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1日目:午前

考えようによっては残酷かも知れない描写がありますので、ご注意ください。

 これは、良くある自然現象である。


2012/05/01 16:05 大槻 笑美

 四方印さん、何で自殺したんだろう。

 やっぱり、あの噂は本当なのかな。

「ねえシロ、どう思う? 」

「ワン、ワン! 」


2012/05/01 16:43 大槻 笑美

「シロ! 危ない!」

「バカ野郎! 」


キィキキキキーッ …グチャッ。


2012/04/03 07:02 大槻 笑美

 …あれ? わたし、トラックに轢かれた…?

 ここ…どこ?

 病院…じゃないよね。

 知らない部屋…何だか煙草臭いなあ。

「…ん? あーあー」

 何、この声。

 風邪…じゃないよね。

「…えーーーーーっ! 」

 何これ何これ? わたし誰?

 変なの生えてるし!

ガラッ。

「おーい、ケーン! 今日は学校行けよ! 」

 えっ? この女の人、誰?

「あ、あの、どなたですか? 」

「ああ? 目覚ましに一発食らいたいのか? 」

「包丁持って言わないで下さい! 」

「どうしたんだ、ケン?

 何か拾い食いしたのか? 」

「い、いや、そうじゃなくて、ですね」

「こっちは今日忙しいんだ。

 とっとと食って行きな! 」


2012/04/03 7:28 大槻 笑美

 この制服、うちの男子だよね。

 でもこんな子見た覚えがない。

 …ああああ! わたしはどうなってるの!

 えと、えと、ここ本町だ。

 急がないと!


2012/04/03 08:02 大槻 笑美

 良かった、家は無事だわ。

 何だかシロが吠えてるなあ。

 ご近所から文句言われちゃうじゃないの。

 「シロ! 黙りなさい! 」

 「お母さん! 」

 あれ? 何で、そんな顔してるの?

 「どちら様? 見かけない子だけど… 」

 「何言ってるのよ、お母さん!

 わたしよ、エミ、笑美よ! 」

 『お前バカか、よく考えろ』

 「えっ? 誰? 」

 あ、お母さんが気の毒そうな顔になった。

 『お前の目の前にいるだろ、俺は犬だ』

 「えっ? お父さん? 」

 あ、お母さんが携帯電話かけてる。

 「もしもし、警察ですか。

 今家の前に変な…ちょっと、何するの! 」

 「お母さんこそ! それよりわたしは

どうなってるの? 」

 「家には、あなたなんておりません。

 お引取り願えますか」

 『だから考えて話せよ』

 『何よ! 犬のくせに! 』

 『俺は命の恩人だぜ。

 とにかく頭を冷やせ。

 迎えに来たって言えよ』

 「…あ、あの笑美さんいますか。

 学校へ一緒に行く約束をしたんですけど…。

 あ、電話お返しします」

 うっ、何だか品定めされてるなあ。

 「…ちょっと待ってなさい」

 はあ、シロがこっち見てるし。

 「もう、何がどうなってるのよ」

 「ワン、ワン! 」

 『俺にも分かんねえよ。

 目が覚めたら犬になってんだからよ』

 『わたしたち、どうして言葉が通じるの? 』

 『それこそ知るかよ。

 そんな事より、お前の体がまずいんじゃねえか?

 こりゃつまり犬が入ってるはずだろ』


 「笑美、起きなさい! 笑美! 」

 「シロ! お母さん、大丈夫? 」

 「何ですか、勝手に人の家に上がりこんで!

 本当に警察を… 」

 『エミ! 』

 布団の中から、わたしにわたしが飛びついて来た!

 『えっ? 今シロと通じた? 』

 「ちょっと、顔舐めないで!

 お座り! 」

 全くもう、また変な座り方を…えーっ!

 「何でパジャマも下着も着てないの!

 どうして!

