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2日目:午後

ちょっと暴力的な表現があります。

苦手な方はお戻り下さい。

2012/04/04 12:01 大槻 笑美

 シロって実は頭良いのかな。

 今日は教えなくても制服着てたし、朝も犬食いせずに

手で食べたみたいだしね。

 (朝はパンだから楽だけど)

 お母さんも私もパン党だから、今日のお昼はサンドイッチだし何とかなりそう。

 「い、犬山くん。 廊下で君を呼んでるよ 」

 シロたちを監視してたわたし(男)に、同じクラスの市川くんが話しかけてきた。

 誰だろう? …ああ、また和田先輩ご一行かな。

 まだ食べ終わってないのに嫌だなあ。

 でも廊下に居たのは意外なことに、四方印さんだった。

 「剣豪くん、ちょっと一緒に来てくれない? 」


2012/04/04 12:12 大槻 笑美

 四方印さんとわたし(男)は屋上に来た。

 ずっと黙ったままだし、何だか怖いなあ。

 予言とかされちゃうのかな。

 でも、ふっふーんだ。 ネタは分かってるから怖くないもんね。

 「…ど… 」

 よっしゃあ、ドーンと来いやぁ!

 「どうしよう、ケンちゃん! 」

 えっ! 何で泣いてるの?

 何なに? 意味わかんない!

 「もうあいつらに気づかれちゃった! まだ一日しか過ぎてないのに! 」

 「ちょっと、落ち着いて。 あいつらって誰なの? …かな」

 「天使よ、天使に決まってるでしょう。 もうすぐここに来るの」

 まあね。 こんな状況ですからね。

 今更もう何が出てきても驚かないですよ、ええ。

 でも、何なの天使って!

 「落ち着いて、ね? 天使って子供でしょ? 高校には入って来れない…あ。 背中に羽生えてるんだっけ? 」

 「何を言ってるの? あの頭のいかれた殺人鬼よ。

 ケンちゃんも知ってるでしょう」

 いえいえ、全然知らないんですけど。

 「ええと、殺人鬼ってことは人間よ…だよね? 」

 彼女の表情が険しくなる。

 怒っても美人は美人なんだなぁ。

 「…貴方、誰なの? そういえば昨日、変な事を言ってたわね。

 もしも、あの犬がケンちゃんなら貴方は誰? 」

 「あのー、初めまして。 大槻笑美です…わっ! 」

 彼女が何かを取り出した。

 え、拳銃? 何でそんなの持ってるの!

 「お、おおお落ち着きましょう、ね? わたしは敵じゃないですよ、多分。

 おもちゃでも、人に向けるのは良くないですよ! 」

パンッ。

 何だか軽い音だなあ。 やっぱりおもちゃ…わっ!

 穴! 穴が開いた!

 金属製のドアに小さいけど、黒い穴が開いてる!

 うっそ、まさか本物?

 四方印さんは銃をこっちに向けたままだ。

 「ケンちゃんはどこ! 近くに居るの? 」

 何度も首を横に振る。

 驚くと声が出ないって、今の状態なのね。

 彼女はわたし(男)を睨んでたけど、でも銃を下ろした。

 思わず口からため息が漏れる。

 「何が起きたのか分からないけど、その話は後にしましょう。

 今は天使を倒すのが先よ」

 もう何が何だか分からない。

 「あのう、何が始まるんです? 」

 「貴方もアレに関わったんでしょう。 死にたくなければ戦いなさい」

 何なの、この超展開!

 「えーと、話が見えないんですけど… 」

 「来たわ! 」

 ゆっくりとドアが開いて、思わず唾を飲み込む。

 あれ? 担任の佐久間先生だ。

 でも何だか様子がおかしい?

 肥満気味の先生が、ゆっくりと近づいてくるだけなのに凄く気味が悪い。

 「…四方印、今度こそ死んでもらうぞ。

 それに犬山ァ。 また邪魔するつもりか? 」

 また? もう! 勝手に二人だけの話しないでよね!

 先生は懐から出刃包丁を取り出した。

 え? 何? どゆこと?

