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人類滅亡が確定した世界をチート能力で救うことが出来るか?  作者: 平 来栖
第3章 魔法少女になれた日 〜死村 メイ〜
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第20食

おそらく何度か修正する事になるかと思います(-_-)

ご理解の程、なにとぞよろしくお願い致しますm(__)m

「……つまりね、神威が消滅の力なんていうのは問題の根本から目を逸らさせようとしている為政者たちに都合いいプロパガンダの一環に過ぎないんだ!!」


 僕は拳を振り上げて、外モブに力説する。


 結局、神威が手品でも消滅の力でもない、と外モブに納得させるのに僕は一時間近くも要してしまっていた。日、暮れかけてね?


「う~ん、なんとなく言ってることは分かったけど、一つだけ分かんないことがあるかな」


「なにさ」


 まだ納得してなかったの? 何が引っ掛かるのさ?


「なんで違うって分かるの? 教科書や財団発行のパンフには神威は物質を消滅させる力、って書いてあったけど」

 

 ああ、その事ね。財団の洗脳の根は深い。


「はぁ……それこそ頭使えばすぐに分かる事じゃない。エネルギー保存則って聞いたことあるでしょ?」


「へ? エネルギー保存則……? そ、そっかぁ、何となく分かっていたけどまさかそう来るとは思わなかったよそうだよね。うんうん」


 外モブの眼球がせわしなく泳ぎ出す。こいつ……たぶん分かってないZE。


「ざっくり言うとこの世界は閉じた系だからエネルギー総量は変化しないって事。形を変えるだけなんだ。E=mc²で質量はエネルギーと定義されるから、物質が本当に消滅していたとしたら、その質量分のエネルギーが別の形で放出されていなければ辻褄が合わなくなってしまうでしょ」


「う、う~ん、つ、つまりはどういうこと?」


「だから、もし本当に神威が≪終末獣≫を対消滅させる力だとしたら、消滅させた瞬間に大爆発が起きて、地球はとっくにアボンしちゃってるってことだよ」


「あ~なるほど。そういう事ね。それだったらたしかに財団の言ってることっておかしいのかもね」


 外モブは「ははは」と笑いながら外ハネ部分を指でくるくる巻き始める。


 まったく調子のいい……いや、そ、それよりもその外ハネ、なんかさっきよりめちゃくちゃハネてない? 形状記憶合金製なの!? それともズラ?? かぶってんの!? そっちの方が気になるわ!?


「……ま、まぁこれで神威の本質が消滅じゃないってことは分かってもらえたかな。じゃあなんなのかっていうと、さっきも言った通り転移させる力なんだよ。転移ってのはほとんどエネルギー総量に影響を与えない方法だからね。A地点の情報をB地点に書き換えているだけだから。厳密には違うけどだいたいイコールなわけさ」


「う~ん……でも、それって、おかしくない? だってそうだったとしたら≪終末獣≫ってさ、その、AからBに移動してるだけなんでしょ? でも、ニュースとか見てても≪終末獣≫が突然消えて別のところに現れたなんて話、聞いたこともないけど?」


 おおっ、外モブが筋道立てて反論してきた。

 これは人類にとってはきわめてどうでもいい一歩だが、僕は真剣に感動する。


 それに、今の質問はいい目のつけどころだ。

 この茶番劇の本質をついている。


「そりゃそうさ。だって神威で転移させた≪終末獣≫は、こっちの世界じゃなくて元いた世界に戻ってるんだから」


「元いた世界?」


「そう、≪終末獣≫の脅威にさらされている別次元の世界、この地球を犠牲にすることで平穏を手に入れたセコい連中が住まう世界さ。……ギシンの命がけの戦いっていうのはね、なんてことはない。ただのクーリングオフなのさ」


「ク、クーリングオフぅ??」

 

 外モブのリアクションは大きくて、気分がノッてくるのが自分でも分かった。結構聞き上手なのかもしれないな、コイツ。


「それを分かってもらうためには、まずそもそも≪終末獣≫がどうやってこの世界へ送られて来るのかを知る必要がある。あれは異世界の高位魔導士が使う転送魔法によってこの世界へと送られてくるワケなんだけど、向こうさんの世界もウチと同じような状況で、そんなに突飛な無茶はできない」