 ちょっと、お母さん出てって! 」


2012/04/03 08:20 大槻 笑美

 はあ、シロはやっぱり犬なのね。

 あれから何も通じないし、何とか制服は着せたけど

これからどうしよう。

コンコン。

 「笑美…入るぞ」

 お、お父さん。

 「い、いいわ…ですよ」

 わたし(男)にベッタリくっついたまま離れない

わたし(女)を見て、お父さんが寂しそうだ。

 「お父さん、違うの。 勘違いしないで、ね。

 これには深い事情が… 」

 「君にお父さんと呼ばれる筋合いは無い」

 もう、それが勘違いだってば!

 「あのですね、笑美さんは…あの、ちょっと事故で

記憶が混乱してるんですよ、多分。

 それで、わた…僕が付き添うことになりまして」

 「そんな連絡は受けてない」

 こ、怖いよ、お父さん…。

 でも、このままだと病院に入れられちゃうかも。

 研究されちゃったりしたら嫌だなあ。

 「あ、あのですね、その、僕が原因なんです。

 お願いです、責任を取らせて下さい」

 お父さんが目を閉じて考え込んでいる。

 喉が渇いた…。

 お父さんが怖い顔で目を開けた。

 「…明日までだ」

 「あなた! 」

 「男が覚悟を決めるには時間が必要だ。

 彼は若いしな」

 「いやいや、勘違いだってば! 」


2012/04/03 08:29 大槻 笑美

 「こんな時に学校なんて、もう信じられない! 」

 「ワン! 」

 『おい、俺を置いていく気か? 』

 頭の中で声がする。

 「ああ、もう。 何なのよ!

 連れて行けるわけ無いでしょう! 」

 シロが顎で合図してる。

 それが何だか妙に人間臭い。

 『鎖を外してくれよ。 そうすりゃ自由になれる』

 『そんな事したら保健所に捕まっちゃうでしょう』

 シロが鼻で笑った。

 『そんなドジ踏まねえよ。 頼むからさ』

 『もう、どうなっても知らないからね! 』

 鎖を外されて、シロは嬉しそうに身震いしてる。

 『昼休みに学校裏で会おう。

 それまでに色々調べとく』

 『調べる? 何を? 』

 『色々さ』


2012/04/03 08:52 大槻 笑美

 「すいません、遅刻しました」

 校門で味噌カツが冷ややかな目を向ける。

 わたし(男女)を見て独身三十路の指導教員

小野勝子先生が口を開いた。

 「珍しい組み合わせだな。 犬山と大槻か」

 『あっ、そう言えば名前聞いてなかった。

 わたし犬山なんだ』

 「えっと、僕のクラスって何組でしたっけ? 」

 あっ、味噌カツが揚がってきた。

 「ほほう犬山。 自分のクラスも忘れるほど

バカになったか。

 もう、このまま学校来なくて良いぞ」

 「えへへ… 」

 「…何だ、気持ち悪いな。

 2Cだろ、さっさと行け」

 『同じクラスだったのね。 全然知らなかった』


2012/04/03 09:08 大槻 笑美

 「い、犬山…大槻、早く席に着け」

 ああ、絶対変な噂が立つわ、これは。

 ううっ、ハムちゃんが変な目でこっち見てるし。

 仕方が無いよね、非常事態だもんね。

 「ここに座るの。 分かった? 」

 もうシロったら口開けっ放しで、みっともないなあ。

 『ああ、もうキョロキョロしないの! 』

 「…あもうキロキロしない」

 えっ! わたし(女)が声出した! 凄い!

 「犬山、大槻、テスト中だから静かにする」

 担任の佐久間先生に叱られた。

 ああ、この端の席は犬山くんだったのね。

 始業式から一ヶ月も空いてた理由が分かったわ。

 シロが気になるけど、とりあえずテストに

集中しないと。

 …あれ? この問題もうやったよね?

 復習、のはず無いか。

 先週返ってきた実力テストと…同じ?

 今っていつなの?


