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人類滅亡が確定した世界をチート能力で救うことが出来るか?  作者: 平 来栖
第3章 魔法少女になれた日 〜死村 メイ〜
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第24食

第3章最終戦より


「私の神威は――――だっ!!!!」


 少女の叫びに呼応して、神威が新たな力に目覚めるーーー

 人の意思とは関係なく時は過ぎてゆく。



 翌日、私は立っていた。



 私の戦場。


 私だけの戦場。



 横浜港上にポツンと浮かぶメガフロート、その上に建造された弓道場に私は一人、立たされていた。



 なんでこんなところにいるのだろう?

 

 いくら自問しても、答えは出てこなかった。



 それにしても……


 それはどんよりと曇っているけど、波が穏やかで、風も少ない。

 揺れもまったく感じない。



 いつぞやの時と全く同じ状況だった。



 ……いつぞや、か……


 その時、不意に数日前の出来事が脳裏に浮かんで、思わず失笑してしまう。



 大分状況が変わったな。



 ―――地球の裏側までだって射貫けそう―――



 あの時の私は、自信にあふれいて、何の迷いも無かった。


 そんな自分が居たことが、なぜか分からないが、おかしくって仕方なかった。



「ふっ、ふふふ」



『ヨーコ様、そろそろお時間になります。……ご準備の程はいかがでしょうか』



 笑い声を遮る様に、唐突にインカムからセツコさんの声が流れてくる。



 ああ、そうか、そう言えばそうだった。



 昨日、彼女は自らサポート役をかって出てくれたのであった。

 ……理由は……聞くまでもないだろう。


 私はその提案を受け入れた。


 なんせ、本当に頼りにできる大人は、この人しかいないのだから。



「ありがとう。大丈夫だよ。……それよりメイの様子はどうかな?」


『昨日とお変わりありません。……まだいつものようにグーグー寝てらっしゃることでしょう』


「……そう、ならよかった」


 まだその時が訪れていないことに、私は安堵してホッと胸をなでおろす。



 ―――メイの世話をセツコさん以外に任せるわけにはいかなかった。




 だから彼女は今日、洋館の通信室から私をサポートしてくれている。


 負担をかけてしまい本当に申し訳ないと思うが、メイが神威に目覚めたことを財団に知られるわけには絶対にいかなかった。



 奴らは、追い詰められた人類は、ギシンの人権なんて配慮しちゃくれない。



 もしメイが覚醒している事を知られてしまったら、きっとムリヤリにでも戦場に駆り出されるか、それともレアケースとして献体にされるか、考えうる選択肢はそのどちらかだった。


 今、メイが神威に目覚めた事を知っているのは、この世界で私とセツコさんの二人だけしかいない。


 通信は傍受されているだろうから、余計なことすら口にはできない。



「……今更だけど、ごめん」



 そんな状況だけど、私は謝罪する。



 財団に雇われているセツコさんにとって、これは重大な背任行為だ。

 今回の件が露見した瞬間、彼女は財団を敵に回すことになる。



 終末世界を牛耳る財団を敵に回す行為。



 それは、この世界に安住の地が無くなるのと、ほぼ同意義だ。




『……何の謝罪かは分かりませんが、一つだけ申し上げておきます。私の主はヨーコ様です。主が従者に謝罪など、軽々しくするものではありません。威厳が無くなってしまいます』



 けど、セツコさんは何の含みも感じられない淡々とした口調で告げる。そして―――



『いつまでもそんなしょげていないで、堂々と胸をお張りなさい。貴女にはそれが似合っている』



 見透かしたように私をたしなめる。



 全くかなう気がしない。この人にだけは。



「……分かったよ。堂々とね。―――やれるだけやってみる」


『ご武運を―――』



 短い鼓舞だったけど、そこには万感の思いが込められているように、私には感じられた。

 



―――とにかく、やるしかない―――



 一つ、深呼吸してから私は射場へと足を踏み入れる。


 そして額までずらしていたVRヘッドマウントディスプレイを装着する。


 視界の端に映る世界地図に、一か所だけ赤点が認められた。


 その下には距離と場所の概要が表示されている。





 ―――アリゾナ州、グランドキャニオン国立公園―――




 ここから約9,200キロほどの距離、か。



 ……私の神威の限界射程に近い距離だった。


 

 よりにもよって、こんな時に、こんな場所に終末獣が現れる。


 調子が良くてもそこまで飛ぶか分からないんだぞ?


 本当にこっち側の都合なんて、微塵も考慮してくれないんだね。



 

 ―――いいさ。やってやるよ。



 私は考えるのをやめて、無心に弓構える。


 その瞬間、いつものように音が消え失せる。


 そして―――魔方陣から現れる終末獣のつま先を視界におさめながら、じっと離の訪れを、消滅弓が放たれるその瞬間を、私はじっと待ち受けるのであった。



~~~~~~~~~~~~~



「おいでなすった」


 僕の視界の先に、でっかい魔方陣が浮かび上がる。


 そしてそこから≪終末獣≫のつま先がニョッキリと生えてくる。


 ――この予言書はホント時刻表みたいに正確だ。さすが僕のママンが作っただけはある。



 寸分の狂いもない。



 だけど……あらかじめ未来が確定された世界なんて、みんなきっとつまらないよね?

 内心、飽き飽きしちゃってるよね?

 


 人生は予測不可能だからこそ面白いんだ!!



 だから僕がもっともっと、この世界を面白くしてやるよ。



 僕は手にした予言書を谷底に放り捨てる。



 法律が変われば古い法律書はその本分を失う。


 肝心な内容が抜け落ちている予言書なんて、きっとその比じゃないだろう。

 値崩れ必死だ。



 今後は終劇の予言書なんかに、価値は無くなる。



「さてと、それじゃそろそろ始めるとしますか」



 だって、予言は変わるから。


 僕が変えるから。



 僕はあっちの世界に置いてきた左腕に力を込めて、神威(笑)を発動させていく。


 世界を混沌に陥れるために。



 今、ここより、人滅の第二ステージが、幕を開ける。


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