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人類滅亡が確定した世界をチート能力で救うことが出来るか?  作者: 平 来栖
第2章 最高にロックな日 〜死村 ??〜
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第4戦

……オレは攻守壁の中から、出現した終末獣の様子を伺う。


 現れた二体はどちらもサイズは終末獣にしちゃあ極端に小せかった。

 比較対象がねぇからなんとも言えねぇが多分10m~12m程度だろう。


 ……だが見た目のサイズで判断するなんて、トーシロウのやることだ。


 コイツラの脅威はデカさじゃねぇ。

 出現時に見せる羽の枚数が全てだ。


 現時点で観測されている最強の終末獣は、慈恩のババアが倒した(?)と言われている十六枚羽根だから……コイツラは間違いなく世界新だろう。



 ……クックックック、そうなるとコイツラをぶち殺せばオレはクソッたれのババアを超しちまうってわけだな?



 ――――震えてきやがるぜ!!



 二体とも……獣っつうよりは人型に近い形態だった。


 一体は、西洋の甲冑を着こんだ騎士みたいな恰好のヤツ。その首から上には顔が無かった。

 何か神話に出てきそうなナリだな。とりあえずテメーは《首無し》に決定だ。


 もう一体は……こっちはほとんど裸にちけぇから《全裸》でいいか。顔は凹凸のない平坦なのっぺらぼうだが、何よりも特徴的なのは頭部先端がトンがって、刀みたいになってることだ。まあアレで切ったりすんだろうな。分かりやすいヤツだぜ。


 二体は地上に降り立つと、咆哮を上げるでもなく、ただこっちを向いて突っ立ってやがった。


 それだけで他の終末獣とは明らかに違うことが分かる。

 弱い獣ほどよく吠える。貫禄がちげぇ。


 どうする?先に仕掛けるか?


「K・S……大丈夫?」


 悪ぃが今はお前にかかずらっているヒマはねぇんだよ。


 ……よし!! 少し引っかけてやるか。

 オレは熟考の末、足裏に力を込めて攻守壁で連中の鼻先をかすめてみる。


 ……特に反応はない。


 当てちまうぞぉ~、いいのかぁ~?


 何度か伸縮を繰り返して挑発してみるが、全くの無反応状態が続く。


 なんだ?寝てんのか?

 ……なら、とっとと終わらせて帰らせてもらうとするぜ!!


 オレは攻守壁の範囲を広げてまずは《全裸》の方を狙い打つ!!


 全てを消し去る虚無の壁が押し寄せ、ヤツは削り取られるっ!!






 はずだった。




 だが、オレの攻守壁が到達しようとした瞬間、ヤツは機敏な動作で後ろにスウェイバックして距離を取りやがった。


 コイツ、見えてやがるっ!?


 視認できない虚無の壁を避けるなんて芸当、今まで相手して来た雑魚どもとは、やはり格がちげぇようだ!!


 敵さんのはしこさにオレは素直に感嘆する。


 だが。


「甘ぇよ!!!」


 オレは両足裏に力を込めて、そのまま奥意に移行する!!


 攻守壁の一部が銛状に変形し、退避中の終末獣に向かって必殺の追撃が放たれる!!


 攻守壁の総量は感覚で全て把握している。


 オレはその範囲内なら、奥意によって形状を自在に操ることが出来る。


 普段は全方位からの攻撃に備えドーム状に展開させているが、今のような奇襲を仕掛ける際には、背面に展開させている分量を流用させることだって出来ちまう。


 何でもありの万能の障壁だぜ。


 あばよっ!! 見掛け倒しのクソケダモノヤロー!!



 まずは一体目だっ!!!





 バシュゥ!!






 

 勝利を確信したオレの目に飛び込んできたのは






 あり得ない光景だった。



「おい……なにヤッてんだ……テメェは…………」


 なんでオレの攻守壁を


 絶対最強の虚無の一撃を喰らって


 なんでテメェは…………


 オレの放った追撃は《全裸》を守るように立ちふさがった《首無し》によって防がれていた。


 そして《首無し》のヤロウはオレが変形させた銛状の攻守壁をその身に受けても、



 何一つ欠損することなく、その場に屹立していやがった。




 あり得ねぇことが起きてやがる。

 何の悪夢だコレは?


 今まで手足のように操っていたはずの万能の神威が、突如訳の分からねぇモンに感じられて、その時、オレは生まれて初めて、



 ブルっちまった。







「おおおぉぉぉらぁぁぁぁ!!!」


 んなヒマはねぇ!!


 攻守壁が効かねぇ生きモンなんているはずがねぇんだ!!


 オレは周囲に展開していた攻守壁を全て前面に集め《首無し》のヤツにぶち当てるっ!!


 今、もし横や背後から攻撃されちまったら、オレは一たまりもねぇだろうがかまいやしねぇ!!


 オレを一瞬でもビビらせたこのクソヤローをぶちのめす方が重要に決まってる!!


「な、何?ど、どうしたの?」


 舞子はオレがいきなり叫び出したことに狼狽しているようだが、

 黙ってろ、お前みてぇな凡人には一生かかっても理解できねぇ!!


