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4 帝都のダンジョン

 帝都にはダンジョンが3つ、どれも城壁の外にある。場所もそれぞれだが、帝都中心部から10Km程度は離れている。ダンジョンの周辺には、どこも大きな街が広がっている。冒険者ギルドは、中心部に本部があるが、それぞれのダンジョンに支部が置かれている。


 ダンジョンの1つ目は、アルダスという初級ダンジョンだ。所在のアルダス地区の名称が付されている。20階層の攻略しやすい造りのもので、低レベルの冒険者に特に人気がある。初心者から中級者向けだ。だが、最高階層まで行き着いたパーティーはいない。16層までが最高だ。その階層までにいるのは、スライムや動きの鈍い小魔獣や昆虫類とせいぜいゴブリンだ。ただ、17層になると難易度がぐっと上がる。また、冒険者ギルドが最高層の攻略を許可制にしているので、あえて挑もうとする上級レベルの冒険者はいない。冒険者ギルドとしては、最高層を攻略されてダンジョンを消滅させてしまっては元も子もない。


 2つ目は、トーリードだ。30階層のエドモンド公領にあるような正面からの実力突破タイプのもので、初級から上級までウエルカムだ。これは、12階層まで踏破されているという。1階層は主にスライムだが、12階層ともなるとミノタウロスが出る。各階層を順番にじっくり攻略するのに向いている。一番人気で、いつも冒険者で賑っている。攻略方針が立てやすいこともあり、ここを専門に攻略するパーティーも多い。


 3つ目は、ラビリンス。文字通り迷宮だが、トラップが至る所に設定され、非常に攻略しにくい。知らないうちに、パーティーのメンバーがいなくなっていたり、飛ばされたりする。何階層あるのかも不明だ。中に入ると、ダンジョンがパーティーメンバーの能力を測定して勝手に経路を設定するそうだ。入る度に内部の様子が変化するので地図も作れない。内部では他のパーティーと遭遇することもない。当然上級者向けだが、斥候、探知も必要で、また、慎重に進むため時間を要するところから、大人数のパーティーでないと、攻略はまず不可能だ。ただし、ドロップ品は、珍しいものが多く出る。


 僕らも学園が始まるまでに、ダンジョンに潜ってみたい。学園が始まるまで、2週間足らずなので、あまり日がない。マリエラが、以前帝都で冒険者をしていたとき、加えてもらっていたパーティーがあるらしい。そこで親しくしていたシルビアという女性冒険者に、連絡を取ってみるという。ラビリンスは別として、最初はどこかのパーティーに参加させてもらわないと、すぐには高階層に潜れない。


 冒険者ギルドの「尋ね人」の掲示板に木札を張り出したら、すぐに連絡が入り、冒険者ギルド本部で会うことができた。よかった、シルビアは帝都に滞在中だった。僕も最初から2人の邂逅に加わる。

「マリエラ、久しぶり!」「シルビア、元気にしていた?」とあいさつが交わされる。

 きれいな銀髪の女性なので、マリエラの金髪とコントラストが映える。マリエラより1つ年上と聞いている。マリエラより背が高いかもしれない。並んだ2人を見上げると、壁にでも向かい合っている気がする。まるで、金魔王と銀魔王が、人間界に降臨したという雰囲気だ。

「紹介するわ。こちらは、私の弟分のアキラ。少年に見えるけど、成人よ。」と僕を紹介する。

「初めまして。アキラ・フォン・ササキです。マリエラさんとは、エドモンド公領のダンジョンによく一緒に潜らせていただきました。この4月から、帝都学園に入学することになり、帝都にやって参りました。」とあいさつをする。

 シルビアは、「あっ、そう。よろしくね。」と簡単だ。冒険者の女性は、分かり易くていいね。

 僕らは、シルビアを誘い、冒険者ギルドを出て、近くの茶店に入った。


「シルビアは、まだ前のパーティーにいるの?」

「うん、トールウォールから動いてないよ。」

「近々、ダンジョンに入る予定はない?」

「7日後に、トーリードの12階に潜るよ。」

「私たち、補助でいいから連れて行ってくれない?見学したいだけなので、分け前はいらない。でも、いざというときは、役に立つよ。」

「そうか。12階層なので、われわれ7人では荷物運びが負担になるかなという話はしていたんだ。補助2人なら丁度いいから、リーダーに会ってみない?」

 ということで、トールウォールの拠点まで普通に歩けば1時間ほどの道のりを徒歩で向かった。

 シルビアの歩みはとにかく速い。長い足を使って蹴るようにして歩くので、自転車くらいのスピードはでているかもしれない。およそ半分の時間で拠点に着いた。


 帝都で長期活動をしているので、拠点は、トーリードの近くにアパルトマンの一室を借り上げているそうだ。7日後の準備のため、皆、拠点を出入りしている。

 僕らは、シルビアに招き入れられて拠点に入った。

「リーダー、いい補助者が見つかったよ!」とシルビアは、大声を出しながらリーダーの部屋に入っていく。

 ダンジョンの地図か何かを見ていたリーダーは、顔を上げて僕らを見る。

「マリエラ・・・?」とリーダー。知っているのか、知っていてもおかしくはないが。

「どうぞ、そちらに掛けて。」とリーダーは、僕らを座らせる。

「初めまして。僕は、アキラ・フォン・ササキです。よろしくお願いいたします。」と僕があいさつをする。

「アルバートだ。トールウォールのリーダーをしている。」とリーダーがあいさつを返す。


 マリエラが先ほどシルビアにした話をリーダーに繰り返す。

 リーダーは、「マリエラとアキラか。有名人だな。エドモンド公領ダンジョンの15階層を2人で攻略したんだって?」と言う。

「よくご存じですね。」とマリエラが言うと、「その程度のことを知らないようじゃ、パーティーのリーダーは務まらないよ。」と返す。

「それでは補助をお願いしたい。条件は、報酬はいらないってわけにはいかないので、2人で中金貨1枚でいいかい。あと、パーティーの実力で攻略したいので、手出しは無用だ。」

 さすがにリーダーだ。歯切れがいい。


「前日の昼過ぎに、隣の部屋に物資が運び込まれる。2人で全部は無理なので、それをできる限り、多く運ぶようにしてほしい。あと、ダンジョンは2泊の予定だが、予備日に1日とってある。朝夕の食事の用意もお願いしたい。ダンジョンは、ここから徒歩で20分の距離だ。われわれだと10分で着く。」とリーダー。


 マリエラが、「わかりました。マジックバッグで全部運びますよ。獲物も含めてね。」と返事をすると、さすがのリーダーも少し固まった。

 そのあと、拠点にいた何人かのメンバーにあいさつをして、拠点を出た。

 さあ、僕らも準備だ。食事は作っておいて、マジックバッグで運べば早いね。


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