第七話 二つの話の矛盾点
さて、大変なことになったな。
なんにせよお互いの要求が真反対。どちらも人一人の命がかかっている。
しかし、自分で言うのもなんだけど、冷静すぎやしないだろうか。私。
実は猫目くんや大木くんの二回目で会っていたりするのだろうか。
しかしそうだったとしても今の私が知っているのはおかしいし…。何より彼らは私のことを「新しい存在」と言っていた。ということは会ったことはないから、知っているはずもない。
とりあえず今この点については置いておこう。とにかく二つの話について整理してみないと何も見えてこない。
少なくとも、聞いたそのときには少しは動揺していたらしく、今になって考えてみると気になる点がいくつかある。
まず、この二つの話には違う点がいくつかある。
一つ目は、死んでしまう人。
大木くんと猫目くんの話では「何もできずに死なせてしまった」と言っていたから、死んでしまったのは七瀬くん一人。
それに対して七瀬くんの話では、「俺を助けようとして巻き込まれた猫目も死ぬ」と言っていたから、死んでしまったのは七瀬くんと猫目くんの二人。
これについて考えられる可能性は、少なくとも二つある。
一つは、大木くんと猫目くんの世界線と、七瀬くんの世界線が違う可能性。
そして二つ目は、七瀬くんは猫目くんが死んでしまったと思ってけれど、実は生きていたという可能性。
まだ他にもあるのかもしれないが、いまぱっと思いついたのはこの二つくらいだ。
そしてニつ目の違う点は、七瀬くんの死について。
大木くんと猫目くんの話では、七瀬くんの死は確定されたものなのかはわからないと言っていた。そして一度目は自殺な可能性が濃厚で、死んだ瞬間は見ていない。二度目は事故だったと。
それに対して七瀬くんの話では、七瀬くんの死は確定されていることだと言っていた。そして死ぬ場面には猫目くんがいる(助けようとして…という発言からわかる)。
あとはわからない点がいくつか。
なぜ七瀬くんは自分の死が確定した未来だという情報を持っているのか。どのようにして手に入れたのか。
七瀬くんが見た自分の死は、自殺なのか、それとも事故だったのか。
七瀬くんはこれが初めてのやり直しなのか。
なぜ、三人はここへ来たのか。なぜ、助けを求めたのが私だったのか。
極めつけは、三人の体。未来からやってきたということは、この時代にも三人がいるはずだ(七瀬くんはもう死んでしまっている可能性もあるが)。
もし出会ってしまったらどうなるのか。それとも出会わないようになっているのか。今の時代の体を乗っ取っているという可能性もある。
……考えれば考えるほどわからないことは増えていくばかりで、何が正解なのかわからない。
私しだいで、人の命が失われてしまう。その重みで、押しつぶされそうだ。下手なことはできない。けれど何もしなければ見殺しにしてしまう。
人に話すことはできない。それこそ三人にも。
ルールを知らない、選択を一つ間違えれば即終了のゲームが勝手に始まってしまったかのような錯覚を覚える。
ゲームマスターは神で、上から私達を嘲笑っているかのように賽を投げる、そんなゲームを。
なんにせよこのゲーム、負けるわけにはいかない。