表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/104

7 第10階層攻略

 今日は、いよいよ前人未踏の10階層攻略だ。ヴィオレッタの作った朝食を食べ、お昼の弁当にサンドイッチを作ってもらって、さあ出掛けよう。

 鎧を着て剣を下げ、ダンジョンに直行した。新調の盾とヘルメットは仕舞ってある。4人で魔法陣に乗り、10階層に着いた。早速、全員盾とヘルメットで武装し、僕は、チェルニーたちを呼んだ。アルスとジルには、先日も貸したペンダントを掛けさせる。念には念を入れだ。

 この階層は広い。天井は高く、岩の多いごつごつした場所だ。歩きづらいし、敵が隠れやすい。見渡すと、しばらくは、道は一本のようだ。やはり、斥候が必要か。「ヴォルカ!」「オレール!」大きな灰色オオカミと大鷲が現れた。


 皆には事前に話をしている。僕は、2匹を斥候に走らせ、飛ばした。僕は、使う獣の目を通して物が見られる。「イーグルアイ!」とつぶやくと、オレールの見ているものが見える。50メートルくらい先から、道の両脇に、いたいた、牛の頭と人の身体をしたミノタウロス。

 クレタ島のミノス王がラビリンスに閉じ込めたという伝説の怪物だ。そのあと、テラ島のサントリーニ火山が大噴火を起こして、クレタ島には150mもの津波が押し寄せたっていうから、ミノタウロスも助からなかったよね。それでここに転生したのかな。


 階層内は、それなりに明るい。警戒しながら、道なりに進む。そろそろ獲物が近くだよ。と思ったら、両脇の岩陰からミノが1体ずつ襲ってきた。大きな斧を振りかざして僕らを襲う。

 待ってました。僕とマリエラで一体ずつだ。斧を盾で受けてみた。「ガキーン」物凄い金属音だ。でも、斧は勢いよくはじき返されたよ。僕はその隙を狙って翡翠の短剣「虎徹」を心臓に一刺しだ。長く伸びる魔剣だからね。マリエラも危なげなく倒す。

 ここでは、斧も回収しよう。普通のトロールのものより格段上だね。魔石中も大きめだ。アルスとジルに拾ってきてもらい、マジックバッグに収納だ。こうして1kmくらい進み、ミノも同じようにして5体倒したよ。


 さて、分去れ(分かれ道)に来たね。ヴォルカがいる。「ヴォルカどっちだ。」と念のため尋ねると、右の道を見て、「ワオー」と吠える。僕は、その頭に「よしよし」をしてやり、右の道の先頭を進む。しばらく行けば、3体同時だね。オレールが見ているから隠れても無駄だよ。飛び道具も使おうか。と、ミュレーションをしながらその道を進む。「右からの1体はお願いね。左の2体は僕ね。」とマリエラには伝えてある。

 するといきなり、「ブオー」と猛牛が鼻をならすような音がした。そして、襲い掛かってくる。左の2体には、喉笛と心臓にめがけて何本ものミスリル手裏剣を勢いよく投げつけた。手裏剣は改良して30cmくらいの長さにしてある。ドドーン。倒れる音も劇場的だね。マリエラも危なげなく倒している。確実に腕が上がっているね。すごいよ。途中、チェルニーたちに乗って距離を稼ぎながらも、3時間ほど掛けて、20体を倒して進むと、そこはもうボス部屋だった。


 皆でボス部屋に入る。ヴォルカとオレールはいったん収納だ。これまで倒してきたものより一回り大きいミノが7体、その更に一回り大きいのがボスミノか。ここでは皆、諸刃の斧を持っているよ。僕は、「正面にいる3体を僕が飛び道具でやっつけて、横の2体ずつを僕とマリエラ姉さんで倒そうか。」と周りに聞こえるように言って、3体に向かって、思い切り手裏剣を投げつけた、「ぐほっ」たくさん刺さったね。3体とも一撃だったよ。続けて僕らはそれぞれ左右のミノに切りかかった。そして2人は、諸刃の斧を、盾で受け、また、躱しながら、ミノたちの腿を切り、腕を落とし、腹を裂き、喉笛を切り裂いて4体をほぼ同時に倒した。

