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11 休日の1日

 今日は休みだ。美容ポーションを分けてあげようと考え、昨日は、ギルドにいるうちに、公爵令嬢エリザベートと会う約束を取るため使いを出した。使いのような雑用は、Fランク冒険者の仕事だ。僕でもギルドに仕事を依頼するようなことがあるのだな。

 使いが1週間後の予約を取って戻ってきた。馬車を迎えに寄越すとのことなので、あとで住所を伝えることにした。


 そこで今日は、公爵家訪問の準備のため、姉さんと街に訪問着を誂えに行くことにした。

 人って、見た目が重要だからね。服装には、手を抜かない方がいいよ。そうだ、アルスとジルを一緒に公爵家に連れていくことにして、彼らにも従者として相応しい服装をさせよう。


 4人で街に出て、高級そうな仕立屋に入った。1か月後の表彰式の礼服もこの際、誂えておこう。オーバーも必要かな。そこで、春の護衛までの冬の間に必要そうな服を何着か選んだ。来週の訪問着が最優先だ。お金はいくらでもあるので、品のいい高級仕立てにしよう。


「公爵家を訪問する訪問着」「公爵列席の表彰式の礼服」などと頼んだせいか、店主は粗相があってはいけないと、終始とても愛想がよくて丁寧だ。僕たちを何者だと思っているんだろう。美しく輝いている姉さんは、とても冒険者に見えない。でも詮索しないのが商人だ。


 姉さんのオーバーは、店主一押しの銀狐の毛皮にしたよ。とても似合いそうだ。何てったって、姉さんはゴージャス系美人だからね。

「とてもお似合いですね。お友達にも自慢できる逸品です。」と店主。やっぱり店主は、マリエラを冒険者って思っていないね。何着か選び、小物を含めて前金で大金貨2枚を置いてきた。


 そのあと、「昼は2人で外で済ますよ。」と言って、アルスたちには小遣いを渡して先に帰し、僕たちは手をつないで姉弟デートを楽しんだ。傍から見ると、僕はまるで、迷子にならないように、姉に手を繋がれている子どもに見えただろうね。


 美容ポーションの効果もあり、マリエラ姉さんは、髪は豪華に、顔はとてもきれいに輝いている。すれ違う人の中には、惜しむように振り返って見る人もいる。僕もこんなきれいな姉さんと一緒に歩けて鼻が高い。明日がダンジョンで勿体ないとさえ思う。美しい姉さんを魔物に自慢してもしょうがないからね。あっ、強い方の姉さんなら自慢できるか。

 心楽しく平和なひと時であった。


 昼食を終えて拠点に戻り、午後は遺跡文庫を見直すことにした。転写関連の術式があればインストールしたい。また、そろそろマリエラにも僕の強さの秘密を教えておこう。帰宅後、僕はマリエラを伴い僕の部屋に籠った。

 午後一杯掛かり、魔法陣の記憶への転写と、そこから媒体への再転写ができるようになった。文庫の術式自体の転写はさすがに無理だった。できるのは、インストールだけだね。使用許諾のライセンスだけということか。そこまで、うまくはいかないね。


 僕は、夕方近く、一人でギルドの図書館に急ぎ、魔法陣を自分の頭に転写した。結構時間がかかる。高速コピー機というわけにはいかない。「魔法陣 巻の1」の途中までで精いっぱいだった。残りは、今度にしよう。魔法陣は、奥が深い。「巻の3」まである。単に図形を媒体に記載すればよい、というわけではなさそうだ。記載の際の注意もある。組み合わせによる効果の違いもある。研究の価値は大いにあるね。

 昨日の戦利品の買取価格を確認することをすっかり忘れて、ギルドを後にした。


 明日の準備も必要だ。先日12階層から戻る際に確認したところ、そこには、2頭のミノタウロスがいた。身体も10階のミノより一回り大きい。大きくなければ、頭が2つも載らないけどね。

 ボスだと手が4本とか6本とかあるかもしれない。諸刃斧をその全部の手で持って、自在に打ちかかってくるだろう。きっと。よし、新たな武器を考案しよう。それにしても、10階から12階は牛尽くしだね。ダンジョンに何か思いでもあるのかな。

 夕食時に、新しいアイデアを含めて、明日の攻略の打ち合わせをした。その後は武器の製作だよ。


 うーん、どこをどういじるかな。兜と盾を前に僕は首をひねった。叩かれたら有効な攻撃ができないと、隙を突かれるからな。よし、衝撃を受けたら瞬時に、持っているマジックバッグやポケットから、攻撃者目掛けて手裏剣が飛ぶような発動式を書き込もう。攻撃力が大きければ大きいほどたくさん飛ぶのがいいな。でも味方にぶつけられないように注意しないといけないから、持ち手が敵と認識したことも発動条件の1つとしよう。

 そう考えて、僕とマリエラの兜と盾に必要な術式を念じ込んだ。


 それから、最近出会う魔物は大きいので、アマリエも跳躍ができるといいね。10mくらい飛び上がれるようにしよう。それ以上高く飛ぶと、降りるとき足に負担がかかるし、コントロールもしにくくなるので、骨折でもしたら大変だ。でもそのときは僕が優しく治してあげるけどね。指輪がいいかな。ミスリルで作って、黄色い貴石も嵌め込もう。それなら完璧だ。造形をして貴石に発動式を念じ込む。

 あと、マリエラのマジックバッグにもミスリル手裏剣をたくさん入れておかないと。50cmの長いやつにしよう。こうして大量に手裏剣を作った。対策は万全だ。


 その夜、僕は夢を見た。赤ん坊のころの夢だ。母親の胸に抱かれて、懸命に乳を吸っている。母親に自分の命を任せることの安心感を、夢の中でも感じた。ただひたすらに、自分の命を育むために乳を飲む。これは本能。


 その夜、マリエラは夢を見た。赤ん坊が自分に抱かれて懸命に乳を吸っている。『あれっ?いつ子どもを産んだのかしら。』と思いながらも夢は夢。自分の体の一部が外界に出て、自分に守られながら新しい命を育む。マリエラは、満足げに微笑む。『わたしも母親か。』と。


 しっかり抱き合いながら、それぞれの夢を見る2人であった。

 


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