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10 第11階層攻略

 ところで今日は11階層の攻略だ。ポーションで潤ってダンジョン訪問もないが、予定は予定、いつものように早起きをし、朝食を終えて早速出発だ。

 拠点を徒歩で出る。4人でダンジョンに着き、証明書の提示と入場料の支払は、ルーチンだ。所定の魔法陣に入ると、すぐに11階層に着く。


 ここは平原だ。見渡す限りの大地だ。広々とした原野が広がる。太陽が輝く。ダンジョンって知らなければ、完璧に外の世界だ。人の知覚は、案外当てにならないのかもしれない。元の世界のVRだって、一瞬、どっちがリアルなのかと感覚が揺れたことがある。でもここは、VRではない。魔物にやられれば、その通りの結果が生じるのだ。気を引き締めないと。


 早速、僕はオペルを斥候に出した。そして、「イーグルアイ!」と、空から眺める。

 原野には、魔牛の群れが点在している。配置的にみて、どこを通っても気付かれるね。それぞれ、30~50頭か。元の世界の牛の倍くらいはありそうな背丈に、大きな角と、額に真っすぐに1本出た角がある。

 事前の調査によれば、この額の角の粉末を飲めば、病気を防ぎ健康で長生きができるそうだ。この魔牛は、ダンジョンでなくても、森林の奥地の平原に生息している場所があるという。そして希少価値があるので高く売れるそうだ。まるで漢方だね。よし、たくさん採取しよう。


 チェルニーとベリー、そして新しい仲間のマンモス「スローン」をポケットから召し出す。彼らには、アルスたちの警護だ。

 と、僕は思わず、「わっ!」と声を出した。

 驚いたことに、チェルニーとベリーは、自分たちの身体を倍の大きさに伸ばした。体長4mか。頭も1mくらいはある。全長で6~7mか。漆黒のチェルニーと純白のベリーが並ぶと、ものすごい迫力だ。危険度に応じて大きさの調整ができるのか。大きくなるなんて知らなかったよ。

 びっくりしたが、これならアルスたちが襲われてもびくともしないね。すっかり安心したよ。スローンの出番はないかもね。


 注意をしながら、進行する。最初の群れは30頭くらいか。100mくらい先で、大人しく草を食んでいる、と思いきや僕たちを見付けると、「ブオー」と一斉に突進してくる。

 地面が振動する。蹄の音がけたたましい。砂煙が舞う。スピードだって半端じゃない。見る見るうちに迫ってくる。よし、安全圏にいるうちに仕掛けよう。

「ミスリル手裏剣!」と叫び、迫りくる猛牛たちの上空から、それを雨のように降らす。手裏剣に撃たれて次々に倒れる牛たち。ドゥ、ドゥ、ドゥと地響きがする。

 数頭は、切り抜けたか。僕とマリエラは、剣を抜いて、それらを切り伏せる。ドゥ、ドゥ。

 最後の個体がくずおれた。角と牛皮に魔石がドロップだ。

「さあ、全部回収だ!」たくさん採れたよ。


 牛の角は、真ん中の1本は薬になるが、あとの2本は、酒器、楽器、飾り物、工芸品などの利用だからあまり高くは売れないね。僕がフィギュアでも作ろうか。魔素が豊富そうなので魔道具にも使えそうだけどな。そうすると価値が上がるはずだ。皮は、衣服、靴、テント、家具、カバンなど何にでも使えるので利用価値は高そうだ。メード・イン・ダンジョンは、ブランドの価値があるよ。きっと。


 その先、2時間ほどかかり、同じようにして150頭は倒したか。スローンの出番は今のところない。でもいてくれるだけで安心だね。ドロップアイテムの回収で時間がかかったが、牛の群れも倒し飽きたので、途中はチェルニーたちに乗って移動した。

 さあ、いよいよボス部屋だ。


 皆で僕部屋に入る。さすがにボスは大きい。体高は30mくらいか。角は僕の胴回りくらいはありそうだな。従者は、普通のやつの2倍くらいか。50頭はいる。すぐに僕らに気が付いて突進してくる。パターンは同じだ。トリックはないので、こちらも同じ方法だ。ただ、降らす手裏剣の量は数倍だ。「ミスリル手裏剣!ダブル」と叫んだ。気合が入っているね。

 たちまち9割方が倒れる。残りは、4~5頭か。僕たちは、切りかかる。平気で首が落ちるよ。よく切れる。あとは、ボスだけだ。


 ボスの黒光りする皮は、手裏剣くらいなら難なくはじきそうだね。でも大きいから、腹と喉笛は刺しやすい。

 闘牛だ。「コリーダ!」と、両手をひらひらさせて叫ぶと、ボスは突進してきた。僕たちは2手に別れ、左右から喉を一刺しだよ。ひるんだ隙に、僕は背中に乗って、首から剣を何度も何度も差し込んだ。


 ボスは、だんだんと動きが鈍り、最後にはドゥドゥドゥドゥと前のめり勢いよく倒れた。そこで僕は、刺し込んでいた首筋から剣を抜いてボスから飛び降り、さらに2人で首筋めがけて止めを刺す。

 ・・・終わったね。巨大な角3本、特大の魔石と大きくて黒光りした皮まで落ちたよ。特上の牛皮だ。これ1枚で、大型テント10張りは固いな。

 宝箱が出たので、それを開ける。わっ、黄金の牛だ。さすがに11階層、宝は芸術品だね。


 同じように、もうひと往復して再びボスを倒した。今度の宝箱の中身は、黄金の牛の頭だった。やはり角のある頭は迫力があるな。

 こうして11階層を攻略して使役獣を仕舞い、12階層に出て地上に戻った。そしてその足でギルドに寄り、攻略報告をした。


 今回も奥の別室に通された。予想はしていたけどね。ギルドマスターとアランが来たのも想定内だ。

 マスターは、部屋に入るなり、「また記録更新か。」と呟く。僕らは、それを無視して買取希望の、額の角が普通350本、大100本、特大2本、それと黄金の牛全体と頭を取り出した。だが、魔石、皮、両角は留保だ。僕が使う。それにしてもすごい量なので、部屋は一杯になった。


 それから僕たちは、11階層の環境、魔物の種類・数、強さ、弱点など詳しく説明した。

「装具と人員が必須だな。武具の開発をしないと、ダンジョン攻略は停滞してしまうな。活性化のために、ギルドも支援を考えないといけないか・・・。これだけのドロップがあるのだからな。ほかの冒険者の皆にも拾ってほしいし。」とマスターは呟く。

 アランは、時々質問を交えながら、目を輝かせて聞いていた。新規攻略なのでまた掲示板に張り出されるのかな。


 鑑定はギルドに任せ、先日の買取代金大金貨40枚分のお金をもらい、僕らはギルドを後にした。

『確かに、2人でこれだけもらっちゃうのも悪いかな。仕方ないけど。』

 そのあと、遅いお昼を食べて拠点に戻り、アルスたちには、いつも通り日当を払った。

 明日は休みで、明後日は12階層攻略だね。


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