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人類滅亡が確定した世界をチート能力で救うことが出来るか?  作者: 平 来栖
第3章 魔法少女になれた日 〜死村 メイ〜
47/81

第8食

「あ、ああ、そ、そうなんだ。でも、まぁ別にいいんじゃないの。鬱アニメって言ってもどうせ子供向けのアニメでしょ? 別に目くじら立てるようなものでもないと思うけど?」



 女児児童向けと言っていたから、年齢的にちょっとどうかとは思ったけど、まぁメイは見た目同様中身もまだまだお子様だ。オッケーとしておこう。



 けれどセツコさんは力なく首を振って、言外に私の言葉を否定する。


「たかが鬱アニメなら私はわざわざこんなことを申しあげません。残念ながらあの作品の影響力はヨーコ様のご想像以上に凄まじいのです」


「けど、メイはそのアニメにハマってるんだよね。それを見るなっていうのは可哀想な気が」








「死ぬ」






「…………へっ?」




 ? いま、何か場違いな単語が飛び出したような。



「……ふぁぼ♥ふぁぼ♥シスターズが本来の姿を見せた第7話放映後、多くの女の子たちが亡くなるという事件が起きました。そしてそれは……自ら命を絶つという最悪の選択を選んでの事でした」



「それってまさか……自殺したってこと……?」



 コクリ



「で、でも、それがそのアニメの影響だなんて、言えないんじゃない……?」



「亡くなった全ての子供たちは私生活や家庭環境にも問題が見られなかったので、最初この件は怪事件として扱われました。しかし、彼女たちの遺書に共通点が見つかったことで、すぐに原因は判明したのです。どの遺書にもふぁぼ♥ふぁぼ♥シスターズの救いのない展開に絶望し、希望を失った、と綴られていたのです。そしてこの世界に悲しみしかないことを知り、自ら命を絶つ決心をした、と、そう結ばれていたのです」



「ウ、ウソでしょ、そ、そんなアニメが原因で、そんなくだらない理由で……本当に自殺したっていうの……?」



「…………」



 セツコさんは何も語らず、ただじっと私の顔を見つめている。


 その視線に矢に射貫かれて、上手く言葉が紡げない。

 

 私は気力を振り絞って、声帯を震わせる。


「ウソでしょ」


「残念ながら事実です。世界には人を死に至らしめる呪われた作品というものが実際に存在しています。

ふぁぼ♥ふぁぼ♥シスターズも間違いなくそのような呪われた作品群の一つになるでしょう。


さらに、本作の特徴的な点は、それが途中までは大日魔法少女シリーズの集大成として作られた紛れもない傑作だった事なのです。


当時は、誰もその内側に悪魔の計略が隠されているなどとは、気がつかなかったのです。

そのため、多くの多感な児童がのめり込み、影響を受けることとなってしまいました。


ふぁぼ♥ふぁぼ♥シスターズが史上最悪の鬱アニメと言われる所以はその内容だけでなく、被害の規模も含めての事なのです。


そして後日、調査によって本作がサブリミナルなど特殊な効果は用いていないことが判明しました。純粋に脚本の内容だけで、人を死に追いやるほどの負の力を持っていたのです。

そんな恐ろしい鬱作品はふぁぼ♥ふぁぼ♥シスターズをおいて、他には存在しないでしょう」




 ……まだちょっと信じられない。本当にそんなアニメがあるのだろうか? と。



 でも、セツコさんが私にこんなウソをつく理由が無い。

 それに、私は彼女のことを信頼している。


 だから、きっと、これは、本当の事なのだろう。



 私をジッと見つめるセツコさんの瞳。



 今更だけど―――



 その瞳の奥に、何か、とても悲し気な光が宿っている事に私は気づいてしまう。



「……ねぇ、もしかすると、セツコさんも昔」

「ご想像にお任せします」


 ……その件については、掘り下げるなってことか。

 私の疑問はかぶせ気味に封殺されてしまう。


 分かったよ。別に他人の過去を詮索する趣味なんてない。

 それに、今大事なのは何よりあの子の事だ。



「セツコさんはメイがそのアニメを見続けたらどうなると思う?」


「おそらく、今のメイ様のお心では耐えられないでしょう。当時の幼い少女たちが経験したような胸の痛みを味わい、夢も希望も見れなくなってしまう……最悪、自ら命を絶つ危険性も十分にあるかと……」



