第2話 『謎の樹海』
「くそっどこだよここはっ!?」
なんか少し前にもほぼ同じセリフを言った気がするが今はそれどころではない。
あのタリシアとかいうクソ魔道士、本当に俺をどっかの訳分からん場所に転移しやがったみたいだ。
そこは鬱蒼とした木々が生い茂る森の中、その木々がやたらとデカく太さは俺数人分、高さにいたっては木々の一本一本が何十メートルあるのかと言うレベルでどいつもこいつも大樹していた。
緑色の絨毯が広がり少なくとも歩いて進む事は出来そうだが道らしい道なんてないから本当にこれからどうすればいいんだよと途方に暮れてしまいそうになる。
「明るいからまだ日は高いか、けど木々がデカすぎて太陽がどの方向にあるのかも分かんないな」
この森、と言うか殆ど樹海か? 大樹以外にも多くの植物が自生しているが日本の森ではまず見かけなさそうなメンツが殆どな気がした。
まっ森なんて子供の頃に行ったきりだから大して記憶も当てには出来ないけど。
するとガサガサと近くの茂みが音を立てて揺れた。
「ん? なんかいるのか………のわ!」
「ピギャアーーーッ!」
茂みから現れたのは青い半透明なプルプルだった。
声を出している、生物らしい。そしてそのプルプルには口があってその口には凶悪そうな牙が生えているもんだから洒落にならない。
その謎の生物は飛び跳ねて俺に噛みつこうとしてきた。
緊急回避だ、その場から横にジャンプした。
何とかギリギリで回避成功だ。
「なっなんだこの生き物は、まさかスラ」
「ピギャアーーーーーーーーッ!」
「くそが、この世界は人間もモンスターも人が話してるってのに聞かなすぎなんだよ!」
当たり前だが向こうは敵意全開だ、交渉の余地もない。
一方の俺もこれまで色々とあり過ぎて心身ともにストレスがマックス、端的に言ってかなりイライラしていた。
そして緊急回避した先には結構太くて長い木の枝があったのでそれを見つけると同時に手に取る。
「ピギャアーーーッ! ピギャピギャアーーーッ!」
「やるならやってやる! これでも食らえや!」
目もないくせにこっちの正確な位置が分かるらしいスライムっぽい生物は再び飛び跳ねて嚙みつき攻撃、丁度こっちの太めの木の枝でぶっ叩ける高さに来たタイミングを狙ってフルスイングをかます。
「ビギャアッ!?」
スライムが吹っ飛んだ、しかしダメージは大した事なかったのか直ぐにピョンと起き上がりこちらに牙を見せながら低くうなり声を上げる。
「ウゥウウ~~~~~~っ」
「犬かよ、ハッキリ言うが犬よりも十倍はキモイからなお前!」
今度はこっちから攻める。木の枝を手に距離を詰めていった。
ヤツの見た目がまんまスライムなのでゲームとかだとスライムってどんな攻撃をしてくるかを考えながら戦うことにした。
怖い攻撃だとスライムが頭に張り付いて口や鼻の穴を塞いで窒息死を狙ってくるとか何でも一瞬で溶かす酸の塊を飛ばしてくるとかあったな。それと斬撃とかの物理攻撃にやたらと強いとか。
しかし木の枝での攻撃でも気にしてるのかさっきまでよりも慎重になりこっちへの攻撃を躊躇っているように伺えるので物理に大してほぼ無敵みたいなのはないと思う。
逆に張り付いて窒息死を狙うとか酸を飛ばしてくる可能性はまだある。そして張り付きよりも怖いのが酸を飛ばすみたいな遠距離攻撃だ、そんなのされると俺に勝ち目がなくなる。
だからこそ怖いけど前に出た。
ヤツが余計な真似をする前に倒す。
「だりゃあぁあーーーーーーっ!」
そんな感じで木の枝でスライム相手に奮闘する事数分、ようやくこの死闘に終わりが訪れる。
「今がチャンスだ! おりゃあぁあああーーーーっ!」
「プギュアァアッ!?」
綺麗に決まった一撃、どうだ見たかこんちきしょうめ。
改心の一撃を受けて動きを止めたスライム、俺は残りの体力を全て使い果たしてでも攻撃あるのみ。目の前のスライムが再び動き出す前に連続で攻撃を叩き込みまくった。
やがてスライムは動かなくなった。
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ………なっなんとか倒せたか?」
反撃を受けてから明らかにスライムの動きが鈍くなった、まさかあそこで手を止めてれば交渉次第では仲間入りなんて展開もあったのだろうか。
「いや、こんな牙を剥き出しで襲ってくるバケモンに何を同情してんだよ俺は……今の俺にそんな事考えてる余裕なんてないだろ、ん?」
意味のない自問自答をしていたら、倒したスライムから謎の光が立ち上っている事に気付いた。
謎の生物から謎の光とか謎が多すぎるぞこの世界。
「なっなんだこの光は……おあっ!?」
そうこうしているとその謎の光が俺の方へと向かってきた、その速度はまさに光束……て程は流石にないが途轍もなく速い。
スライムへの連続攻撃で疲れていたのもあるが殆ど動けなかった。
その光は俺の身体に吸い込まれるように消えた。
それと同時に自らの身体に明らかな変化が現れる。
「か、身体が軽くなった? それに力がなんかこうっ漲ってきたみたいな、こんなの……まるで」
ゲームの、とそこまで考えた時点で気付く。
少し冷静に自分の状況を考えてみた。
俺はタリシアと言う女魔道士に日本から魔法なんてファンタジーな力があるこの世界に召喚された。
そしてあの金髪イケメンクソ野郎によって追放を言い渡され、あのクソ魔道士にこの謎の樹海に転移させられる。
そしてまるでゲームに出てきそうなスライムが現れて、これを倒した。
するとさっきまで戦闘で疲れていた俺の身体の疲れが謎の光を吸収した事で吹き飛んだ、むしろさっきより元気になった。
と言うか、身体能力が上がった。そう直感で感じた。
こんなのまさにゲームとかラノベの──
「まさかレベルアップでもしたってのか?」
まあ始まりが完全に異世界召喚だったしな、普通なら経験値とかレベルアップなんて話は笑い話のそれだが、ここは日本じゃないだろうし、ほぼ地球ですらないと思われる訳だから気にしても仕方がないか。
大事な事は一つ。
「つまり、この島で俺は強くなれるって事か? それこそゲームのキャラみたいにレベルアップを続ければ、いつかあのジェネスとかいうクソ王とタリシアってあのクソ女魔道士にも復讐が出来る……かも知れない」
それに気付いた時、俺は自分自身でも意識しないうちに笑みを浮かべていた。
悪魔のような笑みを。
どんな時も笑顔を忘れない主人公です。




