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エンドリア物語

「Book」<エンドリア物語外伝69>

作者: あまみつ


 魔力はゼロ。

 剣は使えない。

 武道家志望。

 魔法の勉強はしなかった。

 する必要を感じなかった。

 そのことを、今オレは激しく後悔している。

「これを買って欲しい」

 カウンターに置かれたのは一冊の本。

 桃海亭は古魔法道具店。魔法が掛かっている本なら買う。魔法に関する本なら買う。

 赤い山羊の革張りに金箔押しを施した豪華な装丁。背表紙と表紙には、飾り文字で本の題名が書かれている。

 デカデカと書かれているが、読めない。

 魔法文字だ。

「買値はいくらだ?」

 桃海亭に持ち込んだ男は魔術師だった。

 年は50歳前後だろう。黒いローブに絹の太い紐。カマキリに似た逆三角形の顔は、頬がこけ、目はくぼみ、目の下には黒々としたクマがあった。

「銀貨2枚でいかがでしょう?」

 本は高い。

 小説でも買わず、貸本屋から借りるのが普通だ。

 新作の小説を買うとしたら、銀貨5枚。古本でも銀貨2枚。魔法に関係する本となると安くても金貨3枚。高いものは天井知らずだ。

 それほど高い魔法の本を、オレが『銀貨2枚』と値を付けたには理由がある。

 ムーもシュデルも、いないのだ。

 ムーは散歩に、シュデルは買い物に出ている。

 桃海亭は持ち込んでの買い取り依頼は少ない。2人が留守になることはあっても、短い時間だから問題はなかった。極まれに持ち込みがあっても、オレの勘で適当な価格をつけてしのいでいた。

