第10話 リュートの成長と日々
「リュートく~ん!
まった来ったよ~」
朝ご飯を食べてから少しした時、いつもお菓子という甘い食べ物をくれるお姉ちゃんと頭がツルツルで筋肉モリモリなおじさんがいつもの様に僕のお家にきてくれた。
「シャ、ル、オネェ、チャン、
オ、ルテ、ガ、サン、コンニ、チハ」
前からお父さんに言われて、人の喋る言葉を森を通る旅人さんたちや冒険者?さんたちの会話で少しは聞き取れる様になっていたけど、まだまだ喋れないや。難しいです。
「リュート君、この前話したお菓子持って来たから一緒に食べよう」
バリウスたちとの出会いから数週間、ほぼ毎日の様にシャルはリュートに会いに来ていた。本来、毎日の様に行かなくても良かったのだが、シャルは行かない日があると禁断症状が出るかのごとく震えだして仕事が進まなくなる。会ったら会ったでお菓子でリュートの気を引いて可愛がっている変態、バリウスから命じられているとは言えそれに毎回付き合わされているオルテガはたまったものではなかった。
また、数回だけだが、バリウスやアルベルトもここに訪れており、少しずつ人間社会に溶け込める様にリュートに言葉や基本的な道徳的な物を教えている。
「美味しいね、リュート君。
それにまた少し喋れるようになったでしょ?」
いつもの様に僕を膝に座らせて一緒にお菓子を食べてたお姉ちゃんが話せるようになったのに気づいてくれた。
「ウン、ス、コシ、ダケ
ア、ト、オカシ、オイ、シイデ、ス」
「偉いねぇー、早く普通に喋れる様になると良いね」
そう言いながら褒めて頭を撫でてくれるお姉ちゃんの手は気持ちいいです。
「キャンキャン」
ポーンウルフのママとパパの子供で唯一名前があるユキがお姉ちゃんに吠えてる。何か僕を取っちゃダメって言ってるけどそんな事無いのに。
ユキを僕の膝に乗せて3人で一緒にお菓子を食べる。ユキも喉をゴロゴロ鳴らして美味しそうに食べてる。皆で一緒に食べるのは楽しいし美味しいね。
「さてチビっ子、今から剣の練習の時間だがそれで良いのか?」
オルテガさんがいくつか用意してくれた木でできた剣の中から木のナイフを取りだした僕を見て聞いてきた。
「コレ、デ、イイデス、コレグ、ライ、ノ、モノガ、イ、イキ、ガ、シマ、ス」
素直にコレが良いと言った僕にオルテガさんは同意しれくれる。
「そおか、それが良いか。
まぁおれは何でも良いがね。さぁ始めるぞ来い、チビッ子」
オルテガはリュートが無意識でナイフを選んだのを見て『自分の特性を踏まえて選んでやがる』と内心思うのだが、それを顔には出さずにいる。
オルテガの合図で訓練が始まり、打ち合いになるかと思いきやリュートは突っ込んでこず。オルテガの持つ木製のバスターソードの間合いに不用意に入らないようにして様子を窺っている。
リュートが直ぐに飛び込んでこない所を見てオルテガは『ほぉ、大したもんだ、』と思う。が、自ら動く事で事態の拮抗を崩しにかかる。
「睨み合っててもしょうがねぇからこっちから行くぞ、チビッ子」
オルテガさんが、先に動くと宣言すると真っすぐこっちに突っ込んできて大きな剣を突き出してきます。僕は小さいし、力もまだまだ無いのでギリギリで体を捻って避けます。すると突き出してきた剣が横になぎ払う様に振られてきました。
屈んでそれをやり過ごしてから僕は、持っているナイフでオルテガさんの右足に屈んだままの姿勢から突き刺します。オルテガさんにナイフが当たって、次に大きな剣を持っている右腕がまだ伸びきったままなので、ジャンプして右肘にナイフを突き入れる様に当てます。ナイフが当たった右腕が痺れた様で、大きな剣を離してしまったオルテガさんは残った左手で、空中にジャンプしてる僕を掴んで近くの木に投げつけます。だけど木にぶつかる前に空中で身を翻して足から当たる様にして衝撃を逃がしていきます。
「たく、痛てぇなオイ!
