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人類滅亡が確定した世界をチート能力で救うことが出来るか?  作者: 平 来栖
第2章 最高にロックな日 〜死村 ??〜
32/81

第5戦

5/2 とある理由で流血表現をカット致しました。ご了承の程よろしくお願い致しますm(__)m

 ……オレは覚悟を決めて神威を発動させる。


 シュンッ



 ……だが、拍子抜けするほど痛みを感じなかった。



 痛覚が、鈍くなってやがんのか……?

 


『―――その生物が恐怖しているかどうかは目を見ればすぐにわかるよ。目は何よりも雄弁に意志を伝える情報伝達機関だからね』


 ―――なんで、こんな昔のことを―――


 オレはその時、弟の一人、(るい)のヤロウが言ったことを思い出していた。

 虚言壁のあるヤツだったが、これはその中でも群を抜いてアホらしい発言だった。



 だが、何よりもインパクトのある発言だった。


 信憑性とかはどうでもよかった。

 オレはその日以来、常にグラサンをかけるようになった。


 なんてことはねぇ。


 万が一にも知られたくなかったんだ。


 最強のギシン、K・S様がいつも恐怖してたってことをな……


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ~1カ月前~


 財団からこの地に配属されたその日、オレはこれから当分の間暮らすことになる一軒家で二人の人間と対面していた。


 一人はヒョロッとした、いかにも人当たりがよさそうなツラした眼鏡の男。

 

 そしてもう一人は、品のいいワンピースを着たツリ目がちの女。服の上からでも分かるほどその身体つきは艶めかしくて、一目見てオレはゾクッときちまった。


 どうやら二人はオレのパパママ役に選ばれたらしい。


「これからよろしくな。―――くん」


 よっぽどコミュ力に自信でもありやがったのか、男の方はオレに向けて仲良くやろうぜ、とばかりに手を差し伸べて来やがった。

 それに対するオレの返答は、ただ一つだけだった。


「オレを本名で呼ぶんじゃねぇ。消すぞこのタコ!?」


 男はその場で解任させた。


 女の方は……そのまま残した。



 ……そしてオレはその晩、その女と一緒のベッドで過ごした。


 実は、その時のことはよく覚えていねぇ。

 ただ、とにかく無我夢中で気付いたら朝方になっていやがった。


 その時、一晩中オレの下で声を押し殺し泣いていたのが―――舞子だった。





 ―――後で人づてに聞いた話だが、どうやら眼鏡の男は舞子の本当のダンナだったらしい。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ううぅ、うぅ~ん」


 舞子が目を覚ます。

 先ほどの衝撃で吹き飛ばされて、気絶してたみてぇだが、目立った外傷はなかった。


「起きたか」


「あ、あれ、こ、ここは…………!!!? け、K・S!! そ、それっ!!!!!」


 おいおい、そんなデケェ声出すなよ。タダでさえお前キンキン声なんだから鼓膜がイカレちまうじゃねぇか。


 舞子は先ほどまで存在していたオレの左足がないことに血相を変えていた。


 仕方ねぇんだよ。クシャッた足をそのまま岩の下に、寝かせておくわけにはいかなかったからな。


「……心配すんな。もう痛みも感じてない。それよりもお前は……どこも痛くねぇか?」


「な、何言ってんのよ!? わ、私のことなんてどうでもいいからっ!! それよりも早く止血をっ!!」


「そんな事してるヒマはねぇ!! 順番を間違えるなっ!!」


「け、K・S……? どうしたの?」


 舞子は何かを察したのか、声を潜めてオレに問いかける。

 

 そういえば、これも誄のヤツだったか。女のカンは侮れねぇって。

 そうだよ。オレは今からお前を……


「何かあったの?」


 尚も問いかけてくる舞子の視線から逃れるように、オレは頭を下げていた。


「ちょ、ど、どうしたのよ!?」


「……オレは今からトンでもねぇ虫のいい事をいう。お前がオレの事を嫌悪しているのは知っている。お前の人生を無茶苦茶にした男なんだからな。だけど、これだけは分かってくれ。アイツらは、あの、終末獣たちだけは絶対に生かしておいちゃいけねぇ……」