 だが、本はダメだ。

 勘でつけられる物じゃない。

 ムーの部屋に積み上げられている怪しげな魔術の希覯本の数々に、シュデルは決して近寄らない。

 つまり『銀貨2枚』というのは、売り主に暗に『買う気がない』ことを告げているのだ。

「わかった。それでいい」

「へっ?」

「金を渡せ」

「銀貨ですよ。金貨じゃないですよ」

「耳はいい方だ」

 カマキリ顔はギロリとオレをにらんだ。

 この状況だと、オレが『買うのをやめました』と言っても、『買うと言った』『買わない』のトラブルになるだけだ。

 手提げ金庫から銀貨2枚を男に渡すと、男は素早くローブの袖に入れて、店を出ていった。

 残されたのは、豪華な装丁の分厚い本。

 題名に書かれているのは魔法文字だとわかるのだが、1文字も読めない。魔術を使用する為の本なのか、魔術の知識の本なのか、それすらもわからない。

 触れたくないので、カウンターに放置した。

 数分後、シュデルが帰ってきた。

「店長、その本はどうされたのですか?」

 店に入ってきての第一声だった。

「買った」

「それはわかっています。なぜ、買われたのですか?」

「断るつもりで銀貨2枚と言ったら、『それでいい』と置いていった」

「そうなのですか」

 シュデルが近寄ってマジマジと見ている。

「こいつはなんだ?」

「魔法がかかっている本です。僕の力の影響は受けないようですから、売り物にできると思います」

「売っていいんだな?」

「それについてはムーさんに聞いてください。僕にはこれがどのような力を持っている本かわかりません」

 オレは表紙を指した。

「題名が書かれているぞ」

 シュデルがあきれた顔でオレを見た。

「店長、お願いですから、魔法について勉強してください」

「もしかして、題名では内容がわからない本なのか?」

「この魔法文字を読めるのは、ムーさんか、魔法文字の研究者くらいです」

「古代の魔法文字とかなのか?」

「いいえ、200年ほど前に作られた魔法文字です。複雑な魔法を使えるように開発されたのですが、文字自体の構成が複雑すぎて普及せず、使用されなくなったはずです」

「シュデルの魔法道具でこの文字を読める道具は」

「いません」

 魔法の力を持っている本。

 いま得られた情報はこれだけだ。

「シュデル、これに触れても大丈夫か?」

「はい、大丈夫だと思います」

 オレは恐る恐る本を指で突っついた。問題はない。右手で素早く持ってカウンターの下の開いている棚に放り込んだ。

「ムーが帰ってきたら、聞いてみるか」

「それがよろしいかと思います」

 オレもシュデルも本の処理方法が決まったことで安堵した。

 そして、

 うっかり、

 ムーに聞くのを忘れた。




『キェーーーーーーーーー!』

 凄まじい悲鳴に、熟睡していたオレは飛び起きた。

 外は真っ暗。

 時刻は、ちょうど日付が変わったあたりだ。

『キェーーーーーーーーー!』

 音は桃海亭内から聞こえている。

 オレは階段を駆け下りた。

『キェーーーーーーーーー!』

 音はカウンターの下から聞こえた。

 カーテン越しに見える町の風景に、明かりがポツポツと灯り始めた。この悲鳴で起きてしまった家だろう。

 オレは2段跳びで2階にあがると、ムーの部屋に飛び込んだ。寝ているムーを小脇に抱えて、階下に降りる。

 桃海亭の扉がドンドンと外から叩かれた。

「すみません!いま音を止めている最中です。開けると危険なので、ちょっとだけ待ってください!」

「急げよ、人が集まってきている」

 隣の靴屋、デメドさんの声だった。

「はい、急いで。ほれ、何とかしろ」

 ムーの顔を本のある棚に突っ込んだ。

「………怪奇全集」

「はぁ?」

「そう書いてあるしゅ」

『キェーーーーーーーー!』

 間近で聞くとハンパない声量だ。

「よっこだしゅ」

 ムーが顔を抜きながら、本を取り出した。

「ここには『心まで凍る真の恐怖をあなたに』と書いてあるだしゅ」

 ムーが表紙の一部分を指したが、グニャグニャの文字にしか見えない。

「店長!これを!」

 店に飛び込んできたシュデルが、オレに魔法道具【音を消す籠】を差し出した。

「よし、こいつに入れれば、と」

 籠の蓋を開けて、本を入れた。蓋を閉めようとして、閉まらないことに気がついた。本の長さが、わずかに長い。

『キェーーーーーーーー!』

 ムーが本を籠から取り出した。

「なんで叫ぶしゅ?」

 ごく普通に、人間に聞くようにムーは本に聞いた。

『話を聞いてくれないからだ』

 声は表紙からした。表紙が振動して音を出しているようだ。

「話を聞けばしゃべらないのか?」

 オレが聞いた。

『夜になり、時計の短針が0を指したら私の時間だ』

「わかった。話をきいてやるから、とりあえず叫ぶな」

『では、話を始めよう』

 オレはドアの外に向かって怒鳴った。

「デメドさん、お騒がせしました。とりあえず、声はとめました。詳しくは明日話します」

「わかった。こっちはオレが何とかしておく」

「ありがとうございます」

 人々が桃海亭から遠ざかっていく音がする。

 シュデルが店の奥にある扉に向かった。

『どこに行く』

「この籠を倉庫に片づけてきます」

 シュデルが律儀に答えた。

『ここにいろ』

「僕も聞かないといけないんですか?」

『この家にいるものが全員で聞かなければいけないのだ』

 また、叫ばれても困る。

 オレはシュデルを手で呼び、渋々シュデルは戻ってきた。

 そして、オレとムーとシュデルは3人で朝まで本の話を聞いた。




「トイレについてきて欲しいしゅ」

「わかる。わかるけどな、店があるんだよ」

「ひとりでいけないしゅ」

「店長、3人でいきませんか?」

「店はどうするんだよ」

「この際、トイレが先です」

 本は『心まで凍る真の恐怖』をオレ達に与えた。

 話の内容は【刑場に出る生首】や【町をうろつく死霊】といったよくある話なのだが、話し方が真に迫っていて、聞いている間は恐怖で動けなかった。朝日が射して、本が『今日はここまで』と言って、本を閉じたときには、3人でトイレの奪い合いになった。

「トイレ、トイレ、もれちゃうしゅ」

「しかたないか」

「ラッチ、店番お願いしますね」

 ロングソードに店番を頼んで、昼日中に男3人でトイレに行った。戻ってきてから、今夜行われるであろう本の語りをどうするかを話し合った。

「店長、僕はもう聞きたくありません」

「わかるけど、叫ばれるのはなあ」

「ムーさん、壊せませんか?」

「ロンダの呪いがついてるしゅ」

「それだとダメですね」

「ロンダの呪い?」

「ロンダは解除不可能です」

「呪いは返すが基本だろ?」

 ムーと閉じこめられた深緑の塔で学んだ。

「呪いという名前だしゅ。呪いじゃないしゅ」

「呪いじゃないのか?」

 頭の中が混乱しそうだ。

「はい、壊したアイテムの一部の機能が、壊した術者に永続的に張りつくシステムです」

「もしかして」

「今回のロンダの呪いは【怖い話を話し続ける】だしゅ」

「ダメだな」

「はい」

 叫ばれるのは困る。

 話は二度と聞きたくない。

 オレは決心した。

 深夜23時、あと1時間で日付が変わる時刻。オレとムーは足音を忍ばせてある場所に向かっていた。眠りについたニダウの町は静まりかえっていた。オレ達は足早に目的地に急いだ。