 この命がけの攻防はよっ!!


「うぅおぉぉらぁぁぁぁっ!!」


 オレは全ての質量を集めた攻守壁で《首無し》を押し出す。



 ピキッ




 なんだ? 今、一瞬だけ……

 


 オレは《首無し》の装甲に一瞬だけ亀裂が走ったのを見逃さなった。

 だが、それは瞬きをする間のことで、次の瞬間にはすぐに元の形に戻っていた。



 ケッケッケッ!!そういうカラクリか。


 ただ当てるだけじゃ、テメーの再生能力に追い付かれちまうってことだな?


 ならどんな形なら届く?剣か、刀か、斧か、槍か、それとも銃弾か?


 オレは攻守壁を様々な形状に変形させながら、ソイツを縦横無尽に《首無し》に叩き込んでいく!!


「オラオラオラオラオラオラッ!!このボケがぁぁぁぁ!!!!」


 腰を落として大地を踏みしめる。


「死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!死にさらせッ!!!!!!!!!」


 足の裏が焼けるようにアチィ。


 こんなに短時間で奥意を酷使したのは初めてかもしんねぇ。


 だが悪くはねぇ。心地いい疲労感だ。


 《首無し》の鎧に走る小さな亀裂がみるみる増えていき、線が線とつながって大きな亀裂へと変じていく。



「おぉおぉぉぉらぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁ!!!!!」


 ピキッ、


 ピキッ、ピキピキピキピキピキピキピキピキピキピキピキピキピキピキ




 へっ、どうやら根競べはオレの勝ちのようだな?



 バリィィィン!!



 怒涛のラッシュに耐えきれなかった《首無し》の装甲は砕け落ち、ブヨついた肉の面が姿を現しやがった。



 うっし、死ね。



 オレは攻守壁を錘状に尖らせると、その隙間にぶち込もうとする。



 刹那―――



 背後にとんでもねぇ圧を感じた。


 振り返ると《全裸》のヤツが前傾姿勢で突っ込んでくるところだった。


 チッ、仕方ねぇ、いったん戻すか。


 オレは奥意の一部を解除して、背面に攻守壁を展開する。


 《全裸》の全力疾走なら気付いても避けられない、そんくらいの至近距離にオレは攻守壁を設置してやった。


 死に向かって一直線ってヤツだな。

 




 だが……なぜかその時オレはヤバイ雰囲気を肌で感じていた。



 ……なんだ?コイツ、減速する気配も見せねぇ?


 見えてるはずのなのに何でだよ……?


 ……まさかテメェは……


 テメェの特性は!!



 思考のヒマはなかった。

 とにかくオレは全ての攻守壁を《全裸》の前に展開させ







 ズガァァァァァァァァァァァァァァァン!!!









 爆弾が落ちたのかと思った。


 気付くとオレの身体は宙高く吹き飛ばされていた。








 ……そういう事だったのか。





 

 最初に見た時に気付いていれば、





 今、完全に分かった。



 跳躍した《全裸》の頭は今、全総量を集めた攻守壁をバターのように切り裂いて突き抜けて来やがった。





 依代に逸れてくれたおかげで直撃は免れたが、それでもこのザマだ……




 つまりコイツラは、



 《首無し》は攻守壁に抗う防御力、



 《全裸》は攻守壁を打ち破る攻撃力。



 最強の矛と盾だったっけ訳だ。

 なんつうアンハッピーセットだよ。


 タッグで初めて真価を発揮するタイプの終末獣なんかがいるなんて。

 《首無し》と遊んでるヒマがあったら、先に《全裸》をぶち殺しておけば……



「ぐぼぉぁ」



 なんだ?オレは今どうなってやがる?

 分かんねぇけど、イテェ、超イテェ、死ぬ、マジ死ぬ。


 呼吸をするたびに体中が悲鳴をあげてやがる。

 耳鳴りが止まらない。


 オェェェッ


 オエェェェェェッ


 ああああ、血、血、じゃねぇか、コレ



 あ?あ、あ、あ、ああああああぁぁぁぁぁぁああああああああぁぁぁぁぁ


 足が、足が、足がオレの足があぁぁぁぁぁぁああああぁああああぁああ


 岩がオレの足をぉぉぉぉぉおおおおぉぉ。


 余りの痛みに脳ミソがぶっ飛んじまう。



 クソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソが



 オレは終末獣への怒りを唱えて痛みを遮断する。




 その時の気分?


 決まってんじゃねぇか。








 絶望











 死んじまうかと思う程の激痛と、片足が使えなくなってしまった事実はオレの臓腑を震え上がらせた。





 だが……それだけじゃなかった。


 オレはコイツらの役割に気付いた瞬間、閃いていたんだ。




 コイツラをぶち殺す方法を。





 ……だがそのためには、どうしても必要なモンがあった。



 それが無ければ勝つことは出来ねぇ。



 オレが最後に脳裏に思い浮かべた切り札は、神威でも奥意でもなかった。




 自分の立場もわきまえずオレに説教かます、



 尻のデケさだけが取り柄の、何の変哲もない人間の女





 舞子だった。

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