スカートひらり
ポニーテールを私の尻尾のように揺らしながら、スカートひらりと翻し、走る私を追いかけるのは片想い中の君。
だったら、よかったんだけど。
後ろから追いかけてくるのは、生徒指導部の前島せんせー。
「こらー、まてー、七瀬!!スカートが短いし、髪を染めるなと言っただろう。なんだその色は!半分赤とかおかしーだろ!」
やべぇ。疲れてきた。
それでも私はひた走る。
だって、捕まったら説教でしょ?
「待てと言われて待つやつがどこにいるー。ばーか!」
ひたすら走る私の視界の端に友達と話ながら歩く君の姿がみえる。
走っているからドキドキするのか、君をみてドキドキするのか。それとも追いかけられている状況にスリルを感じているのか。
ドキドキの意味を考えながら、私は廊下の角を曲がる。
そんなことを知らない君は、なにやってるんだって顔をして、楽しそうに笑ってる。
君が笑ってくれるなら、馬鹿なことでもやれるんだ。
君の笑顔が見れるなら、私は幸せな気持ちになれるから。
せんせーから逃げ切った私は、校舎の裏で息を整える。
私はせんせーには捕まらない。
私を捕まえるのは君だから。
だから、私はいつだってスカートひらりと翻し、ポニーテールを揺らしながら、指の隙間をすり抜けていこう。
私は誰にも捕まらない。
だから、君が捕まえにきて。