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人類滅亡が確定した世界をチート能力で救うことが出来るか?  作者: 平 来栖
第3章 魔法少女になれた日 〜死村 メイ〜

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第25食

本作の時系列は3章→1章→2章となっております。

間が空いてしまっていたので、念のため再度ご案内させて頂きます。

遅筆でスミマセンm(__)m

「さあ! 世界を破滅に導く≪終末獣≫よ!! 出てこいや!!」


 僕の力によって、あっちの世界からこちら側の世界へと追加の≪終末獣≫が召喚される!!






 ……はずなのだが、一向に空には魔方陣が浮かび上がってこない。






「あれ? おっかしいな? で、出てこいやぁ!!」



 もう一度左腕に力を込めてみる。


 スーパー超絶チート能力神威(笑)がウィンウィンうなりをあげて、そこはかとなくヤバいパワーが迸ってる(予想)のに、お空には何の変化も訪れない。




「……もしかして……コレ……いやいや、そんなワケねーだろっ!?」


 

 諦めきれずにその後も何度も何度も召喚を試みる。


 が、やはり空には元々ある魔方陣以外に、別の魔方陣が現れることはついぞなかった。


「……マジかよ」


 

 それは魂の底からのマジかよ、だった。


 僕の考えた≪じんるいめつぼうけいかく≫が音もなく崩れ去った瞬間でもあった。




 ………精根尽き果てる、とは正にこの事。

 


 僕は力なく崩れ落ちて、その場に仰向けになる。


 ゴツゴツとした岩肌が背中に当たって痛かったけど、立ち上がる気力なんてもちろん沸いてこない。



 僕の数年間はいったいなんだったんだ??

 ああ、つーか、マジ、もう、全てがどうでもいいわ。



 徒労感がハンパなかった。


 こんなダウンな気分から立ち上がれるのは、きっとロ○ンマスクくらいのものだろう。僕は正義を謳ってもいないし、ましてや超人でもなくオラ人間だから、そのまま四肢を大地に投げ出して地面と同化していく。




 するといつのまに飛んできたのか、視界の先に空を雄大に舞う鳥影があった。

 


 デケェなぁ……アレ、もしかしてコンドルかな?



 童心にかえってその大きな翼をただボーっと眺める。



 ……カッケーなぁ、あれ図鑑で見たことあるけど3メートルくらいあるんだよなぁ、すげぇ迫力だぜ……それにしてもコンドルって群れて行動するんだな……知らなかったわ、えーっとどれくらいいるのかな? 1羽、2羽、3羽、4羽………… …………25…………25!!??



 日本野鳥の会よろしく、なんとなしにコンドルの頭数を数えていた僕はガバッと跳ね起きる。



 コレ……ダウンな気分がとか言ってる場合じゃないんじゃねーの? 完全にコレ、ロックオンされてるよな!? い、生きたまま鳥に喰われるとか死因ランキングでも最上位の悲惨さなんじゃねーのっ!?


 すると僕の予想通り、獲物の異変に気付いた1羽が突如進路を変え急降下してきた。その流れに乗り遅れまいと、次々と他のコンドルも追従してくる。


 やばいやばいやばいさすがに畳の上で死ねるとは思っていなかったけど、生きたまま鳥葬されるのとかマジ勘弁っ!!


 ダウンな気分は命の危機の前にあっさりと覆される。

 僕は慌てて力を発動させ、自分自身を転移させようとする。


 その瞬間、


「……ん? なんだ? あっちの方に……何かある??」


 彼方の方角に異様な気を検知した。

 

 それは知らないようで、よく知っているような、不思議な感覚。



「○×▽■!!(コンドルの形容できないほどに恐ろしい威嚇音!!)」


「と、とにかく三十六計逃げるに如かず!! ここはクールに去らせてもらうぜっ!!」


 とにかく色々と考えるヒマがなかったから、さっき感じた気の方角を座標にして僕は、跳んだ。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「はぁ、はぁ、はぁ」


 自分の呼吸音が耳に障る。

 

 そしてそれを聞くたびに、心がさざ波立っていく。


 けど、どうしようもない。呼吸は止められないから。


 その微妙な不快感が指先に伝わり、いつまで経っても離のタイミングが掴めないでいた。


 いや、タイミングは関係ない。

 離なんて理屈でやってない。


 体が感覚で覚えている。


 だけど、今日はその体が何の反応も示してくれない。

 

 こんな事は初めてだ。何が原因だ?

 

 食事をキチンと採っていなかったから? それともここ数日ロクに寝ていなかったから? それとも、それとも……



 ―――戦う理由を、失ってしまったから?

 


「くっ」



 考えないようにしていたのに、考えてしまった。



 ダメだ、ダメだ、落ち着け。浸っている場合じゃない。


 私は首をふって雑念を追い出そうとする。


 今、私が下手をしたら、世界が滅びるんだぞ。


 その思いだけを強く心に刻み付ける。

 


『・・・・・・・・・・』



 VRモニタに映る≪終末獣≫は、すでにその姿を半分まで現している。


 残された時間は、もってあと数秒。


 セツコさんも私と同じ画面を見ているはずだが、催促してこないのは私を信じてるからに違いない。


 

 その期待には何としても応えなければならない。



 大丈夫、私ならできるはずだ。今までこの世界を救い続けてきたんだから。


 救世の乙女と呼ばれてるんだから。


 この程度の重圧、なんとか制してみせる。




 ―――でも、私が救世の乙女でいられたのは、ミスもなく正確な射を放てていたのは、全てメイの未来を守るためだった。




 くぅぅ、バカ野郎! だからなんでまたそんな事を考えるんだよっ!!



