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人類滅亡が確定した世界をチート能力で救うことが出来るか?  作者: 平 来栖
第1章 タケノコの山が消えた日 〜死村 仁〜
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第4話

 オレは今、ある重大な結論を出そうとしている。


 やはりやるしかない、か。


 大事の中に小事なしとはいうが、それでもここまで躊躇(ちゅうちょ)しているのは自分でも驚きだった。きっと根が真面目なんだろう。

 ただのビビりともいえるが。


 だがそんなビビりな自分とも今日でお別れだっ!!


 オレは、今日、学徒(がくと)にあるまじき行為をする。


 本分であるはずの学業を放棄して


 深夜の鑑賞会に備えるために




 ……寝る。




 実にシンプルな結論。

 だってどう考えても二徹(にてつ)はムリだもん。


 火野華いわく顔色が悪いということだったので、保健室で休ませてもらおうかとも考えたが、オレが寝ていたらきっと他の善良な病人たちの気が休まらないだろうから、却下。


 かといって他の場所に移動するにもおっくうなので、この教室、オレの机で寝ることにする。


 でも、さすがに机に突っ伏してそのまま爆睡するのは、気が引けるし芸がないよなぁ。かといって(まぶた)の上に目を書くなんてコントを演じるつもりもサラサラないし。


 ……というか、アレが通用するのはコントの世界だけだしな。


 何かないものだろうか。

 教室を見回してみる。


 お、アレは使えそうだな。


 オレは立ち上がると、教室の後ろに備え付けられている棚からブックエンドを拝借してくる。


 大判の本を支えるためにかなりドッシリとした造りの逸品。


 うん、これはいいものだ。


 オレは教科書を取り出すと、適当なページをめくってその間にブックエンドを挟み込む。

 そしてそれを机の上に衝立(ついたて)のように立てそこに手をついてみる。


 そこそこの安定感、まあ居眠り補助具としては合格点だろう。よし次の時間はこいつに寄りかかって寝ることにするか。よろしくな相棒!!


 一仕事終えた安堵感(あんどかん)からか欠伸(あくび)が漏れる。オレは背もたれにもたれながら大きく伸びをして、何気なく廊下側の方を見る。



 ……ヤバイ、目が合ってしまった。



 一瞬で眠気が吹き飛ぶ。

 

 オレのちょうど反対、廊下側の席には小不動明王がこちらを睨みつけながら鎮座していた。

 

 な、なんだよう?まだ何か文句があるのか?

 お、お前、加害者のくせにその態度はおかしくないか時雨!?


 その殺人光線ばりの視線のレーザーに、オレはどぎまぎしながら心の中で抗議の声を上げる。



 何の因果かオレはヤツと同じクラスであった。

 幸い席が窓側と廊下側で離れているため、今まで直接的な暴力を受けた事はなかったが、朝の投擲(とうてき)を見る限りここも安全圏(サンクチュアリ)とはいえなくなってしまった。



 う~ん、何とかして関係を改善しておきたいものだ。今後の平穏のためにも。


 教室内でギシンと話しているのを見られるのは、時雨的にもあまり具合がよくないだろうと思い、オレはノートの端に文章をしたためてちぎって丸める。


 ポイッ


 宙に放った紙片は放物線を描きながら、時雨に向かっていく。

 何事かとじぃーっ、と睨み付けていた時雨の眉間に、紙片は吸い込まれるようにぶつかっていった。


 コンッ


 クリーンヒット。時雨は目を閉じ「あうっ」とかいう間抜け声を発しながら一瞬のけぞる。


 よっしゃ、ナイスピーオレ!! 時雨よ、これに懲りたら二度とオレに生意気な態度をとろう、などとは思わない事だな。ハッハッハッ。


 悪役的笑い声を脳内に響かせながら、オレは夢の世界へと旅立とうとする。






 いやいや、そうじゃないだろ目的は。


 オレは再び頭をもたげて時雨の方を向く。


 ……なんか時雨の背後に本物の不動明王の影が浮かんでいる、ように見えた。例の形相で。

 あれが時雨のマジ切れ、だとしたら。



 こ、こ、こ、こえぇ。



 オレは何とか誤解を解こうと紙を指差しジェスチャーをする。


 時雨は怒りながらもオレの言わんとしている事を悟り、紙を広げて中身を見だす。


 お、読んでくれたか。

 これでようやく和解でき……なんか肩が震えてるな。

 おお、ものすごい勢いで何かを書いている。


 ビュンッ


 書き終えたと同時に時雨が返球してきた紙片は、書き終えたと同時に時雨が返球してきた紙片は、まるでレーザービームのような鋭さだった。

 ……朝もそうだがアイツいい肩してるよな。

 そんな事を思いながら、オレは机に立ててある教科書の城壁に一時退避する。


 ゴンッ


 結構な衝撃音を耳元で聞きながら、オレは自分の判断の正しさに感謝する。

 アイツ……消しゴム包みやがったな。


 時雨の舌打ちが聞こえたような気がしたが、無視して紙を広げて見る。


 さてさてどうしたものか。


『今朝のことは全くの誤解だ。なぜならオレは、お前の下着に興味はない。というか、そもそもお前に興味がない。世界にオレとお前しかいなくなったとしても、きっと何も起こらないことを約束しよう。さあ、これで安心だろ?朝の件は手打ちにして終わらせようぜ!!』


 これに対する時雨の返答は、と。


『私はアンタを手討ちにしないと気が済まない。これからは夜道にも気をつけなさい』


 そうか、手打ちと手討ちをかけたんだね、って

 こええぇぇぇぇぇぇぇ。


 はぁ、ああ、なんかもう、今どっと疲れがきた。

 コイツと関わると火野華とは違った意味で疲れるんだ。


 もうどうとでもなれ。オレを襲いたければ襲うがいい。


 少し寄り道をしたが、当初の目的を実行に移すことにする。


 すなわち ふて寝だ。


 ……何だか少し違うような気がするが、些細(ささい)な違いはどうでもいい。


 それくらいオレはふてくされてるんだ。


 ガラッ


 そんなオレの思いに感化されたのか、教室に入って来た教師の顔までなんだか物憂(ものう)げに見えた。

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