 そして、ニダウ警備隊の詰め所の横にソッと本を置いて、一目散に桃海亭に逃げ帰った。




「いい朝だなあ」

「はい」

 昨夜、3人でトイレに行った後、店で布団を持ち込んで雑魚寝した。ムーの歯ぎしりすらも、心安らぐ子守歌に聞こえた。熟睡して、朝日で目覚めた。

 隣では、笑顔のシュデルが窓から差し込む朝日を眺めている。ムーは爆睡中で布団から転がり出て、腹をポリポリとかいている。

「飯でも食うか」

 オレとシュデルは布団を片づけて、食堂で簡単な食事を取った。

 店を開けるために、シュデルが掃除道具を持って店の外に出た。

「て、店長!」

 シュデルが駆け込んできた。

「げっ!」

 手に持っているのは、昨日警備隊の詰め所に置いたはずの本。

 オレは本をひったくるようにして受け取ると、詰め所まで必死に走った。

「はぁ、はぁ、落とし、落とし物です」

 詰め所にいた警備隊の隊員に手渡した。

 受け取った隊員は、

「グガッ!」と、一声叫んだ後、オレに本を返そうとした。オレは走って逃げた。走りながら後ろに向かって、怒鳴った。

「今朝、桃海亭の前に落ちていました。よろしくお願いしまーす」

 店に戻ると1時間もしないうちにニダウ警備隊のアーロン隊長が本を持ってきた。目の下にでっかいクマがある。

「魔法の本の扱いは、警備隊ではわからない。持ち主が現れるまで預かって欲しい」

「預かれません。魔法の本でしたら、シュデルの影響を受ける可能性があります」

 シュデルが慌てて食堂に移動した。

 オレはカウンターから身を乗り出した。

「わかっていただけますね?」

「悲鳴がしたそうだ」

「はい?」

「一昨日の夜、キケール商店街に悲鳴が響きわたったことを我々はつかんでいる」

「ムーが店内に危ない魔法陣を書いたのを見た魔法道具のひとつが、シュデルを呼ぶためにたてたものです。あの悲鳴のおかげで災害は未然に防げました。」

「本を捨てたのは、桃海亭だな?」

「なぜ、本を捨てるんですか?本は高いものです。オレ達だったら、捨てずに売ります」

「この本は………わかった」

 疲れた顔をしたアーロン隊長は、本をつかんで出ていった。

 シュデルが食堂から顔を出した。

「危なかったですね」

「ああ」

 オレは額の汗を拭った。

 それから、すぐにムーに頼んで、店の前に魔法陣を書いてもらった。本が近づくと、魔法陣が赤い光を浮かび上がらせる。赤い光が浮かぶと、オレとシュデルが店を飛び出して、キョロキョロと見回す。

 赤い光は10分おきくらいに光ったが、日が落ち、23時頃に光らなくなった。日付がかわったところで、オレ達は安心して眠りについた。



「これを預かってくれ」

 翌朝、寝不足の顔で桃海亭に現れたのはアレン皇太子。

 カウンターにドンと置いたのは、見覚えのある分厚い本。

「当店には異能を持つシュデルがいるので………」

「持ち主が現れたら、賠償金はエンドリア王国で持つ」

 目の周りは真っ黒。追いつめられた表情でオレを見た。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫なものか。昨夜、ロビーに置かれたこの本が悲鳴を上げたのだ。調べたが、誰がいつ置いたのかもわからない。悲鳴がうるさいので、本の要求に従って、城の全員をたたき起こし集めたら、あれだ」

「あれとは?」

「本が語り始めたのだ。話は【呪われた王城】。舞台は小さな王国にある小さな王城。いきなり、召使いが惨殺される。犯人は皆目検討がつかない。調べていた兵士たちが次々と殺されるのだが、死に様がえぐいのだ。心優しい王家の人々を皆が守ろうとするのだが、その甲斐もなく王家の人間も次々に殺されて、最後は王城には誰もいなくなるという結末だ」

 小さな王国の小さな王城。

 目の前にいるアレン皇太子のエンドリア王家と重なる。

「頼んだぞ」

 さりげなく、置いていこうとした。

「預かれません!」

 断ったオレを無視して、店を出ていこうとした。

 その後頭部に向かって、オレは本を投げつけた。

 ヒット。

「なにをする!」

 怒ったアレン皇太子が振り向いた。

 かなり痛かったようで、後頭部をさすっている。

「そんな怪しげな本は桃海亭では預かれません!」

「皇太子の命令だ!」

「置いていったら、夜、王宮に投げ込みますよ!」

 オレとアレン皇太子がにらみ合った。

「あの……提案があるのですが」

 食堂からきたシュデルが、片手をあげた。

「どんな提案だ!」

 アレン皇太子が怒鳴った。

「海に沈めるとか、人のいない山に捨てるとか、深い穴を掘って埋めればいいのではないでしょうか?」

「その手があったか」

「今なら、まだ時間があります。自動二輪で隣の国の山中にでも捨ててきます」

「いや、他国に迷惑をかけるのは心苦しい。枯れ井戸でもあればいいのだが」

「西の森の狩り小屋の側に、先月ムーが掘った深い穴があります」

「あんなところに、穴を掘ったのか?」

「いえ、その、穴を掘りたい気分で、せっせと掘ったんです」

 アレン皇太子が眉を寄せた。

 オレは目をそらした。

 いつものことだが、あまり口にしたくない事実。

 ムーが異次元召喚に失敗したのだ。

 できそこないのトウモロコシのような召喚獣が地中から出たり入ったりした。同じ場所だったので被害はほとんどなかったが、出入りする度に穴は深くなり、3日後にいなくなったときには、石を落としても落ちた音が聞こえなくなるほど深い穴になった。

