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人類滅亡が確定した世界をチート能力で救うことが出来るか?  作者: 平 来栖
第3章 魔法少女になれた日 〜死村 メイ〜
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第15食

その夜、夢を見た。





 夢の中でわたしは、わたし達は―――




 魔法少女ふぁぼ♥ふぁぼ♥シスターズになっていた!!



 もちろんシスターズなんだから、二人組。


 わたしの大事なシスター、それは―――。




『行くよっ!! ヨーコちゃん』


『ああ、分かってるよメイ』


 

 もちろん大好きなお姉ちゃんに決まっている。



 そして嬉し恥ずかしな変身シーンを終えて、華やかな衣装に身を包んだわたしとヨーコちゃんは、夜の街を魔法の力で飛び回りながら悪いディスルンルンたちを次々にやっつけていった。



 うーん!! 一方的に力で敵を蹂躙するのって



 超・快・感!!



 力があるってこんなに楽しいことなのね♪




『メイっ!! そっちに一匹逃げたよっ!!』



 ヨーコちゃんがわたしを頼ってくれているっ!!



『オッケー!! こっちは任せてヨーコちゃん♥ うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』

 


 その期待に応えるべく、わたしは自分で自分を鼓舞して魔力を高めていく。


 そしてもう毛穴からはみ出そうになるくらいまで魔力を高めると、それを人差し指に一点集中させ、一気に解放する!!

 



『ふぁぼ♥ふぁぼ♥イレイザ―!!』



 

 ドガァーーーン!!



 

 指先から放たれた極太レーザーによって、逃亡を図ったディスルンルンは跡形もなく消滅する。



『ナイスふぁぼイレイズ!! メイ』



 ヨーコちゃんが普段言わないであろう単語を使いながら、片手を頭の上に持ち上げる。



 ――――わたしも――――胸を張って、誇らしげに片手を上げる。



 だって、今のわたしには、きっとその資格があるもの。


 



 そして









 パシィィィン








 

 ヨーコちゃんと勝利のハイタッチを交わす。




 あぁ…………






 ―――わたしがずっとずっとやってみたかった事。







 自分の力で、こうやってヨーコちゃんと…………





 力が無ければ、神威に目覚めていなければ、きっと出来ないこと。




 夢の中でしか、叶わないこと。




 本当に、ずっと、ずっと、やってみたかった。



 大好きなお姉ちゃんの、役に立ちたかった。



 結局果たせなかった、わたしの夢。










 ――――でも、もういいの。



 夢の中で、夢が叶っちゃったから。



 だから、もういいの。



 わたしの夢はこれでおしまい。





 それに明日からは、新しい夢に向かって歩き出さなきゃいけないんだから。



 ヨーコちゃんが与えてくれた、わたしの新しい夢。



 それは、普通の女の子として生きるってこと。



 朝、ちゃんと寝坊しないで起きて、ヨーコちゃんとセツコさんにキチンとおはようの挨拶をして、朝ご飯を食べて、学校に行って、勉強をして、友達をつくって、恋もして、大人になったら結婚なんかしちゃったりして、そして子供も産んで、そして、そして―――


 

 ヨーコちゃんが出来なかったことをわたしが代わりに全部やって、そして教えてあげるの。



 普通の人生って、こんな感じなんだよって。

 


 あなたのおかげで、わたし、こんなに幸せになれたよって。



 ヨーコちゃんたちの、全てのギシンの希望の証明になるって、決めたんだから。

 



 これは、すんごく重要なお仕事。



 わたしの人生をかけて、感謝の気持ちを伝える。



 とても片手間じゃ出来ないわ。



 だからいいの。




 わたしの今日までの夢は、キレイさっぱりあきらめる。







 ――――でも、今はまだ、ちょっとだけ、いいよね?




 この夢が終わるまでは、いいよね?




 明日からは、普通の女の子になるから。




 何にもなれなかったわたしじゃなくて、ヨーコちゃんの夢を叶えるわたしになるから。




 だから今だけは、二人で―――

 

 


『さあ、次に消されたいのはどこのドイツかしらっ!?』




 わたしは夢の中で、ヨーコちゃんと一緒にいつまでもいつまでも、夜の街を飛び回っていた。


 覚めない事をどこかで祈りながら、ずっと、ずっと――――



~~~~~~~~~~~~~~~~



「……むにゃ、むにゃ……んふふふー、さぁ、つぎにけされたいのは……どこの、ドイツだぁ~ぃ……むにゃ」





…………………






……………






…………






……















~~~~~~~~~~~~~~~~~~~









 ビチャ




「うわわわっ!!!?」



 な、なんだっ!!?


 オレは慌てて空を見上げる。



 けど―――そこには雲一つない青空が広がっているだけだった。


 そして幸いなことに、滑空する翼竜たちの姿も見たらなかった。



「……ふぅ~、とりあえず助かったか」


 最悪の状況だけは免れたことに安堵する。アイツらの糞尿だと一週間は匂いが落ちないから鼻がバカになっちまう。


 それはオレのように狩りを生業とする人狼種(ワーウルフ)にとって死活問題だから、本当に助かった。



「? けど、じゃあ一体何が落ちて来たんだ?」



 オレは警戒しながら、落下してきた異物が付着した頭部に手をやる。



 ヌルッ



「……なんかの液体、か?」



 それはほとんど粘性のない、しっとりとした液体だった。


 雨ではない。そもそも空は晴れ渡っている。


 それにこの感触、どこかなじみがあるような……


 掌に鼻を押し付けて、匂いを嗅いでみる。すると



 「……似てる……似てるな」



 オレは嗅覚だけなら里の誰にも負けない自負があった。


 強い臭い、例えば腐臭なんかだったら、数キロ先からでも嗅ぎつけられる。


 だからこんな近距離だったら、匂いの粒子一粒だってこぼさない。



「コレ、アレっぽい、いや、多分そうだ」



 そして


 ペロリ


 ダメ押しとばかりにひとなめしてみる。


 口中に広がるその風味によってオレは確信する。



 間違いない、あの味だ。



 思わず舌なめずりが出る。




 この液体、これは人間種、それも若いメスの唾液の味だ。

 それにこの甘露な味わい、最上級のメスに違いない。



 あの柔らかい脾肉(ひにく)の弾力や、生命力が横溢した血液の喉ごしが思い出され、こっちの涎が垂れてきそうになる。




 オレはグルメだから、


 

 人間種のメスのことは知り尽くしている。

 その生態から素材を生かす調理法、肉質が最高になる恐怖の与え方だって何だって知っている。




 だから間違いようが無かった。













 それだからこそ、余計に困惑してしまう。


 


「??? なんでこんなモンが空から降ってくるんだ??」




 ありえないことだった。



 人間種は単独では空は飛べない。




 もう一度上空を見上げてみる。



 やっぱりそこには、滑空する翼竜たちの姿どころか、雲一つない青空がただ広がっているのみだった。




「うう~~~んん???」



 ワケが分からなかった。


 オレがこのフィレミアの地に生を受けてはや百数十年、こんな珍事にお目にかかったのは、生まれて初めての事だった。



 余りにもワケが分からな過ぎて、





「まさか、凶事の前触れ、とか?」





 そんな事を呟いてしまった程だった。



 ――けど何気なく口に出したその言葉が、一番的確にこの状況を捉えているように思えてきて、オレは人知れず、戦慄してしまった―――


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