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人類滅亡が確定した世界をチート能力で救うことが出来るか?  作者: 平 来栖
第3章 魔法少女になれた日 〜死村 メイ〜
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第10食




 気を取り直してわたし達は、駅前に点在しているDVDショップを回っていた。


 


 しかし、





「当店では取り扱ってません」



 終わってる、次。




「は? いや、オレ、バイトなんでよく分かんねっス。今、店長いないし。その棚に無ければないんじゃないっスか?」


 な~にが、スか、よ。この店がスカよっ!!





「……お嬢ちゃん、この看板見える? ホラ、コレ、R18……子供はダメよ」



 あっ、し、失礼ぃ!!




「ウチにはないアルヨ」



 どっちよそれっ!!? 紛らわしいわよっ!!?



 ~~~~~~~~~~~~~



「なんで? なんで? ありえないんだけど……」


 わたしはガックリとうなだれて、そのまま地面にひざまづく。


 すでに日は暮れかけている。なのに今日一日、ふぁぼ♥ふぁぼ♥シスターズのふぁの字すらお目にかかれなかった。

 


 横浜界隈のDVDショップのどこにもふぁぼ♥ふぁぼ♥シスターズのDVDは置いてなかった。


 それも全巻セットどころか、1巻すらないという体たらく。


 この街が……ちょっとキライになりそう……


 わたしの心は荒みかけていた。



「メイ、元気だしな」


 ヨーコちゃんが景気よく肩をポンっと叩いてくれる。


 ……きっと、ヨーコちゃんがいなかったら、わたし、今ごろ泣いていたに違いない。

 

 本気でそう思う。


「ホラ、これで涙も拭いて」


 ああ、もう手遅れだったのね。


 差し出された花柄レースのかわいらしいハンカチを、弱々しい手つきで受け取る。


 !! なんてすべすべな肌触り、荒んだ心がちょっとだけ癒されていく。


 わたしはそれで目元を拭い、そして今日一日のやるせなさを吐き出すかのように、思いっきり鼻をかむ。



 チーーーーン!!



「あ、あの、メイ? できれば鼻はティッシュで……それ結構お気にのヤツ……」



 ヨーコちゃんが何かを言っていたけど、わたしの心には何も響いてこなかった。


 もう心身ともに疲れ果てていたから。



 こんなに歩いたのは、いつぶりだろう……?

 足はパンパンで、おまけにお腹もペコペコだった。



 ぐぅ~~


 

 

 ホラ、この通り。


「ふふっ、今日はセツコさんも遅いみたいだから、何か美味しいもの食べて帰ろうか?」


 ヨーコちゃんに笑われちゃったけど、あんまり恥ずかしいとも思わなかった。

 それよりも、とにかく今はどこかに腰を落ち着けて休みたかった。


「……うん、分かった。DVDはまた今度にする。わたし豚まんが食べたいな♪」


「豚まんかぁ、ここら辺にあったかな?」


 そう言うとヨーコちゃんは目を閉じ腕を組み考え出す。きっと今頃、頭の中で地図を描いてお店を探してくれているのだろう。


 この状態のヨーコちゃんの集中力は凄まじくて、外部の情報が完全にシャットダウンされてしまう。


 その間、わたしは手持ぶさた。


 よっこいせっと立ち上がり、何気なく周辺をキョロキョロと見渡してみる。



 横浜はお母さんの予言によって被害が出ないことが()()()()()()()とされている予言特区という特別な街。だから今日も色んなお店に明かりが灯り、大勢の人が行き交っている。

 


 とってもにぎやかで楽しい街、さっきは少しキライになりかけてたけど、やっぱりそんなことない。



 ヨーコちゃんとわたしが暮らしている街なんだもの。大好きに決まっている。



 そんなことをボーっと考えならガヤガヤとした喧噪を眺めていると、ふと、道端に置かれている看板が目についた。


 そしてそこに書かれている文字を、わたしは思わず声に出して読みあげてしまう。




「DVD有り〼?」



 それは手書きで書かれただけの簡素な立て看板だった。

 

 とても品揃えが良さそうには見えない安っぽい作り。


 けど、なぜか分からないけど、そこには何かがある、そう信じさせる不思議な空気感がその看板からは漂っていた。

 


「ねぇ、ヨーコちゃん」


「……うーん、あそこはテイクアウトだけだしなぁ……他にあるとすると……」


 ヨーコちゃんはまだローディング中だった。この様子だとしばらくはかかりそう。


「……ちょっとだけ覗いてくるね」



 そう言い残し、わたしは看板の指し示す先へと一人向かう。



 そこは大通りから一本外れた路地裏で、先ほどまでの喧騒が届かないウソみたいな静寂に包まれていた。


 その奥の方で、一か所だけ扉が開け放たれ、光が外に漏れているお店があった。


 その前には先ほどと同じ「DVD有り〼」と書かれた立て看板が置かれており、そこがわたしの目指すべき場所だという事が分かる。



 ちょっとだけ怖かったけど、わたしは拳を握りしめ、勇気を奮い立たせる。





 ……待っててね、アリサちゃん、メイちゃん、わたしが必ずお迎えに行くから……





 決意を胸にお店の暖簾をくぐる。


 














 

 そして……




















 わたしの、長かった旅路に……………






 ようやく終わりの時が訪れる…………





















「魔法少女ふぁぼ♥ふぁぼ♥シスターズ? ああ、それならあるよ」












 ドパァッ

 


 瞳から、涙があふれ出して、止まらない。



 ドレッドヘアーの店員さんが何気なく言い放ったその言葉は、わたしが今日、何よりも待ち望んでいた言葉だった……

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