「わかった。こいつを入れてこい」

 本を渡された。

 オレは皇太子に敬礼した。

「わかりました。至急、入れてきます」



「どういうことだ?」

 目の周りが真っ黒で、土色の顔をしたアレン皇太子が、見覚えのある本を桃海亭のカウンターに置いた。

「オレ、捨ててきました。穴に入れて、大きな石をいくつも落としました。人が穴に落ちないように木の板を置いて、そこらへんの草を掛けてわからなくしておきました」

「手慣れているな」

「そりゃ、いつも………いえ、なんでもありません」

「昨夜は【首なし騎士】の話だった。剣を引きずって城内をさまよい歩くところなど真に迫っていて、意識が遠のきそうだった」

 アレン皇太子の手がワナワナと震えた。

「頼む。預かり料は払う。引き取ってくれ」

「穴に入れても城に行くなら、オレのところで預かっても、また城に戻ってしまうのではありませんか?」

「そんなことはない!」

 アレン皇太子が断言した。

「本当ですか?」

「そうでないと困る」

 皇太子が必死の形相で言った。

「今夜も話されたら、寝不足で王宮が機能不全におちいる。宿直の兵達ですら、今夜は王宮に泊まりたくないと騒いでいる」

「わかりました」

「預かってくれるか!」

「今度は海に沈めてきます。塩水で重くなれば、本も移動できないでしょう」

「そうだな。いいアイデアかもしれない」

 アレン皇太子に生気が戻った。

「ダメだしゅ」

 水を差す声がした。

 奥の扉からムーが、トテトテと歩いてきた。

「帰還の魔法がかかっているしゅ。午前0時になったとき、話を聞いてくれる人が周囲にいないと、最後に話を聞いてくれた人がいる場所に飛んで移動するしゅ」

「あ、ああっーーー!」

 アレン皇太子が頭を抱えて、うずくまった。

 相当精神を削られている。午前0時1分前に、桃海亭に投げ込むなり、警備隊の詰め所に投げ込むなりすれば、王宮が助かると気づかないようだ。

「入るぞ」

 ニダウ警備隊のアーロン隊長が大股で店に入ってきた。

「ここに本が………」

「これのことですか?」

 オレはカウンターに置かれた本を指した。

「これだ。もらっていいか?」

 ここで『はい』と答えると、桃海亭が持ち主だとバレてしまう。オレは笑顔で言った。

「店の前に落とされた方がきたら、アーロン隊長のところに行くように伝えます」

「そうしてくれ」

 本を持つと颯爽とアーロン隊長は出ていった。

 オレはうずくまっているアレン皇太子の背中をさすった。

「本はもうありません」

「………本当か?」

「はい、アーロン隊長が持って行きました」

「そうか」

 老人のようによろめきながら、カウンターについて手をついて立ち上がった。

「本はないのだな?」

「はい」

 オレは言うと、アレン皇太子はぼんやりした顔でアーロン隊長が出ていった扉を見た。

「なぜだ」

「はい?」

「なぜ、アーロンはあの本のことを知っていたのだ?」

 


「大人気みたいだな」

「よかったです」

 アーロン隊長が本を持っていった先は、ニダウの北東にある旅館や催事場がある地域。そこにある小さな劇場に持ち込んだ。

 深夜0時開演。

 恐怖を語る本。

 毎日、満席で立ち見がでるらしい。

 アーロン隊長は、王宮に呼ばれて、なぜ、本のことを知っているのか追求されたらしいが、しらを切り通したらしい。

「それにしても、あの本はなんだったんでしょうね」

 シュデルが首を傾げた。

「ホラー好きの金持ちが作らせたんじゃないのか」

 オレが言うとムーが「ブヒョヒョ」と笑った。

「違うのか?」

「表紙に書いてあったしゅ」

 焦らすように一呼吸あけてから、ゆっくりと言った。

「『死を迎えるその時まで、安らかな眠りを与えはしない』だしゅ」

 オレは手提げ金庫の中のチェックをはじめ、シュデルは商品のブレスレットを磨き、ムーはポシェットから取り出したペロペロキャンディをなめながらつぶやいた。

「復讐は成功したかな、だしゅ」





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