「……穏やかな話じゃないね。だとしたら―――」


「はい、そうなのです。―――絶対にメイ様には続きを視聴させてはならないと存じます」





 ……………


 …………………


 ………………………



「―――分かった。それでいこう」


 私たちはリビングに移動して、今後の方策について軽く打ち合わせしていた。


 そして、メイのふぁぼ何とかに対する興味を失わせるためには、続きが二度と視聴できないことを実感させるしかない、という結論に至った。




「……では、テレビ局の方へは明日、私が伺わせて頂きます」


「それなんだけどさ、わざわざセツコさんが行く必要ないんじゃない? 財団のコネクションを使えば電話一本で放映打ち切らせる事ができるよ」


「いえ、それには及びません。それに……こんな悪趣味なことをなさる御仁には個人的に少々申し上げたい事もございますので……」



 セツコさんの表情は相変わらずだったけど、その瞳の奥には静かな怒りの炎が燃えている……ように見えた。


 こわいこわい。


 なら、そっちは遠慮なく彼女に任せるとするか。



「ヨーコ様こそよろしいのですか? 本日は大分お疲れだったと伺っておりましたが」


「なぁーに心配することないさ。まだ若いんだし、もう大分回復したよ。それに久しぶりの妹とのデートなんだから、むしろ嬉しいくらいだよ」



 それは紛れもない本心だった。

 メイと一緒に外出なんていつぶりだろう?


 思い返してみる。










 ……だがいくら頭を捻ってみても、思い出せなかった。





 きっと、記憶が風化するくらい前の出来事なんだろう。


 その事実に愕然とし、ちょっとだけ、胸が締めつけられるように痛んだ。




「……分かりました。ではそちらはヨーコ様にお任せするとして…………おや、もうこんな時間ですか。お食事はどうなさいますか?……分かりました。今、すぐにお持ち致しますね」


 セツコさんは機敏な動作で立ち上がり、給仕のため台所へと向かおうとする。


「ああ、ちょっと待ってセツコさん」


 そんなセツコさんの背中に向かって、私は声をかける。


「はい? なんでしょう?」



 セツコさんは律儀に私の方へ体ごと向き直る。




 世話になった人にはキチンとお礼を言わなきゃいけない、ただでさえ感謝の気持ちなんて伝わりづらいのだから、と昔、兄貴は言っていた。


 兄貴のことはガサツであんまり好きじゃなかったけど、その意見についてだけはおおむね賛同している。


 だから、今晩中に、忘れない内にどうしても伝えておきたかった。





「いつもメイの事を気にかけてくれてありがとう。セツコさんが家族でいてくれて本当に助かってるよ」




 セツコさんは私の言葉を表情一つ変えずに聞いていた。そしてすぐにまたクルリと背を向けてしまう。



「礼には及びません。()()()()()()()()()()()()()



 スタスタと去っていったセツコさんの表情は、最後まで変わらなかった。










 ……ふぅ~ん、()()()()()()()()()()()()




 私はセツコさんと結んだ委託契約を思い返してみる。



 ……まあ、あまり深く追及しないでおいてあげるよ。

 それにしても昔の人はよく言ったもんだ。感心するよ。


 




 目は口ほどに物を言う、って。




 さっきのセツコさんの瞳に浮かんでいた感情、それはきっと……



「あはは、セツコさんって案外分かりやすいかもしれない」


 その時私は、一癖も二癖もある家族の秘密を見つけることが出来て、一人ほくそ笑んでいた。


 ……そうだ、せっかくだから明日メイにも教えてやろうかな♪


 そんな意地悪なことを考えながら、私は椅子に浅く座り直して、目を閉じる。


 


 光が消え去り、真っ暗な闇が目の前に広がる。




 やがて音も無くなり、私はそのまま、静かな夜の時間を、夢も見ずに過ごした。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






~翌朝~





「ヨーコちゃん!! もっとはやくぅぅ!! 急がないと売り切れちゃうわっ!!」


 久しぶりのヨーコちゃんとの横浜デート、時間がいくらあっても足りない。


 わたしはわたしの後ろをゆったりとした足取りでついてくるヨーコちゃんに向かって、声を張り上げ叫んでいた!!

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