神々との乖離、神秘の消失、神話の終末。―現代の始まり
焼けて、灼けて、燒けて焚けて。
大地を貫き、天まで届く程の火、炎、焔。
森は既に全滅して、多分、海も蒸発しただろう。
雨粒は地上に降るまでに炎に呑まれ、雨雲は火煙と見分けがつかない。
いつも目には見えない風も、今は空が見えない程の灰で簡単に見える。
―――たった一晩で、世界█は大きく変わってしまった。
何がいけなかったのだろう。
朝のお祈りもした。食前のお祈りも欠かさなかったし、昼も、夕方も、夜の寝る前だってちゃんとお祈りをした。女神様に祈るだけじゃなくて、自分でもちゃんと、怠けずに助け合った。草むしりをして、█も洗って、█の汚れも取って。
転んでる人が居たら手を差し伸べて。
ぶつかりそうな人には声をかけて。
何かが足りなくて困ってた人には、皆で持ってる物を分け合って。
落とし物を渡して、人探しを手伝って、親と逸れた子と付き添って。
怪我をした人が居たら、医者を呼んで、心得がある人に応急処置をしてもらった。
困ってる人を見捨てず、手を差し伸べた。必要な事を、やるべき事をやった。
傲らず、知恵を絞って、勇気を出して、欲をかかず、正しい事を。
怠けず、信心深く、希望のままに、隣人と言わず、万人を愛して。
女神様の言う通り。
女神様が教えた通り、ずっと正しい事をやって来た。
なのに―――
「なら、簡単だ。悪いのはその女神様。そうだろう?」
気が付くと、すぐ横にヒトが居た。
「君達の全ては、あの女神に従った結果。
なら、その結末も当然、女神の所業だ。」
ソレは、ここには居ない筈で。
「つまり、これを招いたのは女神自身で。」
この千年間、一度も見た事の無い顔だった。
「放火は【悪】だと、女神自身が教えた。」
その、住人でない筈のソレは。
「なら、邪神は、紛れもない【敵】だろう?」
女神様への、冒涜を
「君には2つ、選択肢がある。」
―――
「1つ目、このまま焼け死ぬ。」
―――
「2つ目、燃えずに生き残る。」
それ、は。
「しかし、残念ながら君達は愚かだった。」
「邪悪な女神の言い分を信じ、こうして破滅を導いた。」
「僕としても、無駄骨は避けたい。」
「だから、契約だ。」
「僕は、これから君達を助けよう。君達、人類を。望むだけ。」
「要するに、栄光の確約だ。ただ、流石に契約で無償とは行かない。」
「今回の様な事態を防ぐ為に、神々との交流を、完全に断ち切ってもらう。」
それは。神々への。
「別に良いだろう?栄光は確約する。
なら、気まぐれに厄災を振り掛けて来る神々なんて、」
冒
「邪魔なだけだ。」
……影が、見えた。
とっくに、空は灰で覆われて、陽の光なんて、届かないのに。
「まぁ、流石に永遠の栄光は無理だけどね。僕の力も無限じゃない。」
「……ぁ」
「万年?それは大きく出たね。まぁいいや。それで行こう。」
「……ぃ、ぁ」
「違う?今更遅いよ。
君達は一万年の栄光が約束される代わり、永遠に、神々とは絶交だ。
……うん。とは言え、随分と時間がかかったな。六百六十六人というのは。
まぁ、背信にはぴったりの数だ。これで、神々は永久消滅。
あとついでに、君達は自力で神々と決着をつけてもらう。
ま、神々との絶交は契約じゃなくて前提だしね。
それこそ何万年かかるかは知らないけど、気長に頑張りなよ?」
「……ぇ、ぉ、ぁ、ぃ、ぉ ぁ、ぅぇ、ぅ、ぉ」
そうして、神々は消え去った。
1万年限り、人類はその栄光を疑わずに肥大化し続け……
神々の加護も、悪魔の契約も消え去った日に、一晩と経たず滅びるだろう。
女神の滅びは、一人の魔女に。
白も黒も無く、紅でも蒼でも黄色でもない、唯唯、深緑の世界線で。
悪魔の手に堕ちた玩具は、地獄の様に変わらず廻り続ける。
―――破滅まで、あと約八千年。