「そ、そうかなぁ、魔法って十分突飛な無茶って気がするけど?」


 まあたしかに。


「……と、ともかく、いくら異世界のトンデモ魔導士でも、何もない状態、0から1を創り出す複製やエネルギーの相殺なんかは不可能なんだ」


「ふん、ふん」


「だから、エネルギーの総量がほとんど変化の無い≪転送≫でしか≪終末獣≫は送り込めない。けど、この世界とあっちの世界は時空も次元も隔絶している。だから、侵略の手始めとして、奴らはまず自分たちの世界と送り込む側の世界を同期させることから始めるんだ」


「同期?」


「そう、同期。そしてそこで使用されるのが目に見えない素粒子、エタルーラ粒子だ。この魔物が誰にも気づかれない内にばら撒かれ、そしていつしか地球を覆い尽くすまでに広がっていったのさ」


「ち、地球を? い、いつの間にそんな魔物が!?」


 そう言いながら外モブはキョロキョロと周囲を見回す。いや、比喩表現だから。

 ついてきてる、よね?


「……ま、まぁ目には見えないよ。素粒子レベルの存在だからね。……とにかくこのエタルーラが地球を覆い尽くすことで、奴らの侵略はほぼ完成してしまう」


「な、なんで?」


「コイツが魔法なんかよりもトンデモない代物だからさ。魔力に反応して次元も時空も飛び越えて情報を伝達させる、という特性を持っている。だからこのエタルーラが充満していることによって、僕たちの世界とあっちの世界は隔絶しているけど、一軒隣のご近所さんよりも近しい存在となってしまっているんだ」


「へぇー、スゴイじゃん! 違う世界とご近所さんだなんて、なんだかすごくロマンチック!!」


 ねぇよ! どんなネオロマンシングだよ!


「あのねぇ? よく考えてみな? こっちの世界の人間はエタルーラなんて知らないし、扱えない。操れるのはあっちの世界の連中だけ。……つまり、こっちの世界は一方的にモノを送り付けられるだけの場所。もっとハッキリ言うと、ただのゴミ捨て場Aなんだよ」


「ゴ、ゴミ捨て場A? こ、この地球がぁ?」


 さすがにショックを受けたのか、外モブが口をあんぐりと開けておののく。


「そうだよ。異世界よりも未開で劣った文明の地球に、よりにもよって異世界ですら手を焼く大三怪異災害の≪終末獣≫が捨てられてんだよ。対処できるわけないでしょ。……まぁ僕らも似たようなコトしてるけどね……」


 強者が弱者を虐げ、富める者がより貧しい者から搾取する。

 誰もが知っている当たり前の構図が、次元を超えて行われているだけだ。

 結局、弱いモノがババを引くっていうのは、どの次元でも共通なのかもしれない。


「そ、そうなんだ。……もしそれが本当なら、そう、かもしれないね……」


 僕の言わんとしていることを察したのか、外モブの表情がどんどん曇っていく。

 アレ? この話の目的はそもそも何だっけ……?

 なんか、お礼的なヤツだったような気が……


「で、でもね、エタルーラ粒子だって役に立つことはあるんだよ! ≪世界を欺く名役者≫なんて呼ばれてるんだけど、なんと転送で生じるパラドックスを世界情報に直接上書きして自動補完してくれるんだ。不都合の一切合切がこれによって無視されるんだよ!!」


「不都合の一切合切を無視?……そ、それって……す、すごくないっ!!?」


 よく分かってないと思われるのに表情が一瞬で笑顔に戻る。

 通販番組のガヤばりのノリの良さだ。


「そうなんだよ。例えばキミが神威で首から上を吹き飛ばされたりしたとする。するとどうなると思う?」


「首から上……って、そりゃさすがに死んじゃうでしょうがっ!?」


 おまけにノリツッコミ的なことまでしてくる。

 なんだかちょっぴり楽しくなってきたっぞ♪


「普通は死ぬよ。でも、ことエタルーラがらみだと話が違ってくるんだ。転送魔法で異世界へと移動させられた物質の矛盾はエタルーラで書き換えられる。だから、キミの首は実際にはこの世界に無いんだけど、世界はある、と認識してることになる。すなわちキミは首から上は無いけど、首があった時と同じような状態で生き続けることになるんだ」


「首が無いのに生き続ける……ゾ、ゾンビかな」


 その姿を想像したのか、外モブの顔からサッと血の気が引いていく。

 いや、ゾンビというよりはどっちかというとデュラハンよりじゃね?