 あとはボスだ。死闘が始まった。


 僕らは、2人でボスに掛かっていく。ボスは、両手で諸刃斧を振り回している。それも達人が剣を振るうときのようなスピードだ。常人の目には留まらないかもしれない。何度も盾に打ちかかる。リペレント(はねつけ効果)をかけていても、ボスはすぐに回復して隙を見せない。僕はかまわず、盾に斧を撃ちつけさせる。傍からは、ボコボコにされているように見えるかもしれないが、こちらに大したダメージはないからね。一瞬の隙狙いだよ。あっ、空いた。このときを狙って、僕は腹を切り裂く。「グォ。」斧が空に止まったその時、マリエラの剣がボスの心臓を貫いた。


 倒したね。結構強いよ、このボスは。「逮捕!」を使えばよかったかな。ジルは涙目でこちらを見ている。こんな光景を見せて教育に悪かったかな。でもこの世界は弱肉強食だから、少し慣れておかないとね。

 従者の諸刃斧7本、ボスの諸刃斧2本、魔石中の大7個、魔石大1個のほか、ボスの大きな角1対と従者のやや大の角7対を収穫した。あとは、宝箱だね。

 何が出てくるかな。と、宝箱を開く。おっ、黄金の諸刃斧だよ。これはお宝だね。

 このあと、少し早いが昼食をとり、9階層のときと同じく、ここから往復してもう一度ボスを倒したよ。もう少し効率的にね。今度の宝箱は、黄金の角1対だ。飾るとすごい迫力だろうね。さあ、11階層に降りて、魔法陣で帰ろう。


 もう外は昼下がりだ。午前6時に入ったので、8時間ちょっとの労働か。初めての攻略はやっぱり少し疲れるな。ギルドに入って受付で、「10階終わりました。」と告げると、別部屋に通された。昨日、アランに言ってあるから、きっと今日はマスターのレオンさんがお出ましだよ。


 案の定、「本当に攻略帰りか。」と口にしながら、レオンが部屋に入ってきた。アランや別の職員1名も一緒だ。

 僕が「帰還のごあいさつです。」と言うと、マリエラがマジックバッグから、片刃斧50本、諸刃斧14本、諸刃斧大4本、大角2組、やや大角14組、黄金の諸刃斧1本、黄金の角1対と魔石諸々を取り出すと、部屋はドロップアイテムで溢れた。壮観だね。そのあと、10階層の詳しい説明をした。

 アランは、ミノの大きさ、強さ、武器、弱点など知りたがったので詳しく教えた。説明会は、1時間もかかったよ。評価は明日、代金の受け渡しは明後日ということだ。魔石は、今回は僕の研究用にするので全てマジックバッグに戻した。そして、僕たちは攻略証明書をもらってギルドを出た。


 小腹がすいたので、屋台で夕食に差し支えない量の串焼きを買って食べる。一緒に仕事を終えて皆で食べるものは美味しいね。拠点に帰ったら、ヴィオレッタが心配して待っていた。まあ、普通は、そうだよね。ごめんね、お母さん。

 汗と埃にまみれたので、僕が風呂を沸かし、アルスとジルに先に入らせた。僕たちのお風呂でのとっておきの時間は、そのあとゆっくりだよ。アルスとジルには日当を小金貨5枚ずつ渡した。こうして、この日は終わった。明日は休みだ。


 ヴィオレッタは、食事と後片付けを終え、子共たちと部屋に戻った。2人は、今日の冒険談を口々に語りたがる。「いい経験をしたわね。」子どもらしいその生き生きとした表情を見つめていると、思わず微笑みがこぼれる。『今日は心配だったけど、また、連れて行っていただこう。アキラさんたちとなら、安心ね。』

 ヴィオレッタは、子どもたちを優しく抱きしめた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