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人類滅亡が確定した世界をチート能力で救うことが出来るか?  作者: 平 来栖
第3章 魔法少女になれた日 〜死村 メイ〜
79/81

第39食







「……よしっ、ぜったいにここから抜け出してやるわよ」



 数分後、わたしは気持ちを新たに宣言していた。



 グロ丸が救ってくれた命を無駄になんてできない。



 光が失われたからって、絶望に囚われる必要もない。




 だって、グロ丸が命を賭けて示してくれたんだから。


 

 これからわたしが何をしなければならないのかを。




 落ち込んでいるヒマなんてないわ。




 わたしは手探りでガレキを掴みとると、そのままかじりつく。




 ガジッ




 そして胸の奥から湧き上がる不快感に身を任せる。






「おっ、おぇぇぇぇぇぇぇえろえろえろえろえろ」





 この吐き気だけは何回やっても慣れる気がしないわね……





 カランッ




 そしてグロ丸(2世)を口から吐き出す。




 その全身からは先ほどのグロ丸と同じように、暗闇を照らし出す希望の光が放たれていた。



 わたしは早速グロ丸(2世)を手の平にのせると、その輝きを見つめながらあるお願いする。




「図々しいとは思うけど、ここから抜け出すためにまた力を貸してくれないかな?」




 グロ丸(2世)はまったく微動だにせずに、わたしの手のひらの上でじっーとしていた。


 

 おとなしい。




 ……やっぱりアレかしら?




 キス、しなきゃダメなのかしら?


 


 先ほどのグロ丸の様子を思い出す。




 わたしが口づけた瞬間、なんか輝きが一気に増した時の様子を。





 やるしか、ないのね。




 さっきは無意識にやってたけど、今度は意識して、キ、キ、キ、キスをしようとしている。


 それと引き換えに助けてもらおうとしている。



 その時の心境は、昼間にやってたドラマの中で、胸元の開いたドレスで男の人をたぶらかしていた魔性の女?そのものだった。



 ちょっぴり気が引けたけど、わたしとセツコさんの命には代えられないわ。



「さあ、いくわよ!! ぶちゅ―――」



 わたしは顔をグロ丸(2世)に寄せて口づけようとする。



 だが―――



 ブルブルブルブルブール、ブルブルブルブルブール




「えっ!?」


 


 突如、手のひらのグロ丸(2世)が激しく振動を始め発光する。



 ま、まだ何もしてないんだけど。


 見られるだけでいいタイプなのかしら??



「ど、どうしたの!?」



 グロ丸(2世)に問いかける。


 グロ丸(2世)は何も語らず、ただ体の向き?を変えて天井のある一点を見上げていていた。



「あっ」



 その先にはわたし達を救ってくれたグロ丸(1世)の残がいが張り付いていた。



 

 ブルブルブルブルブール、ブルブルブルブルブール

 


 手のひらの上で振動がより一層激しくなっていく。


 それと同時に光もより一層激しさを増していく。


 

 わたしはその様子を見て、なんとなくだけどグロ丸(2世)の気持ちが分かった。


 

 きっとこの子、仲間の死を悼んでいるんだわ。そして―――




 ブルブルブルブルブール、ブルブルブルブルブール

 



 その意思を継いでいる。

 


 この子たち間違いなく―――




 先ほどはそこまで思わなかったけど、今は確信する。


 

 ―――知能がある。それも単純な知能じゃなくて、かなり高度な……



 昔、テレビで、仲間の死を悼むことが出来る動物は総じて知能が高いって言ってた事を思い出す。仲間の死に思いを馳せれるのは、生存本能に依らない部分の脳の活動だからスゴイとかなんとか……




 でも、そんなことはどうでもいい。


 この子たちは賢い。


 そして、それ以上に、とっても情にも厚い。




 手のひらからはグロ丸(2世)のやる気だけが伝わってくる。




「ゴメンね……本当にありがとう……」



 これからわたしがやろうとしていることは謝ってすむ話じゃない。


 それはこの子も分かっているはずなのに、それでも手のひらから伝わる振動に微塵も揺らぎはなかった。



  ブルブルブルブルブール、ブルブルブルブルブール



「ゴメンね、ゴメン」



 もう一度だけ謝る。



 わたしがやろうとしていること。




 それは、神威でガレキを消して、もろくなった箇所をグロ丸で補強していくということ。






 その度にグロ丸たちは、犠牲になっていく。





 無事に脱出するまでの過程で、いったいどれだけのグロ丸が消費されていくのか、想像すら出来ない。


 

