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人類滅亡が確定した世界をチート能力で救うことが出来るか?  作者: 平 来栖
第3章 魔法少女になれた日 〜死村 メイ〜
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第26食


 しばらくすると閃光が止み、空が本来の青さを取り戻す。


 私はすかさず背後を振り向き、状況を確認する。


 良かった―――やっぱり、ここは予言特区だ。


 ホッと胸をなでおろす。




 視界に映る横浜の街並みに、特に変化は見られなかった。


 

 先ほどの音声を聞く限り、かなりの被害が出ていたようだけど、それでも私は心の底から安堵する。



 ―――だって、私はここさえ守れれば、後は他がどうなっても構わない、そんなエゴイストなのだから。



「……ありがとう。助かったよ。でも、どうしてケーーーK・Sがここに?」


 突如現れた救世主に謝意を示そうとしたところで、危うく名前で呼びそうになってしまっていたことに気づく。


 未遂だったけど、それでも兄貴は眉をひそめていた。


 もしかして“様”をつけなかったから怒ってるのかな。


 さすがに勘弁してほしい。身内をイニシャルで呼ぶだけでも抵抗があるっていうのに。少しは妹の気持ちも汲んでくれないかな。


 すると私の無言の抗議が伝わったのか、兄貴はしぶしぶと口を開く。


「……あぁ。だからよぉ、さっきも言った通りだ。助っ人に来てやった」


「助っ人って……このタイミング……まるで図ったみたいだよ? それに―――どうしてこの場所が分かったの? 港に浮かぶ射的場は予備を含めて全部で五か所もあるけど」


「オイオイオイ、メンドくせーこと言い出すなよ? オレに頼んだヤツがそこらへんは全部教えてくれたんだよ。オレは身一つで来ただけだ」


「頼まれたって誰に?」


「んなモン決まってんだろ。お前の状況を分かってて、なおかつオレへのプライベート回線を開けるなんざあの女しかいねぇじゃねーか」


 あの女?? 一体誰のことだろう? でも消去法で考えると。


「……もしかして……それってセツコさんの事? なんでセツコさんが兄貴に??」


「なんだ?? 聞いてねぇのか? オレとアイツは、昔」


『ヨーコ様ご無事で何よりですっっっ!!!!!』


 その時、私と兄貴の会話を遮るようにセツコさんの大音声が鼓膜に突き刺さった。


「うわっ!! セ、セツコさんっ!! い、いきなり何!?」


『通信が復活した途端、ヨーコ様のお元気そうな声が聞こえて来たので嬉しさのあまり叫んでしまいました!! 申し訳ございませんっ!! いやーでも本当にご無事でよかったですっっっ!!』


 な、なんだか私の知ってるセツコさんとは思えないほど異様にテンション高かった。普段感情を見せないからとてつもなく違和感だった。 


「ど、どうしたのセツコさん? 何か様子がおかしいけど? 変なモノでも食べた?」


『おかしくなどはございませぬっ!! セツコはいたっていつも通りであります

よっ!?』 


 口調までなんだかうさんくさくなっている。


「セ、セツコさん?」


『そ、そんなことよりも、その、あの、そこにいる男のことなのですが、たまたま財団の緊急連絡網に記載があったので連絡したまでです。別に、その、知り合いと言うわけではありませんっ!! 全く面識などございませんのであしからずっ!! それに、とてつもなく虚言癖のある男なので、発言をあまり真に受けない方がよろしいかと存じますっ!!!』


 め、面識ないのに何で知ってるんだよ? む、矛盾してないか、それ?