2012/04/03 09:49 大槻 笑美

 あっ、ハムちゃんがシロに話しかけてる。

 まずい、何とかしないと。

 「あ、あのさ。 ハム…公子さん。

 ちょっと良いかな? 」

 ハムちゃんが何かニヤニヤしてる。

 「ふーん、おツキが、ねえ。

 あたしが知らない間に、ねえ? 」

 「違う! そんなんじゃない!

 そうじゃ無くて、今日は何日? 」

 ハムちゃんが首を傾げた。

 「は? 三日でしょ、四月三日。

 まあ、学校来てないんじゃ知らないか」

 あれ? ハムちゃん、犬山くんの事知ってるの?

 「…えーっ! 四月? 何で四月なの? 」

 「はあ? 何なの? 春ボケ? 」

 えっ、ちょっと待ってちょっと待って?

 何かの冗談? いや、そんなはず無いよね。

 そうだ、確かめるのに良い方法がある。

 「ハムちゃん、ちょっとわたし見てて! 」

 「犬山! 言ってる意味わかんないよ! 」

 確かA組のはず!

ガラッ。

 「あの、四方印さん居ますか! 」

 戸口で話してた男子が窓を指差した。

 本を読んでる髪の長い子がいる。

 そして、こちらをゆっくりと振り返った。

 …生きてる、しかも美人…。

 やっ…ぱり、今は一ヶ月前なんだ…どうして…。


2012/04/03 08:35 犬山 剣豪

 よっしゃ、あいつら行ったか。

 すぐ逃げたら、あいつが逃がしたって

バレちまうからな。

 しかし、何で俺が犬なんだ?

 やっぱり四方印の幽霊が何かしたのか?

 くそ、呪いなんて信じちゃいないが、きっとあいつが

関係してるはずだ。

 まずは現場に行ってみるか。

 だけど、服着てないってのは何だか

落ち着かないもんだ。

 犬に服なんて馬鹿なババアのする事だと

思ってたが、意外と意味あるのかもな。

 しっかし、耳と鼻が良いってのは結構キツいわ。

 ゴミの臭いとか凄ェ分かるし、ちょっした音でも

耳元で喚いてるみたいに聞こえやがる。

 「おい、そこの姉ちゃん! 」

 「ああ? 誰が姉ちゃんだよ! 」

 「お前だよ。 なあ、俺と付き合わねえか? 」

 まあ予想はしてたが、俺は犬と会話できるらしい。

 てゆーか、犬が話せるなんて世紀の大発見だな。

 「アホか。 よく見ろ、俺は男だ」

 鎖で繋がれてる黒い犬が鼻で笑った。

 「お前、何言ってんだ? お前こそ良く見ろよ」

 俺は首をひねって自分の尻を…尻を…。

 「何で何も無ェんだよ! 」


2012/04/03 10:25 大槻 笑美

 今日が一日テストなのは助かったかも。

 今のうちに色々整理できるし。

 どうしてか分からないけど事故が原因よね、多分。

 わたしと犬山くん、それにシロが入れ替わったのも

これまた分からないけど、お互い考えた事が分かるみたい。

 こんな映画が昔あったような気がするなあ。

 でも、これって凄くない?

 超能力? テレパシーって奴だよね。

 それに今が一ヶ月前なら、予言とか出来ちゃうよ。

 でも、そういえば一ヶ月前って何してたんだっけ?

 あああ、こんな事なら日記つけとけば良かった…。

 『…したい… 』

 『えっ? 』

 げっ! わたし(女)何で立ち上がってんの!