 そんな事を考えたら、私は、私は、




 戦えなくなっちゃうじゃないかっ!!


 

 

 メイはもう、助からない。



 今、この時にも、神威に命を吸われ続けている。



 もしかしたら次の瞬間にも命を吸われ尽くして、死んでしまうかもしれない。



 あの笑顔が、小さな手が、柔らかい髪が、大きくて汚れを知らない無垢な瞳が、メイの全てが永遠に失われてしまう。



 それは闇、底知れない絶望の闇だった。



 私は、一体、どうしたらいいの。



 メイがいなくなる世界を、救う意味なんてあるの?



 私はどうしたら、どうしたらいいの? 一体



『ヨーコ様っ!!!!』


「えっ」



 セツコさんの叫び声に私は現実に引き戻される。




 いつの間にか目の前には、絶望的な光景が広がっていた。




 魔方陣から完全に姿を現した≪終末獣≫、その姿が眼前にあった。


 

 羽はもう散ってしまって枚数は分からなかったけど、その禍々しい顔つきは今まで対峙してきたどの≪終末獣≫よりも恐ろしかった。


 そしてその赤く憎しみに彩られた双眸が、VRモニタ越しに私を睨み付けている。



「ひ、ひぃ」


 


 耐え切れなくなって、私は慌てて矢を放ってしまう。



 そして放った瞬間、分かった。















 あっ、今、弓返り、しなかった。











 そして






 



 空が急に白み始める。




 これってもしかして……





 そして


 

 

 






 ドゴォォォォォォォォォォン!!!!!






 轟音








『被害状況知らせっ!!!』



『依代搭載護衛艦、一番艦から三番艦っ!! 完全に沈黙!!』



『四番艦は中破っ!! 作戦継続可能ですっ!!』



『生き残りの艦船は今すぐ横浜港近海に向かえっ!! 救世の乙女に一発でも当てたら末代まで呪ってやるからなっ!!!』



『代が続けばの話でしょうがっ!!』


 

 ガー、ガー、ガー


 

 混線しているのか、裏方の音声が私のインカムに流れてくる。



『ダメですっ!! 持ちませんっ!!!』


『速射タイプの≪終末獣≫なのかっ!!? 早く第2射を要請し』




 ガー、ガー、ガー、ガー、ガー



 顔も知らない財団員の声は、途中からノイズへと変わった。

 そしてその後、インカムからはノイズ以外の音声は流れてこなかった。




「……な、何が起きたの?」


 


 波が激しく打ち寄せてまともに立っていられなかった。

 なんとかこらえて状況を確認しようとした瞬間、



「あっ」




 今度は目の前の空間が真っ白に染まった。


 


 なにか、激しい光が前方から迫ってきている。



 もしかしたらそれが≪終末獣≫の攻撃によるものなんじゃないかと、私が理解し始めたのは、全身を光に包まれた後だった。



 これで……私は……死ぬの?


 

 唐突すぎる死の訪れに、恐怖を感じる暇もなかった。


 とりあえず、ただまぶしかったから、そっと瞼を閉じる。


 




 でも、なぜ、予言特区のここが、攻撃されたの?





 そんな疑問が、最期の瞬間に脳裏によぎった。





 ………………………



 


 ……もう死んだのかな?


 全く痛みは感じなかったけど。


 もしかしたら、痛みを感じる間もなく蒸発してしまったのかもしれない。


 ……でも、だとしたら、今、思考できているのはなぜ?



 不思議に思って、ゆっくりと薄目を開けてみる。






 

 目を開けると、私の前には影が立っていた。




 全てを白く染め上げる激しい閃光の中で、その影が占める割合はほんのわずかだったけど、それでも私の瞳に映るその影は、とてつもなく超大な壁に映った。



 だってその影は、全てを消し去る最強の防壁だったから。



 そして、影がゆっくりとこちらを向く。



「よぉヨーコ。ギリギリ間に合ったみたいだな。助っ人に来てやったぜ」


「な、なんで、ケ」


「シャラップっ!! テメェ、今、オレ様を名前で呼ぼうとしやがったなっ!!? いくら身内とはいえそれだけは許さねぇ!! オレ様を呼ぶ時はよぉ、いつも言ってるじゃねぇか」



 影はそう言うとニンマリ笑って自ら名乗りを上げる。




「K・S様と呼べってな」




 そのダサい呼称を自信に満ち溢れた笑顔で言い放った男を見て、私は―――



「―――ふふっ、身内に様は余計じゃない?」



 久しぶりに救世の乙女ではなく、かわいげのない、お兄ちゃんに守られている、そんなどこにでもいるであろう普通の妹に戻っていた。

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