2日目:夕方
2012/04/04 15:08 大槻 笑美&犬山 剣豪
「あのね。 ひとつ気がついたんだけど… 」
『何だよ。 あいつ追っかけるんだから早くしろよ』
「猫と話せるなら、見張るの頼んでみたらどう? 」
おお、犬って驚くとこんな顔になるのね。
『ナイスじゃねェか! お前にしちゃあ良いアイデアだ』
「いやあ、照れちゃうなあ。 …褒められた気がしないんですけど? 」
『エサやる約束すれば楽勝だろ。 んじゃ声かけてくる』
「あ、ごはんは食べたの? 」
駆け出したシロ(犬山くん)の足が止まった。
『俺の分も頼むぜ。 もちろん、お前ん家のドッグフードな』
そのまま走り去る。
ドッグフードって…いよいよ犬になってるなあ。
2012/04/04 15:21 大槻 笑美
わたし(女)が大きな欠伸をしてる。
お母さんが心配してるだろうし、そろそろ帰らないと。
でも珠輝ちゃんって何歳なんだろう。
本当に100回も死んでたら、1回10年としても千年以上?
うわあ、もう妖怪だよ。
それに未来ってどうなるんだろう?
毎回同じ事が起こるのかな。
ピロピロッ。
あ、携帯が鳴ってる。
「はい、お…犬山です」
『ケンケン、今日は店来るのか? 』
店? ああ、アルバイトかな。
「えーっと、すいません。 暫く休ませて下さい」
電話口の声が急に変わる。
『ああ? そんな事言える立場だと思ってんのか、ゴルァ!
いいから来い! 』
この人何なの、偉そうに!
「行けないんだから仕方ないでしょう! 失礼します! 」
…あああ、やっちゃったなあ。
何だか、ついカッとなっちゃった。
ん? わたしってばそんな子だっけ。
良く優柔不断とか言われてるのに何だろう。
体が男の子なのと関係あるのかな。
2012/04/04 15:55 大槻 笑美
お母さんが真っ青な顔で家から出てきた。
「随分と遅かったのね。 学校で事件があったんですって?
剣豪くんも早く帰りなさい」
そうか、保護者に連絡が行ってたのね。
シロは携帯が鳴っても気がつかないだろうし、何とかしないと。
犬山くんもシロも、あんまり離れると会話できないのは不便だなあ。
どうも相手を見ないと通じてないっぽいし。
さてと、これからどうしよう。
四方印さんに聞いても、何か隠してる感じだよね。
拳銃とか天使組合とか色々と聞きたいんだけどなあ。
犬山くんを待ってもいいけど、誰か珠輝ちゃんに詳しい人いないのかな。
犬山くんにも珠輝ちゃんにも付き合いのある人…いた!
2012/04/04 16:03 大槻 笑美
『ふぁーい、どちらさま? 』
電話口から眠そうな声が聞こえる。
番号が登録されてなかったから、非通知なんだよね。
「あ、あの。 犬山だけど、今から会えないかな? 」
『犬山! あんたねぇ! 丁度良かった、あたしも話があんのよ』
ハムちゃん、テンション高っ!
『今どこ? じゃあ商店街のシーサイドって喫茶店で待ってな! 』
2012/04/04 16:17 大槻 笑美
ハムちゃんは店に入ってくるなり、向かいに荒っぽくドッカと座る。
「バアちゃん、アイスコーヒーね! それで聞きたい事って何? 」
「えっと、何をそんなに怒ってるの? 」
ハムちゃんがこっちを指差す。 近い、近いよ!
「あんたがやらせてんでしょ! 何でおツキにあんな事させてんの! 」
何だか、もの凄く嫌な予感がする。
「彼女、何をしてたのかな? 」
ハムちゃんが急に顔を赤くした。
うっわ、嫌な予感しかしない!
「あの子、ブラ着けて無かったよ! 何のプレイなのさ! 」
ぎょぇえええええ! そ、それじゃまるで痴女じゃないの!
まさか下は…いやいやいや怖くて考えられない。
ハムちゃんの口が疑問形になる。
「あれ? あんたがやらせてんじゃないの? 」
わたしはこれ以上無い速度で否定した。
帰ったら急いで教育しないと!
「あ、あのさ。 彼女、頭を打って少し記憶が混乱してるんだ。
そのうち治るよ、多分」
「あれ? 足じゃなかった? 」
鋭い! うーん、ハムちゃんに話そうか。
いやいや、頭がおかしいって思われたくないし、もう少し黙っていよう。
「転んだ時に頭も打ったの…さ。 それで、聞きたいのは四方印さんの事なんだ」
「何で苗字呼び? てか、あんたが珠輝の何を聞くのさ?
直接聞けばいいじゃん」
「えーと、何か噂を聞いたこと無いかなって」
ハムちゃんが冷たい目で見ている。
後ろから効果音が聞こえて来そうだわ。
「あんた、おツキと二股かけるつもり? それならあたしに言えることは一文字も無いね」
「ないない! そもそも付き合ってない! 」
うう、ハムちゃん、そんなあんたに惚れそうだよ。
「んー…あんた、ほんとに犬山? 何か…バイト先で何かされた? 」
「え? どんなバイトしてたっけ? わ…俺」
「あんたも頭打ったの? 前にホストやってるって言ったじゃん」
ホスト! 犬山くんってば、そんなアルバイトやってたのね。
でも、ホストって何するんだろう。 郵便関係?
「昨日から変だよ、やっぱり。 何があったか、お姉さんに相談してみな」
「同級生でしょ! 」
「おお、その真面目なツッコミ。 まるでおツキに憑かれたみたい」
うわ、ばらす前にばれそう。
「何とか組合ってとこに狙われてるんだよ。 し…珠輝ちゃんも危ないんだ」
「えっ、組ってヤクザ? 」
「そんなとこかも。 それで変な人を見かけなかったかなって」
またわたしを指差す。 近いってば!
「だ・か・ら足洗えって言ったろ! まさか今日の事件も関係あんの? 」
「ええ、まあ」
ハムちゃんが頭を押さえてる。
「で、警察には言った? 」
「…まだ何も」
そうか、そうだよね。
何だか色々と現実感が無くて気がつかなかった。
けど、これって危ない状況なんだ。
ハムちゃんがアイスコーヒーを一口飲む。
「あんたも四方印も似たとこがあるからね。 気をつけなよ」
「え? どこが? 」
「無駄に顔が良いとか、危なっかしいとこ? 」
うーん、そうなんだ。
え? わたし(男)ってイケメンなの?
「特にあんたは誰彼構わず噛み付くからね。 だから狂犬なんて言われてんだよ、分かってる? 」
「…反省してます」
何でわたしが怒られるのよ! 後で犬山くんも教育しよう。
「おお、何だか物分りが良くなったじゃん。 そんで何したん? 」
どう説明しようかなあ。
あれ? さっき珠輝ちゃんは昨日にタイムスリップするって言ってた。
つまり今は先生の事件しか起きてない?
「ハム…公子さんは占いって信じる? 」
「突然なんなの? まあ、少しは」
「じゃあ一つ占ってあげる。 明日のブラジル戦、4対1で日本が勝つよ」
ハムちゃんもわたしも、なでしこジャパン大好きだもんね。
「それ試合予想じゃん。 でも4点も取れないよ、きっと」
「その結果の後で話すから」
ハムちゃんが首を傾げた。
** 続きます **




