第20話 『復讐物語……完!』
「ビルラウン様、本当に引き上げてよかったのでしょうか?」
ワーゲスト王国から撤退した魔王軍、その中に不知火から魔族ボーイと呼ばれていた魔族のプレムと魔王軍の将軍ビルラウンが並んで歩いていた。
「ああっあそこのジェネスって王についてはもう必要もない、さっき密偵からの報告もあったがあの城を真っ二つに切り裂いた一撃、あれをシラヌイがやった時にあの王を武器に使ってやらかしたらしいからな」
「はい、話を聞いた時には嘘か冗談だと思いました」
ビルラウンの部下からの報告、それは城の門前にて魔道士タリシアと戦いなんやかんやとあり最終的にはタリシアを空中で爆発させ、ワーゲスト王を殴り飛ばしたり掴んで振り回して王城を真っ二つにした、と言う不知火と一度は直接会っていたビルラウンでも理解出来ない内容だった。
それでも信頼する部下の言葉、ビルラウンは信じる事にした。その時に他者の心の感情や思考を読める能力を持つリルガーハの一族であるプレムがちょこっと活躍したりもしてこうして話をしているのだ。
「俺の部下は戦場でそんな報告はしない、それにあの莫大な魔力をお前も感じただろう? 最早こんな国やあんな王など相手にしてられる状況じゃないんだよ」
「と言う事は…」
「ああっ突然現れたあのシラヌイという男、ヤツについて魔王様に報告する事が何よりも急務だ。だからこそ全軍を退却させて俺達は今こうして国に帰ってる訳だ」
ビルラウンは不知火アサヒと言う男について初対面の時の事を思い出す。
(最初に会った時、ヤツの魔力は俺の方が上だった…一対一でやり合えば先ず俺が負ける事はない筈だった。しかしあの城でヤツの放つ魔力が明らかに上昇していた)
部下からの報告もそうだがビルラウン自身もワーゲスト王国の戦場にて動いている時にその強大な魔力を感知はしていた。
(力を隠していた? いや、そんな気配はなかった。としたらヤツは一瞬で力を増大させた事になる、とんでもない話だな、俺どころか魔王様にとっても脅威となり得る可能性がある)
「けどビルラウン様自身が報告しに戻る必要があるんですか?」
「俺はその必要があると判断した」
「普通なら部下にやらせる事ですが」
「たった一人で俺達魔王軍に停戦を交渉したり、一国の王を物理的に使って城を切り裂くデタラメなヤツの話だ。俺自身が説明しないと魔王様どころか他の六魔将軍も信じる事はないだろうな」
「……ですね」
ビルラウンの言葉にプレムは不知火の事を思い出して呆れながらも同意した。
色々と面倒ごとに巻き込まれるか距離を置かれる一族の出だけに魔王軍でも極力目立つのを嫌うプレムにとっては上のやり取りなど雲の上の話だと考える事にした。
(まっボクは下っ端なのでもうこんな話と関わる事もないだろうし、話がどう転がるか知らないけど何でもいいか)
そんな風にのほほんとしていたプレム、しかし後日魔王から不知火について情報を集めるように指示されたビルラウンから面倒ごとを丸投げされると言う悲しき運命が待っている事をこの時の魔族ボーイは知る由もない。
◇◇◇
「ふぃ~~やっと終わったぜ」
「あっお帰りなさいアサヒ」
俺は転移装置がある街に戻ってきていた、空を高速で飛んでのスピード帰還である。
あのイシリアって金髪美少女との話を思い出す、話を聞いた俺は最初は信じられずに空へと上がって王都の状況を確認した。
すると本当に魔王軍は王都から撤収してどっかに行ってる途中だった、多分自分達の国に帰ったって事なんだろう。
えっカス王はもういらないの? と思った、まあこっちから運んでまで持って行く必要もない、だって面倒くさいし。
復讐を終えた俺のやる気はゼロ、取りに来ないのなら要らないんだろう。そう言う事だと判断した俺はイシリアに後はそっちで勝手に処理してくれと言うだけ言ってそのまま蒼空へとフライハイ、全ての面倒ごとを無視して帰る事にしたのだ。
下の方で金髪美少女が結構大きな声でなんか言ってたが無視した。
しばらくは島に引きこもる予定なのであのカス王が仮に何かしでかしても知らぬ存ぜぬを決め込むつもりだ、それでも俺の耳に不快な話が来たらまたストラッシュの武器にでもしてやるさ。
「エリンダ、転移装置の方は大丈夫だったか?」
「まだ街の人達は避難したまま誰も帰って来てないから何の問題もなかったわ、むしろ食べ歩きも出来なくてお腹が空いたから早く戻ってきてくれて良かったわよ」
「俺、国と国との戦いに介入してきたんだが……まあいいか」
エリンダ、彼女の中で俺はどう言う存在なのかと疑問に思う。こちとら異世界の事など何も知らない日本生まれの普通の好青年なんだが……。
「……それじゃあ帰るか、もうここに居ても時間の無駄だしな」
「そうね、私も色々と仕事はしてたから疲れたし、さっさと休みたいかな」
色々と仕事ね、コイツはスパイらしいので何か暗躍していても不思議とは思わない。好きにすればいい。
何か俺に迷惑をかけたり舐め腐った真似をしない限りは俺も下手な干渉はしないつもりだ。
「俺は……しばらくはゴロゴロと過ごしたいな~」
俺達は転移装置を使って謎の島へと帰還した。




