表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

3日目:午前

2012/04/05 08:21 大槻 笑美

 お母さんが気の毒そうな顔で、玄関から出てきた。

 「昨日は何だか大変な目に遭ったそうね。 でも、元気そうで良かったわ」

 早紀さんが学校に連絡してくれたおかげで、今日だけ私服で登校だ。

 それよりシロ! 今日はちゃんと着けてるでしょうね!

 犬山くん、ちゃんと話したか不安だなあ。

 餌は綺麗に無くなってたけど、朝からどこかに行っちゃっていないし。

 あ、わたし(女)が出てきた。

 「お早うございますわ、犬山さん」

 「お、お早う…ございます」

 え、何で普通に話してるの?

 わたし、いやシロってば天才?

 うーん、制服は着てるけど下着は良く分からないなあ。

 『シロ、あんた下に着けてるでしょうね? 』

 シロが頷いた。

 「勿論ですわ、今日は薄緑色の水玉模様ですことよ」

 「それは言わんで良いの! 」

 あ、お母さんが怪しんでる。

 それに何なのよ、この言葉遣いは?

 どこで覚えたんだろう?


2012/04/05 08:32 大槻 笑美

 「ねえ、誰に言葉を習ったの? 犬山くん? 」

 わたし(女)が否定する。

 だとすると、一体誰が?

 シロが鞄からDVDを取り出した。

 何これ? …愛と欲望のミシュランガイド?

 あああ、ハムちゃんか! そういえば面白いからって貸してくれたんだっけ。

 昨日の勉強って、これを見てたのね。

 ちょっと見たけど料理ばっかり出るドラマ…それか。

 うーん、シロは食べるの好きだからなあ。

 気をつけないと太るんだからね!


2012/04/05 08:41 大槻 笑美

 教室に入った途端、みんなが急に静かになる。

 何だろう? この雰囲気。

 「公子さん、このDVD返すよ…大槻さんから」

 あれっ? ハムちゃんまで黙ったまま受け取ってる。

 「…ちょっといいかい? 」

 ハムちゃんが廊下へわたし(男)を引っ張って連れ出す。

 「あんた、家爆破されたって本当? その組ってヤバ過ぎじゃん」

 それが、わたしにも良く分からないんだよね。

 そういえば昨日、佐久間先生もわたしを襲って来たし理由が全然分かんない。

 「警察に全部話して、保護して貰ったほうがいいんじゃないかな。

 勿論、あたしに話してからだけど」

 「実は昨日、警察に話したけど信じて貰えなかったの…さ」

 「それって、どう… 」

 突然、頭を思いっきり何かで叩かれた!

 味噌カツこと小野勝子先生が、鉄製定規を竹刀みたいに振ってる。

 どんだけ全力なのよ!

 「犬山、良かったな。 痛いってのは生きてる証拠だ。 HR始めるから席に着け」


2012/04/05 11:44 大槻 笑美

 あああ、もう高校生活は終わったわ。

 まさか味噌カツが担任になるなんて!

 全校集会の後に即テストの続きとか、正に悪魔ね。

 そうだ! 珠輝ちゃんに昨日のこと聞かないと!

 テスト用紙を揃えてた味噌カツがこっちを向く。 こっち見るな!

 「犬山と大槻、ちょっと職員室に来い」

 え? えええ! まだお昼も食べてないのに!


2012/04/05 11:53 大槻 笑美

 味噌カツが引き出しから紙を取り出した。

 あ、わたしの世界史のテストだ。

 「お前はバカだが、これだけはやらない奴だと思ってたのに残念だ。

 何か言いたい事はあるか」

 「さっぱり何の事やら…? 」

 「ほう、ではこれは? 」

 数学と古文だ。

 「それが何か? 」

 やばい、味噌カツが揚がってきた。

 「お前、どうやって大槻と答案を交換した? 」

 「それは、どういう意味ですか? 」

バーン!

 机の上から書類が落ちる。

 「しらばっくれんじゃ無いよ! この字、お前んじゃねえだろ!

 大槻のは意味わかんねえし! 」

 あっ! そうか、筆跡が違うんだ!

 チラっとシロの書いた解答が見えた。

 裏に変な落書きがしてある…。

 うわぁ、どうしよう。

 「簡単です、小野先生」

 へ? うわっ、いつから居たのよ珠輝ちゃん!

 「大槻さんと犬山くんは、お互いの名前を入れ替えて記入したんです」

 「四方印、何故そんな事を知ってる? 」

 「だって犬山くん、そうでもしないと留年しそうですから。

 許される事では無いですけどね」

 答案を睨んでいた味噌カツが顔を上げた。

 「何にしても不正は不正だ。 二人とも追試だからな! 」

 珠輝ちゃんが極上の愛想笑いを見せる。

 目が笑ってないって、この表情なのね。

 「犬山くん、行きましょう」


2012/04/05 12:17 大槻 笑美

 「助かったああ…ありがと珠輝ちゃん」

 シロとわたしは、また屋上でお弁当を食べてる。

 スプーンが付けてあったから、シロも一人で出来るみたい。

 「大した事ないわ。 それより、ご家族は大丈夫だったの? 」

 「ええ、早紀さんは朝から元気一杯よ」

 「良かった…本当に飛猿くんは過激過ぎるから… 」

 「え? 犯人知ってるの! 」

 珠輝ちゃんが口を押さえる。

 「天使って何なの! 何で小学生が爆弾… 」

バーン!

 「探したぜえ、犬山くぅーん? おやおやおや、二股とは許せんですなあ」

 うげっ、こんな時に和田先輩…は今日いないのか。

 子分四人が急に笑い始める。

 「お前ん家、さら地になっちまったらしいじゃん! 天罰だ天罰ゥ! 」

 「神様っているんだなあ、ホント! サイコーの気分だぜ! 」

 何なの、こいつら。 そんなに人の不幸が楽しいのかしら。

 「そんでさ、不幸なとこ悪いんだけど治療費くれよ」

 「は? 何の話ですか? 」

 「とぼけんな、お前の女がつけた傷だよ。 もう一生残っちまうとさ。

 まあ、その女にも一生消えな…痛ってエ! 」

 え? ギャーッ! シロって何で噛み付くの!

 「シロ! 止めなさい! 」

 わたし(女)が離れざま呟いた。

 「…ちょっと変わった味ですね」

 噛まれた男子が真っ青になる。

 彼には少しだけ同情するかも。

 「おま、お前、女の教育がなってねえぞ! もう金だけじゃ済まねえからな! 」

 げげげっ、どうしよう。

 先生を呼ぼうか?

 「天罰なんて軽々しく言わない方がいいわよ」

 それまで黙っていた珠輝ちゃんが重々しく宣告した…ように見えた。

 「んだと、四方印? 少しばっか頭と顔が良いからって偉ぶってんじゃねえよ! 」

 「昨日の犯人、捕まってないでしょう? まだこの辺りにいるかもね」

 怖っ! 真相を知ってるだけに余計怖い!

 四人の表情を見るだけで十分、振り返れない!

 「お、おい。 もう行こうぜ… 」

 わ、わたしも連れてって!

 立ち去ろうとした彼らに、更に追い討ちをかける。

 「そうそう。 和田先輩に今日は行かない方が良いって伝えてね」

 それを聞いた彼らは、我先に逃げ出した。

 その呪文は何でしょうか!

 妖怪じゃなくて魔女?


 ** 続きます **


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