「世界の認識を覆すほどの強烈なショックが無い限り、その曖昧な状態は保持されるんだ。それってヤバいと思わない?」


「うんうんヤバい……それは……本当にヤバい気がする。……上手く言えないけど、何か、怖いね」



 本能的にエタルーラの脅威を察したのか、外モブは震えをおさえるように自らの腕を抱く。




 あれ……なんだか、上手くいかないな。




 僕も何だか寒気を感じて襟元を合わせる。



 というか、いつの間にか日は落ちて辺りは夕闇に包まれようとしていた。


 田舎だから結構ヤバめの暗さである。これは、もう……お開きかな。


「……とにかく!! 僕が言いたかったのは、もしギシンの神威に巻き込まれたりしたとしても、すぐに死ぬわけじゃない、ってことさ。どう? これでちょっとは安心出来たかな?」


「うう~ん、そ、そうだねぇ。あんまり安心って感じの話じゃなかったけど、ははっ、でもなんかいろいろ聞けてちょっとすっきり出来たかも」


 そういうと外モブは立ち上がって大きく伸びをする。

 あまり意識してなかったから気づかなかったけど、結構デカかった。

 あの部分とか。あと身長とかも。


 うむ、じつにけしからん(最高だ)



「ありがとね。色々と気をつかってくれて。……それで、今日は暗くなっちゃったからあれだけど、もしよかったらまたお話し聞かせてよ」


 外モブはそう言い終えると、僕に向かって手を差し出す。


「今更だけど自己紹介してなかったね。わたし橘火野華っていうの。よろしく!!」


 一応握り返しておくことにする。

 女子に手を差し出されたら、それを握り返すのが男子の務めだと思ったから。

 それ以外の意味はない。



「でさ、今度あった時はキミの話を聞かせてくれないかな?」


「……僕の?」


「そうキミの。わたし聞いてみたい。キミが今までどんな暮らしをしてきたのかとか、好きな食べ物とか、趣味とか、苦手なモノとか。とにかくキミ自身の色んなことを聞いてみたい」


「なんで?」


「えっとね、キミすごい物知りだし、話聞いてて楽しかったし、それに、わたし、なんだかキミのことすっごく気になっちゃったんだ」


「き、気になるって、ぼ、僕がですかぁぁあ!?」


 し、しまった!! なんか桃色な雰囲気につられてヘンな声が出ちまった。

 僕ともあろう者が、く、くやしぃ!!


「あっ!? へ、ヘンな意味じゃないからね。そうじゃなくて、そ、その、気になったのは、キミの目なんだよ」


 何かを察した外モブがソッコー訂正してくる。

 そ、そんなに力強く訂正しなくたっていいじゃねーか!?

 もうちょっとくらい夢見させてくれてもいいじゃねーかよっ!?


 ……い、いや、それよりも……


「僕の……目?」



 何だっていうんだ?? 



「そう! 目!! なんだかね、キミの目ってわたしのお父さんにすっごく似てるんだ。深くて、思慮深くて、そしてとっても優しい目。娘のわたしが言うのもヘンかもしれないけど、わたしのお父さんってスゴくいい人なんだ。だから、きっとキミもすごくいい人だと思うの!!」



 外モブならではの超理論によって、僕はイイ人認定されてしまう。


 いい人……ねぇ。お前ちょっと人を見る目がないと思うわ。


「だからぜひお友達になりたいなぁって思って。ダメ、かな?」



 外モブは僕の瞳をまっすぐに覗き込んでくる。


 

 僕はその視線から逃れるように肩をすくめて、しぶしぶ首を縦にふる。

 すると、たちまち外モブの笑顔が十割増しになる。まったく現金なヤツだ。




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