表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東京世界  作者: 輝利
1/3

東京世界 裏①

 目を覚ますと慣れた手つきで傍にあるタバコを一本手に取る。


 カチンッ シュボッ


 火を付けながらベランダへと向かう足取りもいつもと同じである。


 ふぅー

 吐く煙が空に導かれて消えていく。

 

 時間を見てみると18時、すっかり今の季節だと夜の時間だ。

 急に冷えてきたのもあり、太陽が沈むのも早くなっている。



 新宿西口近くのマンションで10畳という程よい広さに住み慣れた部屋を感じながらベランダに出て昼間一樹はタバコをゆっくりと吸う。

 窓を開けた瞬間に入ってくる風が肌寒く、タバコと一緒に目を覚ましてくれる。

 東京での空気は汚いときくが、上の方に住んでいると特に気にすることもなくなっていた。



 築年数6年ほどの14階、都会の喧騒もにぎわっている感じがビルに反響しながら聞こえてくる。

 車の走る音、クラクションの音、信号の音、人が歩いている音、男女の音、家電量販店が流す音、パチンコ屋から流れる音、室外機であろうファンの音。




 それらの音が一体となり耳に届く。

 耳と同時に目に映る光もまばゆい。

 街灯、信号機、群集となったビジネスビル、居酒屋の提灯、雑居ビル、縦に連なる看板。

 一樹がこの部屋を選んだのも社会に少しでも繋がっていたいと感じていた部分もあるのだろう。



 一樹は今日も普段通りの仕事をするだけである。




 ブブブブブ ブブブブブ

 手元のスマホに着信が入る。

 毎度起きると同時に掛かってくるので監視されているのではないかと感じている。



_____________。




 「・・・・・・。」


___________________________。




 「了解了解~、うるさいと老けるぜ。」

 最後に何か喚いていたが、火を近くの灰皿に消すと同時に電話も切った。



 相手はパートナーの金木なぎさ

 案件を一方的に伝えてくる人物だ。

 なぎさはもう現地にいるらしい。



 一方的に話してくるので仕事内容部分だけを切り取り反芻する。

 部屋に戻ると同時にパソコンで再度確認する。



 24時スタートの仕事案件。

 昼間一樹はもう一度電話の内容、依頼の内容を照らし合わせる。



_________________________________________________________________________________



 依頼主■株式会社未来ワーク


 案件■はじめまして、金木なぎさ様の紹介で連絡させて頂きました。

 率直に申し上げます。

 弊社に他社ライバル企業へと横流しする諜報員がいる様子なので、その人物を()()して頂きたい。

 抹殺した証拠は跡形も無くこちらは何も加担していないという条件で願いたい。


 前金500万、後金500万でいかがでしょうか。

 掛かる費用はこちらで全額持たせて頂きます。



 良いお返事お待ちしております。


 株式会社未来ワーク 笹野ゆか



_____________________________________________________________________________________






 割が良すぎる仕事だと昼間一樹は考えていた。

 証拠を跡形も無く、加えて未来ワークとかいう会社に何一つ責任を負わせないなんて当たり前の仕事であるからだ。

 仕事を受けた後、百合に依頼人、会社情報等、諜報員の情報など全て調べてもらい再度確認もしてみたが特にこれという情報は出てこなかった。






 一樹はクローゼットへと向かい服を着替える。

 お気に入りの黒く肉厚なスウェットに動きやすい厚手で作られた黒デニムを履く。

 ジャケットは内側を特殊防弾で作られたアノラックを被る。パッと見るとただのシャカシャカとしたジャケットだが、反面強固なので重宝している。


 クローゼットの内側には隠し扉がついている。

 しっかりと厳重、隠蔽されているため、溝でさえも見えない。


 そこから今日使うであろう道具を取り出し再三確認をする。

 依頼によって使う武器は変わってくるが、いつも持ち歩くのだけは変わらない。



 短中距離用銃と長距離用銃の二つ。

 メンテナンスは毎日怠らない、昔は一つの解体から組みなおしに1日以上かかっていたが、それもすっかり馴染んでしまっている。




・・・・・・・・・・・



・・・・・



・・




 武器類も解体しリュックに詰め込み準備が整うと、丈夫なトレックシューズを履き一樹は外へと出た。

 先ほどの騒々しい音がまた耳へと入ってくる。




 エレベーターを待っていると上がってきたのは隣人のかえでだった。




 「あっこんばんは♪」

 黒いショートカットの髪形にベージュのざっくりとしたトレンチコートを羽織っていた。

 低身長なので大人だろうかと見間違えるほどだ。

 仕事帰りであろう肩には小ぶりのバックとスーパーで買ってきたであろう食材を持っていた。

 手にはほかほかの肉まんらしきものを持っていた。



 「どうもー、今日もお疲れ様です、何か美味しそうなの持ってますね」

 一樹は百合という女性を少しいじるのが好きである。



 百合は少し顔を背け恥ずかしそうにしながら

 「こ、これは違うんです!!その、寒いから手を温めようと!!」


 「へー、その割には少しかじった跡が・・・・・・。」


 ぺちん!


 「本当意地悪!!もー、一樹さん本当嫌い」

 少し頬を膨らませ恥ずかしそうにしていながら肉まんを投げてきた……。

 投げるだろうか、普通……。



 「はいはい、すいませんね、じゃあ自分も仕事なんでこれで」


 「お仕事頑張ってくださいね、あっこれ良かったらどうぞ」


 「いや、いいですよ……どうも」

 何故か肉まんは二つあった。

 一樹は何も突っ込まずその場から離れバイクを準備した。



 ちなみに、先ほどの百合という女性に自分の仕事はフリーのエンジニアと伝えてある。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