 《首無し》と《全裸》のポテンシャルは単騎でも脅威的だが、組み合わされることによってその脅威は何倍にも増幅される。

 それにアイツ等は、ただ考えなしに暴れ回る他の雑魚とは違って、明らかに自分たちの特性を理解して行動していた。




 おそらく、人類が初めて遭遇する戦闘に特化したタイプの終末獣だろう。

 



 だから、どんな手段をつかってでも、絶対にアイツ等をここで屠る。


 屠らなきゃいけねぇ。


 別に世界を救おうとか、そういう大層な使命感なんてモンはねぇ。




 ただ、もし、オレがここで負けたら、他の兄弟たちがコイツラと戦うハメになる。


 覚悟も実力もない、ヒヨッコのギシンたち。


 アイツ等が犠牲になる。


 そんなことだけは、あっちゃいけねぇ。



 オレは一番、最初に生まれたギシンだ。


 物心がつく年齢になると、状況が分かって、大層絶望したもんだ。


 ……だが、オレの後ろにはもっと幼い兄弟たちがいた。


 親も世間からも見捨てられたかわいそうな兄弟たち。


 自然と、守ってやりたくなった。


 親も世間からも見捨てられた兄弟たちの面倒を見れるのは、オレしかいねぇと思った。



 それ以来、オレは常に最強のギシンであり続けてきた。


 家族に累が及ばないように。


 オレが生き続ける限り、他のギシンが戦場に立つ機会が減る。


 それだけを胸に戦い続けてきた。


 

 そして、その最強は絶対に揺らぐことは許されない。


 オレは、いつまでも最強のギシン、K・S様なんだ。




「アイツらはヤバい。ヤバすぎる。思考できてなおかつ連携まで出来る終末獣なんて、オレ以外のギシンじゃ絶対に勝てねぇ。……つまり、ここでオレが負けたらそのまま世界は終わりだ。だから確実にここで仕留めるしか、世界が生き残る術はねぇ」


「……アンタがそこまで言うなら……そうなのかもしれないね」


 舞子の口調がけわしくなる。


「それで、何?」


「……お前に頼みたいことがある。その方法でしかヤツらを殺す方法はねぇ。そして考えてる時間もねぇ。だから無理を承知で頼む!! オレのためじゃない、世界を、お前の旦那が暮らす世界を守るために、そのためだけにオレに力を貸してくれ!!」


 正直、卑怯な言い方をしたと思う。

 だけど舞子の心を動かすには、こうでもしねぇとムリなんじゃねぇかと思った。


「……私は何をすればいいのさ?」


「お前に頼みたいのは……」



 ……………………




 …………………………



「……そう、そういう作戦」


 オレの話を聞いた舞子は一度だけ天を仰ぐとすぐにオレに向き直る。


「じゃあさ、一発だけいい?」



 オレの返答を待つことなく、舞子はオレの頬を軽く殴りつけていた。



「見くびるなよ!! 私はとっくに覚悟を決めてる。あの時から男はアンタ一人だけだ!! だから元旦那のためじゃない。アンタだ。アンタとアンタが守ろうとしている、この世界を守るために喜んで体張ってやるよ!!」


 舞子は何の迷いもない瞳をオレに向けてそう言い放っていた。



「だからそんなシケたツラしないで、いつもみたいに不敵に笑いなって」



 歯を見せてニッと笑う舞子




 その笑顔を見て、オレは、オレは…………




 唐突に視界が曇る。




 どうやらオレは、とんでもない思い違いをしていたらしい。


 コイツは尻しか取り柄のない、何の変哲もない女じゃなくて


 あの夜からオレを夢中にさせている、宇宙一イカした、最高の女だ。


「すまねぇ、すまねぇ」


「……ホラ、その似合ってないサングラス外しなよ。それで最後に見せておくれ。アンタの可愛くて優しい、その瞳をさ……」

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