第五話 彼らと友人になったらしい
「よろしくお願いします。猫目様、大木様、七瀬様。」
やっと、民宿としてやっていけそうだと思った矢先。大木さんの口から想像もしていなかった言葉が飛び出した。
「うん。もっとラフにいこうぜ、明香さん。敬語とかなし、様付けもなしで。多分歳、同じくらいだろうし。」
…はい?なんて無茶苦茶な。今までずっと陽キャで生きてきたんだろうなぁ。
突然で驚いたのとなんという言葉を返せばいいのかがわからなかったのとで固まっていると、
「おい大獅。浅井さんが困ってんだろ。だいたいお前は距離を詰めるのが早すぎるんだよ。びっくりさせてしまってるだろうが。」
七瀬さんがそう大木さんを諫めつつ、私に向かって(おそらく精一杯優しい表情と声で)
「大丈夫ですか?驚かせてしまって申し訳ない。ああいう奴なんです。あぁあと、急に下の名前で呼んでしまって、ご不快にさせていたら申し訳ない。悪気があるわけじゃないので、許してやってください。」
という。
前言撤回。七瀬さんはきっと、苦労人なだけでいい人だ。無表情なことが多いから誤解されやすいだけで。
「おいひどい言い草だな、瑛鳥!」
「紛れもない事実だ。お前も否定はできないだろう。」
このままではまずい。収拾をしなければ。
「あのっ!急に下の名前で呼ばれたのはびっくりしたけど、でも別に嫌だとかそういうのはないので大丈夫です。敬語も…時間はかかると思いますけどちょっとずつ取っていきますね…じゃなくて、取っていくね!」
はぁ、一息ではなかなかにきついな。
彼らはちょっとびっくりしたような顔をして…
大木さんは満面の笑みを、七瀬さんは皮肉げな笑み(多分彼にとっては普通の微笑)を、しばらく静かだった猫目さんは無邪気な微笑みを浮かべた。
「よっしゃ、これでオレたち友達だな!」
と大木さんが言う。
それに対して
「ねぇ大獅、気づいてる?そのノリもう流行んないよ。」
と辛辣な言葉を投げつけたのは、意外にも猫目さん。
「まあ、皆が仲良くなってくれて良かったわぁ」
とほのぼのした台詞を言ったのはおばあちゃん。
「…これからよろしくお願いします。俺たちのことはなんと呼んでもらっても構わないので。苗字でも名前でも、君でもさんでも呼び捨てでも。」
とほぼガン無視したのは七瀬さん。
とにかくにも、ここからが本番である。
お客さんとはいい関係を作れていけそうでよかった。
「おまえら…オレへの当たりきつくねぇ!?」
という大木さん…いや大木くんの叫びは、誰にも相手をされないまま空へと吸われていった。
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