第六話 前編 それぞれの思い 大獅と勇鬼の場合
宿泊客のみんなと、無事に友好的な関係を作ることができてよかった。
ていうか、タイプは違えど三人が三人とも顔の造作が整ってんだよなぁ。三人と一緒に歩くと面倒ごとが起きそう。気をつけておかなくちゃ。
やっとここから、仕事だ!って思う気持ちもあるけど、なんだか友達が家に遊びに来ている感じが強すぎるし、三人もそういう接し方を望んでるしであんまり気持ちがぴしっとならないや。
「明香さん、ちょっといいかな。」
声を急にかけられてちょっとびっくりしつつ、
「いいよ。」
と答える。
「じゃあ瑛鳥、留守番お願いね。」
という猫目くんの言葉に少し気まずそうにしながら
「ここはお前らの家じゃない。……わかった。気をつけていってこいよ」
とツッコミを入れつつ七瀬くんも了承。
「え、ちょっと待ってよ。外に出るってこと?」
「ご名答。まあオレたちについてきてくれればわかる。」
といって大木くんはさっさと外へ出ていってしまう。
猫目くんが申し訳なさそうにしながら、
「ごめんね。ちょっとだけだから。」
といって続いて外に出る。
何か釈然としないものを感じつつ、あとから彼らのことを追う。
……結構家から遠ざかったけど、何か人に聞かれたくない話などなんだろうか。
「よし、このへんでいいだろ。」
「結構遠くまで来たけど、人に聞かれたくない話なの?七瀬くんを置いてきたのは、話を聞かせたくないから?」
「大当たり。これから話す話は、他の誰にも言わないでほしい。まず信じてもらえるかも怪しいがな。」
そう前置きをして、彼らは語り始めた。
まず前提として、知っておいてもらいたい情報。それは、オレと勇鬼は未来から来た人間だってこと。
そして、このままだと瑛鳥が死ぬ。オレたちはその未来を変えるために、瑛鳥を生かすためにここに来た。
実はオレたちは一度失敗してる。目の前で、何もできずに死なせてしまった。もう、これ以上の失敗はできない。……時間がないんだ。
一度目は、知らないところで死んだ。自殺だったんじゃないかっていわれてた。だから二度目はずっとそばに居たんだ。だけど今度は事故で死んだ。
今回も失敗したら、ぼくたちも諦める。瑛鳥が死ぬことは確定されていて、未来は変えられないんだって。だけど、だから、まだ諦めない。全力を尽くして、瑛鳥が生きてく未来を作ってみせる。
だから、手伝ってくれないか。明香さんは、前の結末ではいなかった存在だ。だから、未来を変えるために大きな力になると思う。
お願いします。
彼らの話は終わった。考えながら、言葉を紡いでいく。
「正直、混乱してるし、「嘘だ」とも思う。この世界には時空に干渉できる機械は存在しないし。でも、「信じたい」とも思う。七瀬くんが死ぬだなんて実感わかないけど…死は急にやってくるものだから。私だって七瀬くんが死ぬとわかってるのに何もしないなんてできない。だから…。」
決意を込めて二人を見る。
「手伝うよ、二人のこと。」
いかがだったでしょうか。
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それでは、また次のお話でお会いしましょう。