1日目:午後
2012/04/03 12:55 大槻 笑美
まったくもう!
目が離せないとはこの事ね。
今日はテスト期間で早く帰れるし、今のうちに
何とかしないと。
…あれ? 何とか出来るのかな。
2012/04/03 13:01 犬山 剣豪
四方印が生きてる、か。
どーゆーこった?
あいつが嘘を言ってるようには見えないし
本当に過去なのか?
トラックに轢かれたはずの場所には何も無かった。
俺ん家も変わって無かった。
…あーもうわけ分かんねェ!
こりゃあ頭が犬のせいだ!
犬なんて不便な事ばっかしだぜ!
こうなったら四方印に直接聞くしか無ェ!
2012/04/03 13:51 大槻 笑美
あっ、またハムちゃんが行ってる。
シロが静かで助かるけど、何を考えてるんだろう?
「どうしたのさ、おツキ。 今日やけに無口じゃん」
わたし(女)が首を傾げてハムちゃんを見てる。
何度か家に遊びに来てるし、シロも知らない人じゃないんだよね。
「えーと、公子さん。 あのさ」
ハムちゃんが横目でわたし(男)を見た。
「何だよ、気持ち悪いなあ。
犬山のくせに敬語使ってんじゃないよ」
ハムちゃんと犬山くん、やっぱり知り合いなのかな。
「ご、ごめん。 その、ちょっと彼女に用があって… 」
「へえへえ、お邪魔しました。 でも何かあった?
あんた、そんなキャラじゃないよね? 」
普段どんなキャラなんだろう?
男子なんて全然分からないしなあ。
『エミ』
いつの間にかシロのわたし(女)が見てる。
犬山くんの話だと、犬も会話できるんだよね。
でも言葉で話すのは苦手みたい。
どうやって理解しあってるんだろう。
『どうしたの? 』
『シロはエミ? 』
えええ! 今更そこに気が付いたの!
『えっとね、そうだけどそうじゃないの。
とにかく今日は大人しくしてて。
明日には元通りだから』
シロは不思議そうに指を曲げたり伸ばしたりしてる。
そう言えば、自分の体じゃないのにどうして歩いたり
話したりできるんだろう?
わたしも同じなんだけど…。
2012/04/03 14:51 大槻 笑美
やっとテスト終わった!
早く帰って何とかしないと。
「さあ、行くわよ! 」
教室を見回してるわたし(女)の腕を掴む。
ハムちゃんが何か言ってる気がしたけど、ごめん。
今日は余裕無いの。
犬山くん、まだ居るかな。
2012/04/03 14:56 犬山 剣豪
いつまで待ってりゃ良いんだ?
四方印って何か部活してたっけ?
くそっ、こんな事になるなら学校行っときゃ良かったぜ。
お? 中が騒がしくなってきた。
へえ、犬の耳って便利だな。
2012/04/03 14:56 大槻 笑美
「ちょっと待てや、ゴルア! 」
「女連れで帰宅たあ、良い身分だな。
ええ? 犬山さんよ」
え? 何? 誰?
「お前ちょっとばかし、チョーシこき過ぎじゃねえ? 」
「あ、あの、どちら様? 」
わたし(男女)を囲むように立っている男子たちが
突然怒った!
「んだとコラ? 覚えてねぇだと! 」
「今日こそボコボコにしたるけぇ、覚悟せぇや! 」
あれ? 広島の人なんて学校にいたんだ。
一番体の大きい人が前に出て来た。
「顔色も変えんとは良い度胸じゃねえか。
なあ、狂犬。 ちょっと顔貸せや」
あれ? 何でこんな状況なのに、わたし怖がらないの?
まあ、それどころじゃないもんね。
「あの、ごめんなさい。 急いでるんで」
また取り巻きの男子が騒ぎ始めた。
「てめえの都合なんか知ったこっちゃねーんだよ!
このボケが! 」
「和田さんが来いっつってんだ! さっさとしねえと
その女…痛ってエ! 」
え? ギャーッ! シロったら何噛み付いてるの!
「ご、ごめんなさい! シロ、止めなさいっ! 」
「何すんだコイツ! 」
噛み付いてた子から、シロが何かをかわすように離れた。
あ、殴ろうとしたのね。
…あれ? 何でわたし分かるの?