 「先生! 記入終わったんで、トイレ行って

良いですか! 」

 「…ああ、早く行きなさい」

 「早く! 我慢するのよ! 」

 皆の視線を感じながら、わたし(女)の腕を掴む。

 あああ、これは絶対変な噂が立つわ。


2012/04/03 10:36 大槻 笑美

 もう、本当に本当に今がテスト中で

本当に心底助かったなあ。

 女子トイレから出てきたのを見られたら

もう学校にいられないわ。

 シロが窓から外を覗いている。

 「もう、バカみたいに口を開かない」

 まるでわたしがバカみたいじゃないの。

 テストも赤点確実だし、もう散々だ。

 あれっ? 誰か教室から出てきた。

 「…四方印さん? 」

 彼女は会釈をして階段を降りて行った。

 そう言えば、実力テストでほぼ満点だったとか

噂になってたなあ。

 この頃から、あの噂が広まったんだよね。

 (四方印は予知が出来る)

 …あれ? 何か引っかかるなあ。


2012/04/03 12:05 大槻 笑美&犬山 剣豪

 学校裏の草むらからシロが出てきた。

 「ガルルッ! 」

 『何でメスなんだよ! 』

 「何でわたし男なのよ! 」

 シロの犬山くんが諦めたように座り込んだ。

 『とにかく何か食おうぜ。 昼飯は? 』

 さっきから、わたし(女)がしきりに誰かの

お弁当の匂いを嗅ぎ付けている。

 もう、みっとも無いなあ。

 「買ってくるわよ、お金は? 」

 『ちっ、しゃーねェ、上着の内ポケットだ』

 何枚かお札が入っている。

 「何で財布に…えええええっ! 」

 『大声出すなよ! 見つかっちまうだろ! 』

 全部一万円札だ…七枚も。

 『無駄遣いすんなよ、バイト代だからな』

 「アルバイトは禁止でしょう? 」

 『そんなの守る奴はアホだけだ。

 さっさと行かないと、お前を食っちまうぞ』

 「自分を食べたら共食いでしょ。 バーカ」

 『共食いは意味が違うだろ! このアホ! 』


2012/04/03 12:25 大槻 笑美&犬山 剣豪

 もう、どっちも行儀が悪いなあ。

 シロの犬山くんは、食べにくそうにサンドイッチと

格闘してる。

 わたし(女)のシロは犬食いしようとするから

食べさせてあげないといけないし、もう大変!

 わたしは、いつになったら食べられるのよ!

 皿に水を入れてあげると、犬山くんは慣れた様子で

舌で飲んでる。

 練習したのかな?

 それにシロは今の状況、どう思ってるのかな?

 『さて、飯も食ったし現状確認するか』

 「これはアレでしょ? つまり… 」

 『何だよ? 』

 「ズバリ、夢でしょう! 」

ガブッ!

 「痛ったーい! 何すんのよ、このバカ! 」

 『目を覚ましてやったんだよ!

 お前も噛み付こうとかすんな! 』

 わたし(女)が歯を剥き出してシロを睨んでる。

 あれ? もしかしてシロと犬山くんって

意思が通じてるの?

 「シロの言ってる事、分かるの? 」

 『まあな。 他の犬とも話せるぜ』

 何だか得意げなのが面白い。

 「じゃあ、わたしからね。

 夢じゃないなら、タイムスリップよ! 」

 『へえ 』

 「何で驚かないのよ? 」 

 シロの犬山くんが自分の体を見た。

 『これじゃ何でもアリだからな。

 でも、どうしてそう思った? 』

 「何でって…そう、四方印さん!

 四方印さんが生きてるもの」

 シロがわたしを睨んだ…ように見える。

 『四方印が生きてる? 本当に? 』

 「う、うん。 だから今は一ヶ月前の四月三日」

 シロが黙り込んで何か考えてる様子だ。

 わたし(女)は興味が無さそうに、目を閉じて寝ている。

 二人の考えてる事が全部、伝わるわけじゃないみたい。

 わたし(男)の意思も筒抜けじゃないのね。

 少し安心した。

 『だとすると四方印は関係ないのか。

 わけ分かんねーな』

 「犬山くんの考えは? 」

 『いや、そうだな…つまり、だ。

 お前、下着何とかした方が良いぞ』

 「は? 何言ってるの? 犬が下着穿くの? 」

 シロが目で合図した。

 その視線の先には、春の陽気を浴びて

気持ち良さそうに寝てるわたし(女)のスカート…¥@%&!


 ** 続きます **

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