「そ、そうなの?」


 それにしても虚言癖って……一応私の兄なんだよね。

 セツコさんにしては配慮がなさすぎる発言に、さすがの私も辟易してしまう。



「おいヨーコ? テメェさっきから何一人でブツクサ語ってやがんだ?」


「えっ? ああそうか、コレ一人用だったか。いや、今、ちょうどセツコさんとつながってるんだ」


「ほぅ、それでアイツはなんつってんだ? オレ様に対する感謝の言葉でも述べていやがるのか?」


「えっ!? あっ、そ、その、うーんとね」


 さすがに今の会話の内容をそのまま伝える訳にはいかなかった。


 困ったな。そう、私が思いあぐねていると。


「……へっ、まぁいい。それより伝えといてくれよ。オレはキチンと約束を果たしたから、今度はお前がちゃんと約束を果たせよ、ってな」


「???約束??? う、うん。別にいいけど」


 と、いうかインカムと接続してあるVRメットは外部の音声を拾うから、セツコさんに今の会話は筒抜けなんだけど。


「えーっとセツコさん? 今の聞いてた?」


 ひとまず確認してみる。


『ヨーコ様っっ!! 私、ちょっとメイ様の様子を見てまいりますので少し席を外しますっ!! それではまた後ほどっ!!!』


 ドタドタドタドタ

 

 インカム越しにセツコさんの気配が遠ざかっていくのが分かった。


 逃げたな。


「で、何だって?」


「うーん……なんだか用事があって席を外したみたい……でも、まぁ大丈夫じゃないかな」



 返答は聞けなかったけど、間違いなく言えることがある。



「セツコさんなら、絶対に約束は守ってくれると思うよ」


 そう、私の知っているセツコさんなら、約束をたがえるようなことはしない。

 それだけは自信をもって言えた。


 兄貴も私の言葉に納得したようで、嬉しそうに口元を歪める。



「まっ、言われてみりゃそうだな。アイツがオレとの約束を破ったことなんてなかったわ」


 一体二人はどんな関係なのだろう?

 そしてどんな密約を交わしたのだろう?



 もちろん聞くなんて野暮なことはしない。


 ―――でも、あの勤勉なセツコさんに職務放棄させるほどの約束、それはきっと凄まじい内容に違いない。


 私は一つ身震いして、そして無音になったVRメットを外すことにした。

 蒸れるしね、コレ。

 


 すると、さっきまで笑顔を浮かべていた兄貴の表情が瞬時に険しくなっていく。



「お前、その髪……何かあったのか?」


 髪? 一体何の……

 ああ、そうか。そういえばそうだった。


 私はすっかり色が抜けて白くなってしまった自らの髪に手をやる。


 色々ありすぎて、髪のことなんて頭からすっぽり抜け落ちていた。


「あはは、イメチェンしてみたんだけど似合ってない……かな?」


 相当ムリがあったと思うけど、そう繕ってみる。


 この髪の事を説明し出すと、今、メイの身に起きている事まで話さなければならなくなる。


 それだけはどうしても避けたかった。


 兄貴の事は信用していたけど、どこから外部に漏れるか分かったものではない。


 兄貴はポリポリと頭を掻くと、それ以上の追及はせず、ただ黙って私の頭の上にポンッと手の平を乗せてきた。


 そしてそのままゆっくりと撫でてくれる。


 全てを理解したうえで包み込んでくれる、そんな、大きくて、暖かい手だった。


「……まぁ、その、なんだ。あんま、ムリすんなよ。ヤバかったらいつでも頼ってくれていいからよ。あと、その髪スゲー似合ってるぜ。さすがオレ様の妹だ。綺麗だぜヨーコ」


「う、うん、ありがとう」


 ただの身内褒めだとは分かってるけど、それでも頬が熱くなっていくのを止められなかった。


 別に私はブラコンってわけじゃない。ただ男の人にあんまり免疫がないから、兄弟でもこういう反応をしてしまうだけなんだ。



 本当にそれだけなんだ。



 そう自分に言い聞かせる。



 心臓が私の思いに応えるように大きく脈打った。




「なぁ、お前もそう思うよな?」


「えっ?」



 ほ、他に誰かいたの!!??



 私は恥ずかしさのあまり、慌てて兄貴の手を振り払う。


 そして兄貴が呼びかけた方角へと目を向ける。



 視線の先には喪服のように黒いドレスを身にまとった、線の細い少女が立っていた。


 

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