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放課後シアターアクター  作者: 遊駆里鬱努・遮童
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Epsode1「きんいろ。」

初投稿!いろいろひどいですが、よろしくお願いいたします!

 僕は君を見ていた。



 まっすぐ君を見ていた。・・・どうだろうね。本当に?わからない。もしかしたら、君の後ろの窓から差し込む夕日を見ていたかもしれない。・・・もしかしたら、そんな夕空に飛んでいるカラスを見ていたのかもしれない。


 僕は本物か分からない君をまっすぐ見ながら。まっすぐ見ながら?黙り込んでた。トランペットの音がやけに騒がしく響いていた。運動部の掛け声もいつにも増していた。


 本当は僕も喋ってはいないけどうるさかった。君の『一言』がうるさくした。でも口には出せなかった。これが本物か偽物か僕にはわからなかった。

 僕なんかには資格がないのかもしれない。即答できない程度の感情しか持ち合わせていないのだから…。そこまで思考が回ったところで急にトランペットも運動部の掛け声も静かになった・・・。


「そっか。分かったよ、ありがとね!悩んでくれて!・・・ごめんね。」


 君は寂しげな笑顔と濡れた声でそう言い残して教室を出ていこうとする。その瞬間ふたたびすべての音が耳をふさぐ。トランペット、運動部の掛け声、そして自分の鼓動までも聴こえたような気がした。僕は思わず、


『・・・待ってよ。まっ・・・。』

 僕は、斎藤巧はそういtt・・・。


「カァァァァァァァットォォォォォォォォォォォォォォォォオオッッッ!!!!!!!」


 ・・・・はい。そんな空を裂くような絶叫とともに思いっきり、台本でポカリッと殴られた。


『いったいなぁ・・・。』何が悪いのかと言わんばかりにつぶやく。


「なぁにが痛いだ!台本無視してんじゃねぇよ!こん畜生がァァァァッ!!!!」


 ・・・そうこれは劇である。撮影である。映画研究会である。特に進学校でもない普通の公立の高校で桜乃木高校おうのぎこうこうという。そう僕らは桜乃木高校の映画研究会。


 僕は結木数多ゆうきあまた、この映画研究会の部員だ。そして絶叫して台本で殴ってきたのは脚本・監督の尾崎義人おざきよしと、そして教室から出ようとしていた女子は同じく部員の遊佐美紗ゆさみさ


『だってさぁ、この主人公なんにも言わなくて、この彩木鳴ちゃんて子がかわいそうだし。』


「あのなぁ、これは演劇なの!そういうお話なの!しかもこの斎藤巧ってやつは恋をしたことない男子の役なんだから迷うのも無理もないだろーが!」


 台本でこちらをベシベシと叩きながら脚本が怒ってらっしゃる。


『まぁね。そうなんだけどさぁ・・・。』


・・・お前もそうだよな、尾崎よ。オレはノーコメントで。


「ん?お前なんか言ったか?」


 と、我らが映画研究会の監督ドンは怪訝そうな顔でこちらを見る。


『え・・・?何も言ってないけど?』


 ・・・なんだこいつ!もしや心の声が聞こえるのか!!


「そうか、なら良いんだが。」



 ・・・僕はホッと胸を撫で下ろす。



「えー、コホン!また撮り直しになっちゃったんだけど・・・?数多。台本気に入らないのはわかるけどさ、止められるとこっちも困るんだけど!!私何回もここ演じるの大変なんだからね!」

 

 わざとらしく咳払いをして入ってきたのは唯一この場にいる女子で『彩木鳴』役、美沙である。

・・・まあ無理もない『斎藤巧』に告白する役だもんな。


「スケジュールもあるんだがッ!」


 そこで絶叫スピーカー尾崎も畳み掛ける。


『・・・すいませんでした。』・・・・釈然としないけど。


「数多お前・・・。」


『ん?』


「今、釈然としないって顔してたな。よし!日も落ちたから撮影も仕方なく中止。戦犯はグラウンド5周してくること。最近声量落ちてきてる気がするし。」


 うんうんと頷きながら台本をくるくる回す鬼畜がいた。


『なっ、うちの高校、グラウンドだけは無駄にバカでかいんだぞ!!まぁ、トレーニングにはなるけど・・・。』


 それだけが唯一の長所なんだぞ、この高校!


「・・・ぷっ!ざまーみろ!」


そこにあるのはの最高の笑顔。笑ったのは僕らの今回の映画のヒロイン担当様である。


・・・むかつく。・・・僕はグラウンドに向かった。




・・・そう遊佐美紗は笑った。落ちかけた夕日も相まってそれこそきんいろの笑顔で。


僕がつい。・・・つい教室から出ていく彼女に声をかけようとしたのは。



・・・・・彩木鳴って役がかわいそうとかじゃない。



・・・台本が気に入らないとかでもない。





・・・僕が彼女に、遊佐美紗に恋をしているからだ。

閲覧ありがとうございます!!!

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