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9 ポーション作り

 マリエラ姉さんがポーションに詳しいようだから一緒に作ろう。まず、美容ポーションだ。一緒に僕の部屋に入り、遺跡文庫から薬作りの巻を取り出す。姉さんに文庫の本を見せるのは初めてだ。

「何これ?」と、姉さんは、緊張した表情で頁を開くが「・・・読めないわ・・・」と呟く。


 あっ、そうか。僕じゃないと読めないんだ。1000年も前の異国の本だからな。実は僕だって読めるわけではなく、意味を理解するだけなのだが。

 一瞬、姉さんにも解読可能になる術式の遺跡文庫をインストールしようかと思ったが、口にするのを思いとどまった。サムソンばりの僕でも、最初のときはグロッキーしたんだ。普通の人では、危険すぎる。

 よし、絵を見ながら一緒に作ろう。姉さんも基礎知識はあるようだからね。


 僕は、魔石大と数種類の薬草を空中ポケットから取り出して床に並べ、「どの薬草を使えばいいかな。」と尋ねる。

 マリエラは、一枚一枚観察しながら、指でこすって匂いを嗅ぐ。そのあと、肌につけてみたり、舐めてみたりしてじっくり吟味する。そして、「そうね。これとこれかしら。」と2つの薬草を選ぶ。

「姉さん、どう違うの?」とさらに僕は聞く。

「こちらは肌の艶、こちらは潤いかしら。」

「配合の割合は?」

「半々でいいのではないかしら。」

 そこで僕らは、台所まで行き、銅鍋に清水を張り、薬草をそれぞれ数枚加え、魔石大を入れて湯を沸かす。それだけでよさそうだ。分量はアバウトだけど、作り方は難しくはないね。もっとも、普通は、薬草も魔石大もないから作れはしないが。1時間ほど煮立ててあとは自然冷却だ。

 待っている間に今度攻略する11階層の作戦会議をしよう。


 アルスとジルも作業を眺めていたので丁度良い。食堂のテーブルに座り、話をする。

「今度は、11階層を攻略します。帰り際に眺めたところ、数十頭の猛牛の群れがいました。牛は巨体で頭の両脇に大きくて曲がった角があり、額に1本のまっすぐに伸びた角があります。その巨体が、量で襲ってくることが想定されます。」

「牛は、4つ足で角もあるので、正面からの攻撃は躱されやすいのではないかと思います。」

「地面からお腹や喉を突き刺すのも有効だと思いますが、その手段がありません。そこで、空から頭と首を狙って攻撃しようと思います。」と僕は続ける。


 皆は、空からどうやってという顔で僕を見る。僕は言う。「僕の手裏剣は、上からも撃てるんだよ。」と。僕のポケットは、身近なところなら何処でも開けるのだ。でも地面から手裏剣を出してもスピードが乗らないので、やはり空から撃つのがよい。でも地面から槍を出して、下から串刺しもいいかな。まあ手始めだから、今回は空からにしよう。


 そして、アルスとジルには、「万が一手裏剣を避けた牛が猛進してきたときには、引っ掛けられないように避けてほしい。」と注意点を伝える。

 防御力が付与されているので、1頭、2頭に引っ掛けられても怪我はないと思うけど、それなりに吹っ飛ぶ可能性はある。子どもを吹っ飛ばすのは教育によろしくない。トラウマになるのは困る。どうするかな。

 チェルニーたちだけでも大丈夫だろうけれど、念のためポケットに入れておいた象を使ってガードを固めるか。準備をしないで何かが生じるより、準備をしたうえで何もなくてもそれは正しい選択だ。


 そのあと、何度もボスを倒すまでのシミュレーションをしているうちに、煮込みは終了した。あとは冷まして漉して器に入れるだけ。

 作ったポーションは、丁度20本分あった。これだけあれば随分長持ちしそうだ。でも魔石大は、少し縮んだ気がする。コストがかかるな。


 ポーションを冷ましている間に、裏庭で象を取り出した。像と言ってもマンモスだ。やはり巨大だね。これなら、長い鼻と牙で牛などは簡単に吹っ飛ばせそうだ。

 マンモスは、ポケットから出てきた途端、キョロキョロして鼻を高く上げ、「パオー」と叫びそうになった。そこで、あわてて「伏せ!」をさせた。象でも伏せができるんだな。

 僕は、象に向かって「今日から、名前は、「スローン」だ。僕の言うことを聞いてね。明日、また呼ぶからね。」と、スローンを使役獣にし、いったんポケットに戻ってもらった。


 その日は、一緒にお風呂に入り、そのあと姉さんを寝床に横にして、出来立ての美容ポーションを試しに髪から足先まで全身に塗った。髪と顔に塗りこんでいるときは、妙に顔が近付いてしまった。目が合った。にっこりとほほ笑む。

 金色の目だったけれど、こうしてみるときれいだね。つい見とれてしまったな。普段は、見上げないとわからないので、よく見る機会は案外少ないのだ。


 両手で揉むようにして、隈なくすりこんだ。くすぐったいって嬉しそうに笑っていた。ギリシャ彫刻のような、一層きれいな姉さんに仕上がったね。そしてそのまま、僕は両手に懐かれて仲良く眠り就いたよ。人恋しい季節のせいか、殊更その温もりが身に染みた。


 朝、姉さんの腕の中で目覚めた。うん、姉さんの髪や肌が、張りと潤いに満ち、輝いて見える。ポーションの効果か。アフロディーテもかくありなん。これはすごい。世に知られたら女性陣が殺到しそうだ。そうだ、公爵令嬢のエリザベートに分けてあげよう。


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