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人類滅亡が確定した世界をチート能力で救うことが出来るか?  作者: 平 来栖
第1章 タケノコの山が消えた日 〜死村 仁〜
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第16話

 映像は三分程度で終了し、スクリーンが元の位置へと戻っていく。



「……テメェら、オレを、脅そうっていうのか」


「何のことでしょう? ただ私はあなたにご家族の映像をお見せしただけですよ。聞くところによると、嵐山さんは若い頃、大分ヤンチャをされていたとか。親孝行、したいんじゃないですか?」


「ふっ、ふざけてんじゃねぇ!! テメェ、一体何さまのつもりだよっ!! もしオレの家族に何かあったらぶっ殺してやるからなっ!!」


 眼鏡男は臆する様子もなく、眼鏡の奥の冷たい眼光を向けてくる。


「ふふっ、貴方が素直にいうことを聞いてくれれば何も起きませんよ」


「テメェっ!!」


 そのどこまでも人を食ったような発言に、オレはブチ切れた。


 すると眼鏡男がボソリと一言。














「……たしか左フックだったかな」











 振りかぶろうとしていた手が止まる。


 おい、なんでだ、なんで今、オレがやろうとしていたことが分かったんだ。

 まさか、まさか、そんなことまで。


「おや、どうしました?殴っていいんですよ。誰も貴方を咎めなどしない。むしろそうしてもらわなければ困ります。予言が狂ってしまいますからね」


「……ウソだろ。だってオレがアンタを殴ろうとしたのは、たまたまそうなったからで、そんなことまで……」


 言葉を失ったオレの元へ、眼鏡男がゆっくり歩み寄って来る。

 そしてオレの拳を掴むと自分の頬へとあてがう。


「ひとまずこれでオッケーとしておきましょう。予言は無事成就された」


「!!!?」


 その時のヤツの目を見てオレは理解した。

 コイツは普通じゃない。

 形容できない、違う、ヤバい、今まで出会った事の無いタイプの人間、いや、そうじゃない。


 そもそも ()()()()()()!!!


「そこまでにしておけ嵐山くん」


 事の成り行きを見守っていた教頭が仲裁に入る。


「キミが引き受けなければ、人類全体に迷惑がかかるかもしれないんだ。ここはこらえてくれ。

それに、私はあまりこういう物言いは好きではないのだが」


 教頭はそう前置きすると咳払いして一言。


「こういうのをきっと運命というのだろう」


 現実主義者のアンタがそんなこと言うなんて……全く笑えねーよ!!



「はっ、ははっ、ははは、はははははは」



 だけど笑うしかなかった。

 乾いた笑い声を上げるのがその時の精いっぱいだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 結局、社会の歯車となって久しいオレに、断ることなど出来なかった。


 なし崩し的にオレはギシンの担任にさせられちまった。


 バタフライエフェクトよろしく、オレが担任になることで人類の未来に影響が出るなんてはっきり言って今でも思ってない。


 だけどなっちまったモンは仕方ない。

 オレは猛獣と同じ檻の中で、恐怖に耐えながら毎日教鞭を振るうしかないんだっ!!!


「くっ、く、くぅ」


 だけど今日の授業はヤバかった。


 なんで誰もオレをフォローしてくれないんだ!?

 教科書くらい特注だって普通は思うだろうがよっ!!

 こちとら確認なんぞしてる余裕はないんだよっ!!


 アイツの機嫌を少しでも損ねたら、どんな事態になるか分かってるのかよ!?


 あああああ!!


 目を閉じると闇の中でアイツと目が合う。


 ダメだ、やめろ、オレを見るな。


 その目でオレを、見るな。


 ギシンの目で、オレを。


「うわああああああああああ!!」


 オレは起き上がって部屋中を駆け回る。


 本や家具が床に散らばっていく。


 関係ねぇ!!関係ねぇ!!ジッとしてるとおかしくなっちまいそうなんだっ!!!


 うわああああああああああああ!!!!


 ガシャン、バリンッ、グシャ、ドリン、バリンッ!!


 足の踏み場が無くなるほど室内が荒らされていく。

 

「………はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……ひ、ひぃぃっ!」



 い、いつからそこにいたんだ?


 虚ろな瞳のアイツと目が合った。


 だが、よく見るとそれは財団から渡された申し送り書だった。

 死村 仁の顔写真と共に、アイツのプロフィールが列挙されている簡素なA4用紙。

 その紙切れにオレは八つ当たりする。


「オ、オレはお前なんかに殺されねぇからなっ!!クソッ、クソッ、クソがぁ!!」


 紙が宙を舞う。

 そこに記された内容は何度も見たからそらんじることだってできる。


 氏 名:死村 仁


 年 齢:16歳


 性 格:気まぐれ、厭世的


 神 威:消滅系


 発動条件:感情が高ぶった時、消滅させる意志をもって対象を視野に収めた時


 範 囲:人間の有効視野とほぼ同等


 備 考:殺人 前科一犯


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、くっ、くぅぅぅぅぅぅ」


 こんな事したって意味はないことは分かってる。

 どうせ明日になれば、またオレは死の恐怖に怯えながら教壇に立たなくちゃならない。



 何度逃げ出そうと思ったか分からない。だけど、もし、オレが逃げたらその時は……。



 オレは大人しくベッドに潜りこみ目を閉じる。

 叫び出したい恐怖を毛布を噛んで耐える。

 涙が止まらない。


「くっ、くぅぅ、くぅぅ、こえぇ、こえぇ、こえぇよ、おがぁちゃん」

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