「ざけんなよ、マジで! 血が出たじゃねぇか! 」
『狂犬病だから病院に行け、って言ってみな』
頭の中で声がする。
『犬山くん、聞いてたの? 今どこ? 』
『時間が無い。 早くしろ』
歯を剥き出して威嚇してるわたし(女)を見ると
残念ながら本当に見えなくも無い。
もう収拾不可能だ…。
「…あの、この人は狂犬病だから早く病院で手当てした方が良いよ」
それを聞いた途端、噛まれた男子が真っ青になった。
「えっ! 俺ゾンビになっちまう! 」
はあ、男子ってやっぱりバカなのかな。
和田さん(たぶん先輩)は黙ってたけど、くるりと背を向けた。
「病院に行くぞ」
「コイツどうすんですか! 」
「その女に免じて、今日のところは見逃してやる。
だが次は無ェぞ」
あーもう、面倒くさいなあ男子って!
2012/04/03 15:13 大槻 笑美&犬山 剣豪
「何で助けてくれないのよ! 」
校門の所に居たシロ(犬山くん)を叱りつけた。
でもシロは何かを探すように鼻を動かしている。
『和田は基本、面倒見が良いからな。
あれで引っ込むと思ったぜ。
それより人前で声出すな、頭ん中で話せ』
「何それ? 意味分かんない」
『頭のおかしい奴って思われるだろ! それより四方印は帰ったのか? 』
『知らないわよ、そんなの。 四方印さんは関係ないんでしょ? 』
『いや、絶対関係ある。 だってあいつは… 』
突然シロが黙り込んだ。
玄関から四方印さんが出てきたらしく、男子が何人か振り返っている。
まあ、仕方が無いよね。
確かに美人だもん。
だから自殺するなんて凄いニュースだったし。
『確かに生きてやがる。 本当にわけ分かんねーな』
そう言いながら犬山くん、何か嬉しそうだ。
『とりあえず状況をあいつに話そう。
そうすりゃ何か分かるはずだ』
そこまで確信持ってる理由が分かんないけど、とにかくやってみよう。
四方印さんが背筋を伸ばして真っ直ぐ歩いて来る。
「あ、あの、四方印さん? 」
彼女は観察するようにわたし(男女)とシロを順番に見てから
わたし(男)を冷ややかに見た。
ああ、美人に見つめられるのって女でもドキドキするものなのね。
「剣豪くん、お久しぶり。 元気そうね」
え? 四方印さんと犬山くんって知り合いなの?
『…直球で行くぞ。 お前は誰だ、って言え』
『え? ええ? 』
シロがわたしを睨んでる。 何なのよコレ!
「お、お前は誰だ! 」
四方印さんが首を傾げる。
何やっても絵になるなあ。
「おかしな事を言うのね。 私はしほういん・たまき。
貴方は剣豪くん、いぬやま・けんごうくんでしょう」
「ウーッ、ワンワン! 」
『俺の珠輝は、お前みたいな奴じゃねェ! 』
俺の? …えええ? あんたら付き合ってたの!
思考が麻痺して、思わず言葉が漏れてしまった。
「お前なんか知らないよ! 」
急に四方印さんがわたし(男)じゃなく
わたし(女)の顔を覗き込んだ。
「…そうね。 私も貴女を知らないわ。 さようなら」
怖っ! さっきは男子たちに囲まれても平気だったのに
何だか物凄く怖い!
四方印さんが興味の無くなった様子で立ち去る。
『ちょっと、これじゃ何も進まないじゃないの!
何か…そうだ! 犬山くんが犬だって話そうよ』
シロ(犬山くん)は彼女の後姿を睨んだままだ。
「四方印さん! まだ話があるんです! 」
でも彼女は足を止めない。
『行っちゃうよ! 何か無いの! 』
シロは黙ったままだ。
もう、面倒な事ばっかり!
「四方印さん! この犬が犬山くんです! 」
あ、足が止まった。
「何の冗談? 新しい彼女に見せたいの? 」
うわあ、そう思ってたのね。
『えっと、信じさせる何か無いの? 二人だけの思い出とか何か』
シロがこちらを向いた。
『…お前の将来の夢は少女マンガ家だ』
「えーと、将来の夢は少女マンガ家だと言ってます」
その途端、四方印さんが耳まで赤くなった。
「…最っ低! あれだけ言わないでって約束したのに!
そんなの貴方が知ってるのは当たり前でしょう! 」
えーっ! これ逆効果じゃないの!
案の定、彼女は凄い勢いで走り去ってしまった。
『あれ? あの顔…やっぱり珠輝なのか…? 』
知らないわよ、そんなの。
** 続きます **




