第29食
「オイッ!! テメッヨーコっ!!!! いい加減にしやがれっ!! やる気あんのか??!! もう時間がねぇぞっ!!!!」
再び、兄貴の怒号が飛ぶ。
メイの話はもう終わりのようだった。
けど、まだ気配は感じる。
「……メイ、ありがとう。お姉ちゃんようやく目が覚めたよ。……お礼に勝利をプレゼントしてあげる」
ハッと息をのむ声。そして。
『ヨーコちゃん今のキメ台詞、最高にふぁぼ♥だったよ!』
ふぁぼ? うん、やっぱりちょっと分からない。
けど、それも含めて、とてもメイらしかった。
VRモニタには発光している≪終末獣≫のCGが投影されている。
そして輝きが一定に達したところで、口からビームが放たれる。
数コンマ後に、画面一面が白い光に包まれる。
私の今まで闘ってきた終末獣とは違う。
充填から発射までの感覚が恐ろしく短い。
どうやらかなりランクの高い≪終末獣≫みたいだ。
…………それがどうした。
私は救世の乙女なんだぞ?
この街から世界を救う最強のギシン……いいや、そうじゃないな。
私は、最強のお姉ちゃんなんだ。
妹のためなら、何だって出来る女なんだ。
お前なんかが敵うわけないだろ。
一日に二度も消滅弓を放ったことなんてない。
ある訳がない。
それがどうした。
体に問いかけてみる。
いけるよな? もう一射くらい?
……返ってきた答えは……NOだった。
膝が笑いだす。
ついでに私も笑う。
残念だ。仕方ない。
ガックリとうなだれ、そして―――いう事を聞かない膝を思い切り殴りつける。
生存本能のスイッチを切る!!!
ここから先は、思いの力で身体を支配するんだ!!!
そして放ってやる。
もしかしたら最後になるかもしれない、命がけの一射を。
でも絶対に死なない。
私は最後まで生き延びなければならないんだから。
メイのことをずっとずっと覚えていなきゃいけないんだから。
意思の力で弓を構える。
呼吸を整え、狙いを定める。
指先に余計な力は込めない。あくまでも自然体。
やがて消滅弓が形を成し、私の弓に番われる。
全ての準備は整った。
もう迷いはない。
ドクン、ドクン
心音がやけに大きく聞こえる。
これは調子がいい時のリズムだ。
体全体で弓を引いていき、そしてある一点でピタリと止める。
絶対に外しはしない。
そう、私の神威は――――百発百中なんだ!!
やがて、自然と指が弦から離れていく。
ビュンッ
放った瞬間、分かった。
私の放った矢は―――
次の瞬間、視界に映っていた≪終末獣≫のCGモデルが弾けるように四散し消える。
終わった。
私の勝ちだ。
私の消滅弓によって、≪終末獣≫は撃退された。
やったよメイ、お姉ちゃん勝ったよ。
メイを早く安心させてあげたくて、残心すら忘れて私は勝利を報告しようとする。
その瞬間
ズキン
うっ!!
体中に激痛が走った。
「かっ、はっ、ぁぁ」
これは………………耐えられない………ヤツ…………だ。
ゴンッ!!
頭から地面に激突する。
VRメットがなかったら、大ごとになっていたかもしれない。
そして、あまりの痛みに悶絶する私の視界が、再び白一面に染まる。
先ほどの≪終末獣≫の攻撃とは比べものにならない程、激しく、全てを洗い流すような白の本流。
まばゆすぎて、網膜が焼き付きそうだった。
「くっ、うぅ」
目の奥までズキズキと痛み出す。
な、なんなの一体!?
痛みに耐えながらかろうじて目を開いた瞬間、飛び込んできたのは
UNKNOWN―――の文字。
えっ――これって―――
信じられなかった。
いや、信じたくはなかった。
だけど、偵察衛星群が捉えた映像、それを元に再構築されたCG。
それは今、この世界で起きている事実をありのまま再現しているに過ぎない。
力を失い崩れ落ちた私の視界に映ったのは、
銃らしき武器を構え、銃口をこちらに向けた、新たな≪終末獣≫の姿だった。




