第14話
目の前で浮いているお姉さんたちのうち、腰まで伸びた綺麗なエメラルドの髪をしたお姉さんが僕に体当たりする様に抱きついてきました。
「キャー!
生で見るちっちゃい天魔さん、可愛い!
スッゴク、可愛いです!」
神様にいきなり抱きつかれた僕はどうしたら良いのか分からないので助けってって目線を周りの大人の人たち向けるけどこの抱きついてきたお姉さんの行動に皆さん驚いて固まっています。
「あぁ、天魔さん、こんなに可愛く育って下さって私もうれしいです。
できればこのままでいてください」
なんかシャルお姉ちゃんに抱きつかれるのとこのお姉さんに抱きつかれるのとで違いがあります。
優しく抱っこしてくれているのは同じなのですが、このお姉さんにされると、こぉ何ていうか素直に受け入れられないというか、妹たちにする様にお仕置きしてしまいたくなります。
それからこの頬擦りしてくるお姉さん、僕の事ずっとテンマさん、テンマさんと呼んでいます。人違いですね。
「アノ、オネ、エサン、ボク、テ、ンマ、チガ、イマス。
リュート、デス」
「いいえ、あなたはリュート・ハムレでもあるけど仲間・天魔でもあるのです。
私の管理をしていた世界、連結世界ドムスから転生してこの想奏世界セルムニカで生まれた人間、それが貴方なのです」
僕に抱きついたまま耳元で囁くように答えるお姉さん。
「もしかして神様ですか?」
僕の質問に再度答えるお姉さん。
「私を忘れてしまったのですか?
そうですよ、私がドムスの管理者アスピスで、隣に居るのが私の妹でありこのセルムニカの管理者であるスピアスですよ、天魔さん」
質問に答えてもらいながらも僕はこのお姉さんの抱きつきから逃げ出そうともがいていたけど逃げ出せません。だってこのお姉さん抱きつきながら僕のお尻を撫で回しているんだもの、怖いです。
「姉さん、止めてください!」
もう1人のお姉さんが空中から降りながら姉さんと呼んだ人の頭を引っ叩いて注意して僕から離れる様に言ってくれました。思わず元居た場所からシャルお姉ちゃんの後ろに隠れてしまいます。
後ろに隠れた僕をシャルお姉ちゃんが「大丈夫?」と確認しながら正面から庇う様に抱いていますが、シャルお姉ちゃんも僕のお尻を鷲掴みにしています。
「み、皆の者早く神族の方々に跪いて頭を下げるのだ」
バリウスさんが放心していた意識を取り戻したのが一番早かったらしく、モナークさんやエヴァンさんらに声をかけ始めました。
「皆さん、そう畏まらないで楽に下さい。
今回は神託等ではなく。
彼、リュートこと天魔さんへ謝罪しに来たのですから」
「恐れ入ります、それでは失礼して」
バリウスさんが皆さんに促して跪いていた姿勢を止めさせて楽にさせています。
「それでは改めて。
初めまして天魔さん、私がこの世界の管理者、スピアスと言います。
貴方をこの世界に転生させた神族の1人です。
そしてこの度は申し訳御座いませんでした」
自己紹介をしてくれたスピアス様が僕をみて謝ってきました。
頭を引っ叩かれたお姉さんと同じ様な顔つきで、髪も同じエメラルドの髪、ただし長さは肩ぐらいの長さです。唯一の違いが瞳の色で、スピアス様が右目が金色で左目が銀色。もう1人のお姉さんがその逆になっています。
なんで僕に謝ってくるの?
「お話の途中申し訳御座いません、スピアス様。
私は、モナークと言いまして。この教会の大司教を務めさせて頂いております。
この度はリュート君にどの様な御用なのでしょうか、それも他の神族の方もご一緒にこの世界に顕現なさってまで」
スピアス様がドッと疲れた様な顔をしながら腕を組みながわ右手で頬をついて愚痴を言う様な感じで話し始めました。
「この度はですね、私の姉であるアスピスが天魔さんの転生に使った転生術が少し・・・いえ、かなり失敗しまして天魔さんの魂に大分負荷がかかってしまっていまして。このままではそお遠くない内に無くなってしまう所でした。
本来なら生まれてすぐの内に対応する所だったんですが、今は昔と違い教会ででしか顕現できなくなってしまいましたので、天魔さんがこうして来られるのをお待ちするしかなかったのです。
そして出来れば今直ぐにも魂の負荷を取り除く処置をしたいのですが宜しいでしょうか?
