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7 帝都ダンジョン再攻略

 ダンジョン再攻略の朝、マリエラが僕の屋敷に来て、そこからシルビアを加えた3人で馬車に乗ってトーリードに向かう。相変わらず朝早くからダンジョンには人が多い。僕らは、12階層行の魔法陣に入るが、もちろんそこは誰もいない。

 今回は、時間もないので雑魚は相手にしないで、チェルニーたちに乗って、一気にボス部屋まで行く予定だ。


 さて魔法陣で一気に12階層に着いた。僕は、早速チェルニーたちを呼び出す。シルビアは、話には聞いていても、初めて見る光景に驚愕している。マリエラも最初は同じだったな。やっぱり姉妹って似ているよね。

 シルビアは、マリエラと一緒にベリーに跨った。さあ出発だ。


 僕らは、左右から襲ってくる大目玉やミノタウロスを、チェルニーたちに乗ったまま次々に倒していく。途中の回収は、ヒヒのパヴィアンたちに任せたので、手間が省ける。大目玉は、サイクロプスかなとも思ったが、角があるのでやはり一つ目の鬼であろう。鬼の褌ではなく、原始人のような毛皮を羽織ってはいたが。

 少し進んで、ミノタウロスが5体ほどいる場所に出た。

 そこで僕は「丁度いいね。シルビア姉さん、試し切りをしよう。」と言って進行を停める。

 僕らは、チェルニーたちから降り、ミノタウロスたちに向かって武器を構える。


「シルビア姉さん、ミスリルソードだと、ミノなんか平気でぶった切れるよ。それから盾もリフレクションが付いているから、殴られても相手が吹っ飛ぶよ。でも反動には注意してね。」と注意を与える。だが、前回ミノタウロスに吹っ飛ばされたシルビアは、若干及び腰だ。

「大丈夫だよ。自信を持って。今度は、身体に防御がかかっているから、絶対飛ばされないよ。」と僕は励ます。


 そうしているうちに、ミノが5体並んで僕らの前までやってきて、ブオッ、ブオッ、ブオッーと鬨の声を上げる。えぃえぃおーのつもりかね。

 僕らは、「さあ、やってしまえ!」と、ミノたちに襲い掛かった。


 1体のミノタウロスがシルビアを目掛けて斧を振り下ろす。思わず、シルビアがその斧を盾で防ぐと、ミノはよろけては後ずさる。

「そこだ!シルビア姉さん。」

 僕の声に応じて、シルビアは素早く動く。そしてミスリルソードでミノの腹を一文字に切り裂き、返す刀でその喉笛を一刺しにした。さすがに冒険者、反射神経が抜群だ。これではミノは、堪らない。その場にドドッと崩れ落ちた。


「すごいじゃないか。シルビア姉さん。」と僕は近寄って、健闘を讃えた。シルビアは、ニッコリする。

 しかしすぐに、マリエラの倒したミノタウロスを見て、「マリエラがやったの。いつの間にそんなに強くなったの?」と驚いた表情で尋ねる。シルビアが戦っている間に、僕とマリエラは、魔斧と雷剣を使って、余裕で4体のミノタウロスを倒していたのだ。

 そういえば、先日は、シルビアの意識が無くなったあとに僕らが参戦したので、僕らの強さを間近では見ていなかったんだね。あとから、アルバートたちから話には聞いていたようだけれど。

 でもよかったよ。これでミノへの苦手意識は吹き飛んだと思う。


 こんな調子で、シルビアは、何体もミノタウロスを倒した。最後には、「案山子みたいなやつらだな!」と豪語していた。子どものころ、田舎で案山子を叩いて大人に叱られたことでもあるんじゃないかな。シルビアを見ていれば、容易に想像できる光景だね。


 そうこうしているうちに、ボス部屋に到着だ。チェルニーたちに乗って攻略するとやはり速いな。斥候も必要無いし、戦闘にも獲物の回収にも時間を掛けないので、前回の2泊分を優にすっ飛ばしたよ。

 こうして僕たちは、ボス部屋に入った。シルビアには、トラウマを完全に解消してもらわないとね。


「打ち合わせ通りだよ。シルビア姉さん。」と僕が声を掛ける。この時に備えて、当然事前に打ち合わせをし、戦い方のシミュレーションをしている。パターンは変わらない。予習がそのまま成果に出るはずだ。

「シルビア姉さんは、真ん中の従者ミノを倒せばいいからね。もう十分倒せるよ。これまで倒したミノで確実にレベルアップしているからね。」と暗示をかける。倒し方と避け方は、十分に練習している。シルビアも今回は、従者にも負ける気がしていないと思う。

 さあ、行こう。


 ガシーン、ガシーンと派手な音を立ててはいるが、シルビアは善戦している。従者ミノと危なげなく戦っている。途中で倒した普通ミノより大きくて強いだけあって、さすがに案山子のようには倒せないが、一進一退でいい勝負をしている。


 あっ、隙を突いて、シルビアがミノの腹に剣を突き刺した。ミノも最後のあがきで、斧を勢いよく振り回す。そんな隙を窺いながら、シルビアの剣がミノの身体を少しずつ削っていく。そうしてミノの動きも次第に鈍くなる。ミノは、ガシッっと遂に片足を付いた。その機を逃さず、シルビアは、斧を持ったミノの右手をスパンと切り落し、その首に切り込んだ。すると、ドゥと大きな振動を立ててミノは倒れた。

 よかった。シルビアもこれで復活だね。僕らは、早々に従者4体を倒して、シルビアの奮闘に声援を送っていたのだ。


 さあ、ボスのミノタウロスだ。ボスは両手で斧を、すさまじいスピードと威力で振り回す。今度は3人なので、正面と両脇から攻める。両脇から同時に攻め込むと、ミノの両手が一杯になるので、そこを狙って正面から腹や喉を切り裂くといった作戦だ。さあ、両脇から同時にかかろう。一歩遅れて正面からだ。

 こうしてボスミノには、皆で打ちかかって、特に難なく倒したよ。ここのボスはちょろいね。


 さあ、宝箱の中身は何だろうね。

 安全を期して僕が蓋を開ける。大丈夫、皆で中を覗き込む。

「あっ、マジックバッグだ!!」シルビアが大きな声を上げる。先の攻略時と同じ宝だ。

「シルビア、もらっておいたら。」と、マリエラが事もなげに言う。僕たちは、たくさん持っているからね。

 シルビアは、満面の笑みで、「これ、ほしかったの。」と一言。やっぱり、喜んでもらえる人にあげたいよ。頂き物は、本気で喜ぶのが世渡り上手だ。人って自分で喜ぶだけでなく、人に喜ばれることが案外快感なんだよ。

 マリエラは、12階層でシルビアが倒した獲物からの回収品を、早速そのマジックバッグに移してあげていた。シルビアは、ほくほく顔だ。

 こうして、12階層は、無事に再攻略を終えた。そしてシルビアもPTSD(外傷後ストレス障害)に陥らずに済んで、めでたしだ。冒険者って文字通り打たれ強いけれどね。


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