3日目:午後
2012/04/05 12:46 大槻 笑美
何だか怖くて逃げてきちゃった。
だめだめ、帰りに捕まえて聞き出さなきゃ!
2012/04/05 13:01 犬山 剣豪
「やっと見つけたぜ、ミケ! 」
路地を横断していた三毛猫が振り向いた。
「混じりか。 オレに用かい? 」
「俺が犬になっちまうのは、後どれくらいなんだ? 」
「そんなの分かるわけないだろ」
「お前、俺が人間と混じってるのが分かるんだろ! 今はどうなんだ? 」
三毛猫が目を細めた。
「それが何かを頼む態度かな? 」
「…今度またたび貰ってやるから、頼むよ」
ミケの目が見開いてる。 分かりやすい奴だ。
「仕方が無い、馬鹿なお前にも分かるように説明してやろう。
犬になるかならないかは、お前次第だ」
「何だそれ? 」
「そもそも混じりってのは心の中だけで、姿形は変わらない。
それは分かるよな? 」
調子に乗ってきたのか尻尾を左右に揺らしてる。
何でコイツはいっつも偉そうなんだ?
「どう考えていようと、いつかは体と折り合いをつける。
お前がどれだけ憧れても、オレみたいな立派な尻尾に成れないようにな」
「つまり俺が自分を犬だと認めたら終わり、ってことか? 」
「そうだ。 だが本当に犬なんだから人間だった事なんか忘れるんだな。 でもマタタビは忘れるなよ」
2012/04/05 14:57 大槻 笑美
うっ、珠輝ちゃんが廊下で待ってる。
何だかストーカーに見えてきた…。
「剣豪くん、一緒に帰りましょう。 笑美さんもね」
あの怖い笑顔だ。 うわあ、どうしようかなあ。
ううん、ここで逃げちゃ男が廃るってもんよ!
「おツキ、部活行こう! 」
「いいですわよ。 ご一緒いたしますわ」
ギャーッ! シロってば何を勝手に決めてんの!
あんたにバスケなんて無理だって!
「あら、それなら私たちだけで帰りましょうか。 大槻さん、また明日ね」
珠輝ちゃんまで!
ルールも知らずにやれるの?
それに一人で帰ってこられるの?
あああ、不安だなあ。
2012/04/05 15:12 大槻 笑美
あれ? 玄関に犬山くんがいる。
何だか忠犬ハチ公みたいで可愛い。
「丁度良かったわ。 二人に私の考えを聞いて欲しいの」
2012/04/05 15:49 大槻 笑美&犬山 剣豪
わたしたちは、いつもの河川敷に来た。
犬と一緒にいられる場所って、意外と少ないんだよね。
「早速なんだけど、二人とも私と一緒に死んでくれない? 」
「いい…良くない! 何で! 」
さすが100回も死んでるだけあって、軽く言うなあ。
ワン!
『俺はこの話、乗るぜ』
「ふぇっ! 何で? 」
『このままだと俺は完全に犬になっちまうらしい。 そんなの真っ平御免だし可能性があるなら、そっちに賭けるね』
「うーん、分かった。 犬山くんはやるって言ってます」
あ、珠輝ちゃんが普通に笑ってる。
犬山くんの時だけは本当に楽しいのかな。
「フフフッ、さすがケンちゃん。 何も話してないのに決断が早いのね」
珠輝ちゃんが優雅に立ち上がる。
「私ね、この時間移動は運命だと思ってたの。 でも貴方たちの話で分かった。 これはただの現象なのね」
そして自分の手を見つめて呟いた。
「これで私は解放される… 」
突然、土手の上から子供の声がした。
「四方印様! 持って来ました! 」
『この匂い…こないだのガキ! 』
駆け寄って来たのは、いかにも腕白そうな子だった。
「ご苦労様。 これで貴方のお仕事は終わりです。 この世界で元気に生きてね」
「僕は連れて行って貰えないんですか! 」
「駄目よ。 言ったでしょう、次の世界に神は要らないの」
何を言ってるんだろう?
「えーと、話が見えないんですけど? 痛っ! 」
涙目の男の子が脛を蹴ってきた!
「相変わらずKYだな! やっぱりお前にだけは任せられねえ! 」
「止めなさい、飛猿くん! この…いえ、犬山くんには記憶が無いの。
貴方の事も覚えて無いわ」
「え? そんな馬鹿な! だって… 」
何なの、この会話?
『犬山くん、この子知ってるの? 』
『いや、全然。 だが、俺ん家吹っ飛ばしたのはコイツに間違いねェ。 お礼は100倍返しだぜ! 』
いきなり犬山くんが男の子に噛み付いた!
「何だ、この犬は! 」
「ちょ、止めなさいよ! 危ないじゃない! 」
でも、この子凄い! 全部かわしてる!
「大丈夫、いつもの事だから放っておきましょう。 それで私の案は… 」
2012/04/05 16:26 大槻 笑美&犬山 剣豪
「…つまり、犬山くんは元に戻るんですね」
「そう、まず私と笑美さん、犬山くんで入れ替わる。
そしてもう一度、犬ちゃんと私、それに笑美さんで完了よ」
「でも、そんなに上手く行きますかねぇ? 最初からわたしたちだけでやれば元に戻るんじゃないですか? 」
あきれた事に、まだあの二人ケンカしてる。
犬と子供なのに感心するくらい、良く続くなあ。
「駄目よ。 今回入れ替わりが起きたんだから、次も同じパターンの確率が高いわ。 何か変化を加えないと」
「…それで、方法は? 」
「飛猿くんが爆弾を持って来てくれたの。 痛みは一瞬よ」
「あの子、何でそんな物が作れるんです? 」
二人とも肩で息をしながら、それでも睨み合ってる。
「飛猿くんは将来、軍人になるの。 その技術を持ってるのよ」
ははあ、なるほど。 記憶と技術は未来から持って来られるのか。
「分かりました。 それで何時やるんです? 」
「今からよ」
「それは早い…へぇっ! 今? わたし、お母さんにお別れもしてない! 」
珠輝ちゃんが妖しく笑う。
「戻ったら誰も覚えていないのよ。 そんな事は気にしなくても大丈夫なの」
「そ、そーゆーもんですかねえ… 」
2012/04/03 07:02 大槻 笑美
…あれ? わたし、誰…?
ここ…どこ?
あっ! これって、もしかして珠輝ちゃんになった?
やっぱり! この美貌は間違いない!
家に行ってみよう!
2012/04/03 7:31 大槻 笑美
おお、懐かしの我が家よ!
もうすぐ帰って来るからね!
「珠輝ちゃん! 」
犬小屋にシロがうずくまっている。
『本当に犬なのね。 分かってたつもりだけど、何だか変な感じ』
『すぐ戻れるからね。 犬山くんのとこ行こう! 』
シロの首輪から留め金を外す。
その瞬間、シロが凄い勢いで逃げた!
「ちょ! どこ行くの! 」
『大槻さん…御免なさい! 』
珠輝ちゃんは一度だけ振り返って走り去った。
●● THE END ●●
拙い文にお付き合いいただき、有難うございました。
とりあえず終幕です。
生活が落ち着いたら続きが有るかも?