処置が出来れば、天魔さん本来の性格、記憶、ステータス等を取り戻す事ができます。
先程もお伝えしましたが。
逆に、このままではいずれ死んでしまいます。それも魂まで消滅するような。
それは姉や、私が世界を救ってくれた恩人に対して願った幸せな未来ではなくなってしまいます」
「処置って、記憶を取り戻したらリュー君の記憶とかはどうなってしまうんですか!」
シャルお姉ちゃんがスピアス様にどなる様に言い放ってます。神様にどなるなんて怖いモノしらずですね、お姉ちゃんは。
「・・・それは、天魔さんとしての記憶とリュートさんとしての記憶、そして感情が1つになって統合されると思います。元々は1つのモノですから、ただしリュートさんの人格と天魔さんの人格、どちらが主人格になるかは分かりませんそれにどのみち処理をすれば例え人格が2つ残っても、長時間かかってでも人格は統合されてしまうでしょう」
「そんなぁ・・・」
シャルお姉ちゃんが何だか悲しそうな顔を僕に向けてます。心配でもしてくれているのでしょうか。
「シャル、オネ、エチャン、ダイ、ジョ、ウブ?」
「私は大丈夫だけど、リュート君の方は大丈夫なの?」
「ボク、モ、ダイ、ジョウ、ブ、デス」
「エェット、アス、ピス?サマ、ハ、ドウ、シテ、ココ、ニイ、ラッシャル、ノデ、スカ?」
未だに頭を抱えてうずくまっている神様に話を聞いています。
「ふぇ?
あぁ、私も居る理由ですか?
それは勿論、天魔さんに抱きつきに・・・では無くて、隙あらばお持ち・・・ではなくて、天魔さんにかかってしまった負荷を取り除く処置と、謝罪に。
それが私の、天魔さんをこの世界に送り出した私の責任ですから」
途中から真面目に話をしてくれましたが、最初のほうがなんだか怖い話をしていたような?
なんか僕の頭のなかで『駄神が!』と訴えてきます。
「ショ、チヲ、シ、タラボ、ク、ハ、モット、ミン、ナ、ノオ、テツ、ダイデ、キ、マ、スカ?」
少し気になっていた質問をしてみました。もっと皆のお手伝いしたいですから。
「はい、以前の天魔さんのステータス、知識が全て元通りになりますから天魔さんの・・・いえ、今はリュートさんでしたね。
リュートさんのしたい様に、周りの方のお手伝いができると思いますよ」
良かったです。少し考えてから僕は。
「デ、ハオ、ネガ、イ、デ、キ、マス、カ?」
処置をしてもらう事にしました。
「ボク、ガボ、クジャナ、ク、ナッテ、モ、マ、タナ、カヨ、ク、シテク、ダ、サ、イネ」
シャルお姉ちゃんから離れて、シャルお姉ちゃんやバリウスさんたちにお願いします。
「もちろん、私は何時でもリュート君と仲良くしたい!」
「私も同じだ、リュート君。
君は君だ、テンマという人格だろうが関係はない」
「アリガ、ト、ウ、ゴザイ、マス。
イッテ、キ、マス」
そう言って僕は神様たちに近づいて行きます。
「では始めますね、姉さんもご協力を」
「勿論、愛する天魔さんのためですもの」
スピアス様は神様という存在だけあって信用出来るけど、アスピスさまは怖い、あまり信用が出来ないです。
2人の神様が僕の両肩にそれぞれに右手をアスピス様、左手をスピアス様が置いて何か大きな力?が僕の中を廻ってきます。
「リュートさん、目を閉じてリラックスして、なるべく心を落ち着けて下さい。
記憶が戻る瞬間、フラッシュバックしたように頭の中に一気に溢れてくるので注意して下さい」
スピアス様に頷いてから、目を閉じてなるべくリラックスできるようにします。
「処置を開始します。
皆さんも、強い光を発光してしまいますので直視しないようにするか目を閉じて下さい」
アスピス様の合図で体の中の力が一気に強くなって行きます。