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17 表彰式と実地訓練

 今日はダンジョンの10階から12階までの新規攻略の成果を讃える表彰式だ。正装をして会場にでかける。会場は、街のホールのような場所だった。そこを関係者用の入口から中に入る。

 新階層攻略って、街の発展に大いに寄与したことになるらしい。街とダンジョンは新しい冒険者を呼び込めるし、新しいドロップアイテムが流通に乗るなど、それ相応の影響があるそうだ。


 待合室で式次第の説明を受けたあと、受賞者用のリボンを胸に着けて、会場の最前列に案内される。結構広い会場だ。公爵とギルドマスターはもちろん、街の有力者、騎士団幹部、大商人のほか、情報収集目当ての冒険者も参加する。

 ギルドから、10階層から12階層の詳細の説明もあるので、情報収集としてはうってつけなのだそうだ。どんな条件があれば、攻略が可能なのか知りたいのが、上位ランクの冒険者だ。商人もどんなドロップアイテムがでるのか知りたいしね。式のあと、軽食をつまみながら懇談ができる時間も設けられているので、僕たちに話を聞くのが参加した目的だよね。

 始まる時間だ。司会がギルドマスターを壇上に呼ぶ。開会のあいさつだ。こうして、僕たちの授賞式は始まった。


「アキラ・フォン・ササキ殿とアリエラ・スチュアルダ殿」と、僕とマリエラは、呼ばれて壇に上がった。会場がざわついている。僕は、本当は18歳なんだけど、13歳の子どもみたいだからね。姉さんには、「誰この美人、本当に冒険者?」という驚愕の声だ。今日は特別に美しいからね。何だか場違いなところにいるような気分だ。

 司会から紹介がなされ、公爵から直々に表彰状と記念のメダルを授与される。

「偉業を成し遂げたことをエドモンド領として誇りに思う。」というような内容だった。

 そのあと、司会が、ギルドが僕らの栄誉を祝しSランクを与えることになったと発表した。

 会場が沸く。エドモンド領では、現在Sランクの冒険者は不在だそうだ。言外にSランクでないと、12階層までは無理だと言っているようなものだが。


 僕は、受賞のあいさつの中で、各階層の環境、魔獣の種類、強さ、弱点、ドロップアイテムなど詳しく説明した。あとの懇談会でどうせ聞かれるのだから、先に多くの人に話をしておいた方がよい。

 そして、「人間の力と普通の武器では10階層以上は不可能です。」と言って、一緒に壇に上げていた黒と白の神獣をあえて紹介する。隠すより、皆知っていた方が護衛として防御になる。勘違いをした人が、僕らを襲ったら気の毒だ。

「この黒と白の神獣が付いてなければ、攻略は不可能でした。」と話してから、「さあ、普通に戻れ。」とチェルニーとベリーに命じた。その身体は、たちまち巨大になる。会場からは、悲鳴が上がる。

「僕はこの国の人間ではありません。訛りがあるのがお分かりだと思います。遠く、日の昇る国から、王位継承権がないために、国を離れてこの国までやってきました。このチェルニーとベリーは途中で連れてきた神獣です。」と僕は言う。


 帝都でのカバーストーリーの前哨戦だ。噂が伝われば、ストーリーの信ぴょう性が高まる。

 でも嘘は言ってないよ。日の昇る国から来たし、王位継承権なんかないし、チェルニーたちだって、どこから連れてきたかは言っていない。皆が勝手に解釈してくれればいいのだ。

 そもそも、僕が只者ではないことは知られた方がよいのだ。どうせ元の国に帰ってしまうのだから、それまで、ちょっかいを出す人がいないようにするのが親切だ。


 懇談会では、あちらこちらから、あいさつをされた。特に、商人は、新商品がないかどうか情報収集に余念がない。トーマスさんも来ていたので、トーマス商会と取引をしている商人を何人か紹介してもらった。信頼できる商人や職人と多く知り合っておきたい。美しい姉さんは大もてだったね。素敵な出会いがあるといいんだけど。


