので、セミオーダーの高級品を買い、翌日に屋敷まで届けてもらうことになった。

 そして屋敷に帰り、アンナとエルザは、執事やメイドたちに紹介され、3階に用意していた2人だけの相部屋に案内された。


 荷物も運びこまれ、2人は一息ついた。

「わっ、このベッド、ふっかふっか。」

「アキラ様って成人しているって聞いていたけれど、背丈も顔つきも少年みたいね。」

「裕福そうだけれど、ヒノノボルクニの王族なんだって。」

「皇帝に謁見して宝物を献上したそうよ。」

「ヒノノボルクニってどこにあるの。」

「さぁ、知らないわ。これまで聞いたこともなかったもの。」

「学園って話には聞いているけれど、どんなところかしら。」

 などと、たわいない会話が交わされた。


 入学は2日後なので、明日は、1人でダンジョンの13階に潜ってこようかな。庭の肥料やポーション容器用の水晶ももっとほしい。と思ったが、入学前日の打ち合わせのために、公爵別邸に呼び出された。仕方ないから、週末にマリエラと潜ろう。

 公爵別邸と僕の屋敷の間には、テレパフォンが設置されている。別邸に滞在している公爵から、「明日、最終の打ち合わせをしたい。」と僕に念話連絡があったのだ。

 そこで、その夜は、アンナとエルザと一緒に食事をとりながら、翌日の予定を話して準備をさせた。アンナとエルザは、行動を一緒にするため、屋敷では僕とともに食事をとることになっている。


 翌日、朝食を終え、馬車で屋敷を出る。公爵邸には、紹介を兼ねて、アンナとエルザの2人を連れていく。

 公爵邸に招き入れられ、客室に通された。そこに、公爵とエリザベートがマリエラを伴って入ってきた。僕は、早速、アンナとエルザを紹介する。

「学園で僕の世話をしてくれる御側付きのアンナとエルザです。トーマス商会の紹介です。」と。

 2人は、丁寧に自己紹介をした。公爵相手でも臆す様子を見せない。商人は心の鍛え方が違うね。うん、合格だ。

 それから、エリザベートには、ベリーを貸し出すことにし、ペットの白猫として学園に連れていくことになった。学生がペットを教室に連れてくるのは自由なんだね。そんな発想なかったよ。

 授業の様子や上級クラスにいる学生たちの背景や要注意人物のことなども聞いて、入学日の前日が終わった。


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