優しい女の子
「え、あ、は・・・?」
「ヒャハハハハ」
血しぶきを被った俺は、呆然とピエロの笑い声を耳に、立ち尽くす。
ピエロがハンマーを持ち上げた。
グッと引っ張られる。気づいたら、同じく血を被ったソフリーが俺の事をつかんでいた。
「逃げるよ・・・!」
気づいたら床がもとに戻ってる。あいつがいるから・・・
俺とソフリーは走りだした。
「ヒャハハハハ」
まだ笑ってる。後ろから追いかけてくる。最悪だ。でも、なにより俺らは、走って逃げることしかできないのか。
「テラちゃん。あれ」
「扉か!?」
あそこに逃げれれば・・・!
「あそこまで頑張れるか!?」
「いける・・・」
全力で走る。
扉の前まで来て安心してたのだろうか。
それとも、過信していたのだろうか。
『野生動物みたいみたいなものじゃないかしら』
あぁ、アンさんこいつはそんな者ではありません。こいつは俺らを、人間を分かってる。
自分が走っていた床が消える。
なぜ敵が一匹だと思う?なぜタネが1つだけだと思う?これじゃさっきと同じじゃないか。
「ヒャハハハハ」
ピエロの笑い声を聞きながら、俺らは奈落に落ちていった。
「・・・」
目を覚ました。
不快な気分だ。アンちゃんは私達と同じようにここへと来てないのかな。辺りを見渡す。いない。
隣ではテラスも起きていた。
「アンちゃんは、諦めてたのかな」
「…ッ」
まただよ。大切だと思った人が、あっさりといなくなってしまうのは。
あの日を思い出す。私は面白い楽しいと思っても感情に出なかった。だからノリが悪いと思われてたし、感情が解らないんじゃ人も怖くて近づかない。でも、1人の男の子だけは私とずっと喋ってくれた。
なのになぁ、その子行方不明になっちゃった。何があったのかは分からない。ただ、二度と戻ってこないことだけは分かった。そっから私は家に引きこもって、親にも見放された。
それだけの話。
「…ソフリー、あの人が諦めてたら、俺ら今ごろここにはいない。あの人が...アンさんが諦めないで笑ってたからここまで来たんだろ」
最初は感情がない女の子なのだと思っていた。でもただ、顔に出せないだけなのだと、怖いのも全部顔に出せないのだと、こんなにも可哀想なことがあるのか。きっと、アンさんはソフリーがそんな子だと分かってたのか。
『お前はそいつを優先するのかよ!?』
今ならケンカ別れしたアイツに言える。この子が起きるのを待っててよかった。この子は俺と同じじゃない。優しい女の子だ。だって、たかが数十分一緒にいただけの人に、こんなにも涙が流せるんだぜ?