 懇親会が終わった後、ギルドマスターと話をする。

「ダンジョン攻略の活性化のために、協力願えないだろうか。」とマスター。

「かまいませんが、何をすればよろしいですか。」と僕。

「ギルドで考えているのが、実地訓練と武具の貸与だ。武具は、ミスリルの剣や盾をギルドで購入して、冒険者に貸し付けようと思う。エドモンド領は、ミスリルが採掘されるので、武具を作れる腕の良い職人が何人もいる。実はこれはもう依頼済みで順次納品を受けている。だが、実地訓練をできる人間がいない。それをお願いできないだろうか。」

「わかりました。僕らは、2月末くらいには、公爵令嬢のお供で帝都に参りますので、それまでに実行しましょう。」


 ギルドマスターと相談の結果、僕も攻略したことがある7階層を実地訓練で攻めることになった。7階層は、魔獣のグリズリー、ジャイアントウルフ、大猪、猛鹿などがいる。一般的には、結構手ごわい層であるが、Aランク、Bランクの冒険者であれば、仲間がいて武具がしっかりしていれば何とかしのげるはずだ。

 今回の訓練は、A~Cランクの冒険者を対象とし、20名限定だ。4班に分かれて、僕とマリエラがそれぞれ2班ずつ支援することになった。早速、1週間後に実行だ。


 当日、抽選で選ばれた20名の冒険者が集まった。武具に自信のない者は、ギルドからの借り物だ。借り物といっても、ミスリル製の新品のうえ、僕があらかじめ、剣は強度と切れ味を数倍にし、また、盾や兜には強力な防御も付与しておいたので、魔武具並みだ。ダンジョン限りの貸し出しなので、乱用されることはなかろう。これらを使えば、自分でもよい武具がほしくなるね。ダンジョンでの獲物も増えるから、それで買えばいいよ。


 集まった冒険者を5人ずつ4班に分けた後、ギルドの職員から注意がある。

「今日は実地訓練だ。ドロップアイテムは、すべてギルドが回収し、あとから経費を引いて平等に金銭で分配する。武具の借賃はそこから差し引かせていただく。」

「3時間ほど進み、短い昼食時間をとり、戻ってくる。ボス部屋の攻略はしない。」

「ギルドから貸与した武具は、相当の性能を有するが、過信しないようにしてほしい。」

「Sランクのアキラ殿とマリエラ殿に支援をお願いしているが、余程のことがなければ手出しはしないことになっている。」

「今日は、斥候、回収、支援はしなくてよいので、皆、攻撃に専念していただいて結構だ。」


 そのあと、僕がこの階層での進行の仕方とギルド貸与の武具の性能、使用方法を説明した。ギルド推奨なので、9割の参加者が借りている。

 この階層の魔獣であれば、突進してきても、貸与の盾を構えれば防御が発動し、軽く飛ばされるだけで済むか、踏ん張る力があれば微動だにしないからね。剣は強化ミスリルだから、振りやすいし、切れ味も抜群だ。兜だって、軽いうえに、棍棒で殴られてもへこたれない。

 それから、アランさんがギルドのマジックバッグを持って、ドロップアイテムの回収係を担当するそうだ。パヴィアンのヒヒ軍団を付けて手助けしてあげよう。

 こうして、実地訓練が始まった。


 おっ、早速、大猪が1体突っ込んできた。手始めに、僕が号令する。「盾を構えろ。踏ん張れ。」と。1班の5人が揃って盾を構える。すると、猪は盾に体当たりをして、逆にすっ飛ばされた。そこを、皆で切りつける。冒険者たちはさすがに力があるね。誰も飛ばされなかったよ。

「すごいな、この盾と剣。」武具の貸与を受けた冒険者たちは、思わず口にする。そして嬉しそうにほほ笑む。「これがあれば、この階層の攻略も夢ではないな。」と。

 こんな調子で、怪我人もなく、たくさんの獲物を狩ってこの日の実地訓練を終えた。皆、自信が付いたうえに、マジックバッグで回収してもらったおかげで稼ぎも多く、ニコニコ顔だ。

 でも僕は、ボス部屋は要注意だよと釘を刺しておいた。なにせこの階層のボスは巨大なグリズリーだからね。従者は5体もいる。今回の参加者なら、3班は一緒に組まないと厳しいな。調子に乗ってダンジョンの餌食にならないことを祈るよ。


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