 「今度こそ俺が手に入れる! そこをどけ! 」

 何? 何でこっちに向かって来るわけ?

 四方印さんの方へ行けば良いじゃない!


2012/04/04 12:21 犬山 剣豪

 …焦っても何も出来ねェし、寝て待つか。

 あいつらテストやってるんだっけ。

 早く帰って来ねェかな。

 あーあ、暇だ。


2012/04/04 12:21 大槻 笑美

 「うわわっ! ちょっとタイム、先生落ち着いて! 」

 視界の隅に四方印さんが見えた。

 え? 何で助けてくれないの? 逃げないの?

 「こんな事したら免職ですよ! 刑務所行きですよ! 」

 「ハッ、それがどうした! そんなもん関係無くなるんだ!

 黙って死ね! 」

 佐久間先生が二度三度と包丁を突き出す。

 …あれ? 何だか…スピード遅くない?

 これなら何とか出来るかも。 えいっ。

 包丁ごと先生の手を蹴り上げた。

 「…犬山ァ! きさま教師に手を上げやがったな! 」

 「今のは足です! 」

 「ガキみたいな言い訳するなァ! 」

パンッ。

 「う…うわぁあああああ! 」

 先生の白いシャツが赤く染まってる。

 えええ! 撃った! 四方印さん、先生を撃っちゃった!

 「あら、外れちゃった。 今度こそ頭に当てるわ」

 佐久間先生が、うわぁあああって逃げた。

 わたしが逃げたいわよ!

 「とりあえず一人目ね。 でも、どうして一日しか無かったのかしら」

 「あ、有難う。 でも、先生を撃つなんて… 」

 四方印さんが冷ややかな目でわたしを見る。

 「別に貴方を助けたわけじゃないわ。 やらないとこっちが死ぬの」

 「えっ? どうして? 」

 「私、いえ私たちはもう死んでるのよ。 だから生きて歩き回ってるのは彼らの教義に反するってわけ」

 それじゃ天使よりも死神みたい…。

 「でも、先生逃げちゃったよ。 四方印さんに拳銃で撃たれたの言いふらされたら… 」

 それに、何かを手に入れるとか言ってたような…。

 「大丈夫よ。 あの人もうすぐ死ぬから」

 「ええっ? だったら助けないと! 」

 「駄目よ。 前回は助けて、こんな失敗したんだから」

 前回? 助けて失敗? もう、わけ分かんない!

 「すぐに緊急下校する事になるから、剣豪くんの所へ案内して頂戴」


2012/04/04 13:31 大槻 笑美&犬山 剣豪

 お、この匂いは俺と笑美だ。

 意外と早く帰ってきたな。

 いや、もう一人…珠輝!

 何で珠輝がここに?

 もう何か分かったのか?

 『い、犬山くん。 おおお落ち着いて聞いてね』

 『お前が落ち着けよ。 何があった? 』

 『うん…四方印さんが先生を殺しちゃったの』

 『ふー…何ィ! ちょちょちょ、何で! 』

 四方印さんがシロ(犬山くん)に手を伸ばす。

 「これが本当に剣豪くん? 何てこと… 」

 犬山くんは黙って頭を撫でられているが、凄い目つきで四方印さんを睨んでいる。

 『火薬の匂いがするぞ。 誰をやったんだ? 勝子か? 』

 「味噌カツじゃないわ。 佐久間先生よ、担任の」

 四方印さんが撫でる手を止めた。

 「いま話したのね。 ケンちゃんは何て言ったの? 」

ワンワン!

 『ケンちゃんは止めろって言ってるだろ! 』

 「誰が死んだのかって。 それと、ケンちゃんって呼ぶのを止めろって」

 おお、四方印さんも笑うのね。

 何だか意外な感じ。

 「フフフッ、でも場所を変えましょうか。 家の前で話すのは目立ち過ぎるわ」


2012/04/04 14:08 大槻 笑美&犬山 剣豪

 わたしたち三人とシロは、春の風が心地いい河川敷に移動した。

 わたし(女)のシロは、相変わらず我関せずな感じで寝ている。

 「さて、と。 何から話しましょうか」

ワンワン!