マジで当てんなよ、訓練って言ってんだろ。まぁ、そいつの使い方はあながち間違ってねぇから良いけどな。
使い方は父ちゃんに教わったのか?」
そう言えば、いつの間にか使ってたっけ、僕。
「オシ、エ、テ、モ、ラッテ、ナイデ、ス」
「じゃぁ、自分で覚えたのか?」
僕は顔を横に振って答える。
「イツノ、マ、ニカ、ツカッテ、マシタ」
「そっか、それじゃぁ今日はここまでだな、腕い痛てぇし」
そこまで痛かったの?
「ゴメ、ンナサ、イ」
オルテガさんが左手で落とした大きい剣を拾っている時、僕は謝りながら右腕に光を使ってあげる。
「お?
回復魔法か、ありがとよ」
「ゴ、メン、ナ、サイ」
光を当て終わった右腕を確認しながらオルテガさんがお礼を言ってくれたので僕ももう一度謝っておく。
「訓練だったし気にするなよ、俺も訓練になるからな。
ぐはははは!」
笑いながらオルテガさんが僕の頭を大きくてゴツゴツした手で撫でてくるけどなんか嫌じゃないんだ。
オルテガさんと2人でお家に戻ってくるといつの間にかバリウスさんとアルベルトさんもお家にきていてゴブリンのお父さんたちと何かお話してた。あと、何人かよろいっていう硬いお洋服を着た人たちも何人か来ていた。見た事ある人たちなので知ってる人たちだ。お姉さんたちも何人かいるけどみんな僕をギュウギュウ抱っこするからあんまり近づきたくないな。苦しくなるんだもの。
「あ!
リューちゃん、コッチおいでー」
僕を見つけたお姉さんが手を広げて来るようにいってきたけど怖くなってシャルお姉ちゃんの後ろに隠れる僕。
「あぁ!
シャルばっかりズルイ!
いつもリューちゃんに会えるんだから良いでしょ」
いつのまにか僕の呼び方がリューちゃんになってる。
「ふふん、先輩たちは怖がれてるんですよ。もっと優しく接しないと。
ねぇリュート君」
お姉さんがシャルお姉ちゃんに何か言いだすと後ろに隠れた僕をシャルお姉ちゃんが膝の上に乗せて優しく抱っこしてくれる。
「シャル、オ、ネエ、チャ、ン、コ、ワクナ、イ、デス」
素直に頷いて怖くないと言った僕の頭を撫でてくれた。
「何でそんなにシャルに懐いてるの?
ずるくない、ねぇ皆」
話を聞いていた他のお姉さんたちも同じ気持ちなのか、みんな頷いていた。
「それになんでシャルだけお姉ちゃんって言われてるのよ。
私も言われたい」
「先輩と私のリュート君に対する愛の差よ。
それに少し声を落として貰えませんか、リュート君寝ちゃったので」
シャルに言われた先輩騎士はシャルの腕の中を見ると、スヤスヤといつの間にかに寝ているリュートの寝顔があった。
「っく、シャルばっかりいつもいつも。
でもリューちゃん可愛いなぁ」
気が付くとリュートを取り囲むように女性騎士たちが取り囲み、リュートの寝顔を堪能している。
実は、リュートに出会った女性騎士たちの間で“リューちゃんのお姉ちゃんになり隊”なるファンクラブが極秘裏に設立されているのだが、シャルは勿論のこと、リュートにも知らないファンクラブになっていて。活動の1つに、秘かにお値段が高い魔道具の1つ、映像記録機で撮影してその映像をクラブのみんなで共有するという活動がある。その中でも寝顔は滅多に見られないものなので、記憶に焼き付ける様にガン見する女性騎士たち。
そんな光景を見ていたバリウスは「モテモテだなリュート君は」と笑っていた。
映像記録機・特殊な水晶で、映像を記録する水晶と映し出す水晶を魔術を併用した魔術回路で繋いだ装置。動力源は魔石をつかっており、低出力の物でも十分に使える。水晶と魔術回路のせいで値段が高くなっている。
今回はリュートの目線の内容も盛り込んでみました。
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