 未知の生物の命を犠牲にしなければ、わたしとセツコさんは助からない。



 それが先ほどの出来事から得られた結論。




 自分のために他者に犠牲を強いる。


 それはとても罪深い行為。一番やっちゃいけないこと。









 でも、キレイごとなんて―――言っていられない。





「ゴメン」



 

 最後の謝罪を聞いたグロ丸は、それでもなお激しい振動をやめることは無かった。



 もしかしたらこれは武者震いなのかもしれない――わたしは意地悪く、そんな事を考えてしまっていた。








 ……………






 …………








 ………






 あれから――――どれだけ時間が経ったのか――――分からない。





 爪が割れて、口の周りが裂けて血が出てその血が固まってまた裂けて歯も欠けて折れて……




 それを何回も何回も繰り返して、そして広がった空間にセツコさんを引きずりながら進んで、崩れそうになったら天井をグロ丸で塗り固めていく。





 灯が欲しくなったら適当なガレキをかじって、グロ丸を吐き出す。





 そうやって進んで進んで、進みまくって、そうやって切り開いていった先には―――








 ガレキの山、山、山。





 


 いくら進んでも減る気配がない。




 もしかしたら進む方向を途中から間違えてしまったのかもしれない。




 そんな不安に駆られて引き返した回数も、もはや数え切れない。




 

 その度に、天井に貼りつくグロ丸の死骸が視界に入り込む。

 




 最初はその無機質な板状の姿を見る度に胸を痛めていたけど、今はもう、特に何も感じなくなっていた。



 ……慣れって、怖いわね。






 ズキン


 



 そのとき、胸に鋭い痛みが生じた。



 だけど、これは悲しいとかそういう類の痛みじゃなくて、さっきから急に締め付けられるように胸が痛み出したのだ。





 酸素が薄くて、頭ももうろうとしているけど、この痛みがくるたびにヨダレが出て頭がおかしくなりそうになる。




 本当に生命の根幹に関わるような激しい痛み。




 神威を使う度に、この痛みが激しくなっている気がする。






 もしかしたらこの痛みは―――そんなネガティブなことまで考え始めていた。





 でも――――




 怖くはなかった。






 むしろ誇らしい気持ちでいっぱいだった。




 わたしの力で、わたしの神威で誰かを救う。


 


 きっとヨーコちゃんもいつもこんな気持ちでいたに違いない。



 そう思うと嬉しくて頬が緩んでくる。



 だって、今のわたしならヨーコちゃんの横に並んでも、きっと―――



 「あはっ」



 嬉しすぎて声が漏れる。






 いつか見た夢のようにわたし達は肩を並べて―――



 お互いがお互いを褒めたたえ合って―――



 そんな関係に―――





 ……あれ、そう言えば、その夢は最後どうなったんだっけ?



 なんせ数日前に見た夢だ。大分抜け落ちている。


 

 わたしは頭をフル回転させて、がんばって当時の記憶を呼び起こしていく。





 けど、頭がぼんやりとしちゃって、段々と重くなってきて……


 ダメだ……思い出せ……ない……









 


 ガンッ



 

 


 

 ……いけない……いけない……ちょっとぼんやりしちゃった。



 わたしは今しがたぶつけたばかりの額をさする。



 ちょっと手のひらがヌルってしたけど、血じゃなくてきっと汗か何かだろう。



 だって全然いたくなかったし。



 全然なにも感じなかったし。




 …………さあ、それじゃあ、気を取り直して続けましょうか。




 わたしはとりあえず目の前のガレキにかじりつこうとする。






 その時、







 パラパラパラ



 顔に砂粒がぶつかってきた。



 今、頭をぶつけた衝撃でどこか崩れたみたい。



 

 「お願いね」



 わたしはグロ丸(295世……だったと思う)を握りしめ、崩落に備える。



 ……本当に慣れって、怖いわね。

 




 そして





 ズシャアーーーーー




 わたしの向いている方向とは反対側の天井が落ちていった。


 


 ……まったく、この期に及んでフェイントなんて……




 わたしは忌々し気に、本当に何気なく、後ろを振り返り、天井を見上げる。





 そして―――















「…………あ、あ、あ、あ」






 ようやくその時を迎える。







 天井に空いた豆粒大の白い隙間。




 そこからレーザービームのように射す白い光線。






 見間違えるはずがない。




 あれは光、幻覚じゃなくて、本当の光、陽の光。





 ようやく、ようやくゴールが見えたんだわ。





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