言いにくいこと。
言いにくいこと。
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登場人物
シゲル:僕。大学生。
カケル:友人。引きこもり。起業してネットで稼いでるらしい。ルームシェア中。
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カケル「シゲル、ルームシェアしようぜ。」
カケルの家でくつろいでると、突然そう言われた。
シゲル「ああ、ちょうど一人暮らししようと思ってたところだしいいね。でもまた、突然なんで?」
カケル「いつもお前うちに来るし、それなら一緒に暮らしたほうがラクで楽しいんじゃないかって思ったんだ。」
その会話から、数日後。気がついたらルームシェアすることになっていた。
……………
リビング、風呂、トイレ、キッチン。それに部屋が2つあるそれなりに広い部屋を借りた。
立地は悪くないが、古い家。1人で住むのには家賃が高いし、広すぎる。
2人でルームシェアすると安い家賃とちょうどいい広さ。そう感じた。
引っ越してきて数日、カケルの荷物は少なく、すぐに整理が終わったようだ。
それに対して僕はまだ荷物が片付かない。少しづつ整理していこう。そう思った。
……………
カケルは自室があるのにもかかわらず、リビングにパソコンを設置し、画面に向かいながらカチャカチャやっている。
そして僕もリビングでそれを聞きながらくつろぐ。
カケルの家に遊びに行っていた頃と同じような光景だ。
しばらくして、アラームが鳴る。
大学生の僕だけど、一応きちんと出席はしている。
学校に行く用意をして、家を出ようとした時、カケルに呼び止められる。
カケル「買い物頼んでいいか。リストはあとで送る。」
シゲル「ああ、了解。」
カケルはいつもそんな感じで、僕が外に出ようとすると買い物を頼んでくる。
だから、カケルは全くと言っていいほど外に出ない。
一番最近外に出たのは、ここに引っ越してきた時だろう。
僕がこうやっておつかいするからよけいに引きこもりにさせてるんじゃないかと思う時もある。
だけれども、カケルは昔からこんな感じだったし、今更なおせるものでもないだろう。必要になれば外に出る。必要が無いから外に出ないだけなんだ。
そういつものように思いながら僕は学校へ向かった。
……………
いつもと変わらない毎日。
外に出ようとすれば、買い物を頼まれ、僕はついでに買い物を済ませ、家に帰る。
帰ればまたいつも通りくつろぎ、食事を作り、談笑しながら夕食を済ませ、風呂に入り、深夜になると寝る。
そんな毎日が過ぎていった。
……………
ある日、カケルが言った。
カケル「シゲル、外に行くぞ。」
僕は驚いた。あの引きこもりのカケルが数十日ぶりに外に出るのだ。
しかも珍しい事に、僕を誘ってきた。
シゲル「おお、カケルがそう言うなんて珍しいな。僕はすぐにでも外に出れるけど、カケルは準備が必要そうだな、支度してこいよ。」
カケル「10分で用意するから外で待っててくれ。」
そう言われた僕は靴を履いて玄関前で待つことにした。
10分後、玄関に現れたカケルはいつもと変わらない格好で僕の前に現れた。
シゲル「カケル、君は毎日その格好で過ごしているから、君がその格好を気に入ってるのはよく知っているつもりだよ。」
僕は言う。続けて、
シゲル「だからこそ、言いにくいことなんだけど、流石にその格好では外に出れないよ。」
カケルは何を言ってるのかわからないといった顔をしている。
シゲル「カケル、外に出る時ぐらい服を着てくれ。」
おわり。