 『お前は誰だ! 』

 「四方印さんは何者ですか? 拳銃なんて持ってるし! 」

 彼女は考える素振りで少し黙っていた。

 「…隠しても仕方が無いわね。 私は間違いなく四方印珠輝よ。

 でも、100回くらい死んでるの」

 …は? 今なんて?

 「驚くのも無理ないわね。 この話を信じた人は数える程しかいないもの」

 「うーん、わたしもこんな状況じゃなかったら無理かも」

 犬山くんも黙り込んでしまった。

 「それを佐久間先生に相談したの。 でも、先生は天使になってしまったわ」

 「つまり、えーと、四方印さんは不死身超人なんですか? 」

 四方印さんが微笑する。

 何だかとても寂しそうに。

 「大槻さんは面白い表現をするのね」

 「笑美でいいですよ。 同級生だし」

 「それなら貴方も珠輝って呼んで。 その姿だと、その方が落ち着くの」

 そうか、見た目は犬山くんだもんね。

 「笑美さん、さっきの答えはノーよ。 不死身なら…100回も…死… 」

 突然、彼女が泣き出した。

ガルルッ!

 『バッカ、こいつ泣き虫なんだから言葉に気をつけろよ! 』

 『そんなこと言ったって! 』

 意外だなあ、もっと女王様みたいな人だと思ってた。

 「ちょっと飲み物買ってくる! 」


2012/04/04 14:23 大槻 笑美&犬山 剣豪

 珠輝ちゃんが綺麗な刺繍のハンカチで涙を拭いている。

 泣き顔の美人も素敵だなぁ…。

 「御免なさい、話の途中でみっともないとこ見せちゃって。

 それで、何度死んでも生き返るのは… 」

 ワン!

 「タイムスリップ! 」『タイムリップス! 』

 犬山くん、それ口紅っぽい。

 「そう、死ぬとタイムスリップが起きるの。

 しかも同じ時間の同じ場所、昨日の午前七時二分に私の部屋へ戻るのよ」

 「原因は分かったの? 」

 珠輝ちゃんが黙り込んだ。

 きっと分かってるんだけど、言いたくない感じだなあ。

 犬山くんが頭に割り込んできた。

 『何で珠輝の奴、そんなに死んでるんだ? さっきの殺したって話と繋がってんのか? 』

 「そうだった! 正当防衛でも殺人よ! 自首すれば罪が軽くなるよ! 」

 「違うの、命を奪ったのは私じゃない。 他の天使が粛清したの」

 「ええ? つまり仲間割れしてるってこと? 」

 また黙り込んだ。

 「えーっと、その天使組合は珠輝ちゃんの何かを狙ってるんだよね?

 それを渡しちゃえば… 」

 「駄目よ! 」

 突然、大声を出されて驚いた!

 寝てたシロまで起きてる。

 「自分たちの仲間でも容赦しない連中なの。 すぐ口封じされるに決まってるわ」

 えええ、そんな怖い人たちには近づきたくないなあ。

 「今度は私が聞きたいわ。 どうして貴方たちは入れ替わってしまったの? 」

 「うーん、わたしにも良く分からないんだけど… 」


2012/04/04 15:05 大槻 笑美&犬山 剣豪

 珠輝ちゃんが驚いた様子で口に手を当てている。

 「私が死んだ後でもタイムスリップが起きてるのね… 」

 『猫どもの話だと珍しくないらしいぞ。 だから全部話せ』

 「え! 猫と話せるの! 羨ましいなあ」

ウォン!

 『ちゃんと伝えろっつーの! 』

 「あ、えーと、タイムスリップは珍しくないんだって。

 だから原因を… 」

 急に珠輝ちゃんが立ち上がった。

 「ごめんなさい、急用を思い出したの。 また明日ね! 」

 逃げるように珠輝ちゃんは行ってしまった。

 『…どう思う? 』

 『怪しいな』


 ** 続きます **


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