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14 第12階層再びと美容ポーション

 今日は、僕とマリエラだけで、12階層を再び攻略する。ボス部屋だけだ。効率的に良質の魔石がほしい。魔法陣をあれだけ手に入れたし、ポーション作りにも使う。お宝もよかったしね。

 朝早く、ダンジョンに着き、早速12階層に転移する。チェルニーとベリーを呼び出し、僕とマリエラは、彼らに跨りボス部屋を目指す。

「目指すはボス部屋だ。雑魚は相手にするな!」と、一気にボス部屋に入る。


「効率よく倒せたわね。」と姉さんが言う。3回目だからね。

 ドロップアイテムを全部収納し、宝箱に向かう。「今度は何かな?」

 開ける。「これは何だ。」と、そこには、銀色の諸刃斧があった。あれっ、この間ほど豪華じゃないぞ。僕は持ってみる。刃がぼっと青く光る。うっ、軽い。ミスリルじゃないのか。木の棒くらいの重さか。これなら、アルスでも振り負けそうもない。でも只者ではない雰囲気を纏っている。使ってみるかな。


 ボスを倒すと、階層にもよるが1~2時間くらいしないと新しいボスが現れないらしい。舞台裏では大忙しなんだね、きっと。宝物も用意しなければならないし。期待している人もいるし。あと2往復くらいするか。この斧も使ってみたいしね。


 12階層の入り口近くまで戻る途中、斧を使った。これはすごい。道端のミノなら軽く切れるよ、一振りで。それも、振ると刃から旋風が生じ、少し遠くの物まで切り裂いてしまう。だが獲物に照準を合わせれば、一点攻撃もできるようだ。

 そして、盾のように防御もできるので、僕は右手に虎徹、左手に斧を持って振り回しながら進んだ。なんだかすごく楽。ドロップアイテムの回収もミノはたくさん落とすわけではないので、アルスたちがいなくてもさほど支障はない。こうして、ボス部屋から2往復して多くのドロップアイテムを収集し3度ボスを倒した。

 さすがにボス部屋のミノは、宝物の斧をもってしても、簡単に倒せるわけではなかった。ボスの腕や足は何とか切り落せたけどね。

 あとの宝物は、マジックバッグが再びと、1組の銀色の腕輪だった。この腕輪って、何だろう。

 こうして僕らはダンジョンを後にした。だが、冒険者ギルドには寄った。ドロップアイテムはすべて買取保留にするが、腕輪のことを確認したいと思ったのだ。


「アランさんいますか。」と受付で尋ねる。

 受付嬢は、「少々、お待ちください。」と奥に行く。そして戻ってきたら「どうぞこちらに。」と部屋に案内し、「しばらくお待ちください。」と出ていく。

 アランは、すぐにやってきた。

「今日は、何階層だい。」と尋ねるので、「今日も12階層ですよ。おさらいです。」と答える。

 続けて、「この腕輪って何かわかりますか。」と、腕輪を置いて僕は尋ねる。

 アランは、それを手に取ってしばらく見つめていたが、「これは珍しい。よくこんなものがあったな。12階層で出たのかい。」と聞く。

「内緒にしているので、12階層の宝箱から出たことを教えるわけにはいきません。」と僕は答える。

 アランは、一瞬、僕の言葉の意味がわからなかったようだが、「ぐふっ」と笑って、「わかった。そうしておく。」と言ってくれた。そして、「1つずつ持って、魔力を込めてくっつけてごらん。」と腕輪を僕らに返した。

 僕らが腕輪を接触させると、ほのかに光った。

「それでは、はめてごらん。」

 それぞれ腕にはめてみる。うん、縮んだ。腕輪は腕にぴったりはまる。

 アランは、僕に「頭の中で、マリエラさんに何か話をしてごらん。」と言う。

 そこで、『お昼はないがいい、姉さん。』と頭の中で話すと、『そうね。鳥の唐揚げがいいわ。』と返事が返ってきた。

 わっ、すごい。念話で話しができる。

 僕は、アランに向かい「これはすごいですね。」と言うと、魔力を込めて腕輪を合わせた人同士なら念話で会話ができる、また、本人の意思でないと腕輪が外れないと教えてくれた。

 便利なんだね。アランに、お礼を述べてギルドを出た。


 アランさんは、大商人なら帝都本店と地方都市の支店の間の通信に有効に使えるし、地方領主なら帝都と領地の連絡に便利なので、大金貨100枚出しても欲しがる人がいると言っていた。でも、手放すつもりはない。なにせ、これで姉さんとは、どこでも秘密の会話ができるのだから。嬉しいね。


 お昼は、食堂に入り、植物油で揚げた鳥の唐揚げを食べた。2人は、終始静かに見つめ合ったままだったよ。頭の中では、『からっと揚がっていて美味しいわね。』とか『ポーション容器にするため、ガラスの塊か板ガラスがほしいんだけど。あと、コルク栓の材料はどこで売っているのかな。』といった会話が飛び交っていたが。他人からは、唐揚げを食べさせる大人しくてやさしい姉と、静かな行儀のよい弟に見えただろうね。

 食後は建材店でガラス板を数枚仕入れ、雑貨屋でコルク用の木の皮を買って、街を後にした。


 拠点に戻った。さあ、公爵令嬢に献上する美容ポーションを作ろう。台所に陣取った。

 まず、容器を作ろう。ガラス板は、造形を使い、不純物を取り除いて、瓶の形状にする。50ccくらいでよかろう。前回の100ccは、少し多い。小さめの方が希少価値があるように見える。また、消耗品だから早めに使いきれるのがいいしね。

 献上用のきれいな容器を2ダース作った。令嬢と公爵夫人用だ。1ダースずつ収納するこじゃれた木箱も作る。木箱に入れると、12本という数は、3x4で納まりがいいんだね。

 次に中身だが、魔法陣を身に着けたので早速実験だ。


 材料は、美容の葉、魔石大、1.3リットルの清水だ。量は先日の補充のため少し多めに作る。今回は、蒸留の魔法陣を使うことにした。殺菌できるし、エキスを抽出できる。ミノタウロスの角を直径50cmのところを輪切りにした。厚さは、3cmくらいでいいかな。断面に蒸留の魔法陣を転写した。隅に魔石大を埋め込み、魔法コンロの出来上がりだ。銅の鍋に材料を入れ、コンロの魔石に触れ、魔力を流す。すると魔石から魔力が流れ魔法陣が光る。そしてしばらくすると、鍋の中の魔石も光を放ち、張った水が「ぼっこん」といきなり沸騰して静まった。

 できたのかな。と思ったけど、使ってみるのはお風呂の後のお楽しみにしよう。そのあと、冷めてから容器に詰め、栓をして箱に仕舞った。


 今日はお風呂の日だ。いつものように流しっこをして、そのまま寝室に行く。姉さんをベッドに寝かせ、さあ、試してみよう。僕は、今日作ったばかりの美容ポーションを両手に取り、やさしく姉さんをマッサージする。髪から足先まで隈なくポーションを擦り込んだ。肌の息遣いを感じる。湯上りの火照った身体を時折くねらせ、姉さんは、気持ちよさそうにうっとりとしている。弟冥利に尽きるね。

 そしてお互いの温もりを感じながら眠りについた。


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