第17話 『打ち上げ花火』
「有り得ない……転移魔法を破壊するだなんて!」
確かにな、俺もノリでやったがこんな真似まで出来るとは思わなかった。俺の身に何度も起こるレベルアップ現象、それが俺を加速度的にこの魔法ありのファンタジー世界に馴染ませていってる。
ちょっと怖いかも、しかしそんな本音は一切出さない。目の前には復讐の対象であるクソ女魔道士がいるからな。
「残念だったな~その有り得ない理不尽が、目の前で起こっちまったよ。常日頃の行いが悪すぎたのかもな?」
「くっ! く、来るな! 私に近づくんじゃないわ!」
「この後に及んでも偉そうだなお前……」
最早万策尽きたのだろう、持ってる杖を無駄にブンブン振って俺を威嚇するのが精々なタリシア。
しかしまだ彼女は諦めない、見捨てようとした部下達へと視線を向けて叫ぶ。
「お、お前達! そんな魔族達なんてどうでもいいから私を…この私を助けなさい!」
ちょっと引いた、お前、さっき見捨てて逃げようとしたヤツらに私を助けろとかどうなんだよ。
面の皮の厚さは島に出てきたどんな魔物よりも厚いかも知れないな。
しかしそれに対する反応はというと─
「…もう、ダメだ」「…お終いだ」「逃げなきゃ」「そうだ……逃げるんだ!」「フ、フライト!」
「なっ!? お前達、何を勝手な真似をしているの!? 戻りなさい、戻って私を助けなさいよーーーっ!?」
ボソボソと呟いた後、魔導師団とやらの面々が取った行動は魔法で空へと飛んでフライハイ。つまりはタリシアを見捨てての逃走であった。
上司が上司だからな、ちゃんとやり方を見て学んでますなって事か。魔族への対応も上司の命運も全て放棄して空へと飛翔する彼ら彼女らを俺とか侵攻してきてた魔族は無言で見送った。
あっ魔族達はあ然としてたよ。
「そ、そんな……」
これまた無様に膝から崩れ落ちるタリシア。
その哀れな姿とそれでも見てくれは一級品の美人と言うオプションによって最高に俺の気分をハイにしてくれる。
何で碌でもない美女の哀れなラストって見てて気持ちいいんだろうな、碌でもない美女だからか。
「まさかここまで無様を晒す事になるとはな、俺もビックリだぜ」
「ひぃいっ!?」
「けど悪いな~どれだけおたくが裏切られようが無様を晒そうが、俺は復讐に一切手加減とかするつもりはないからよ」
「まっままま待って! 話し合いましょう! そうよ、私達はもっとお互いを理解し合うべきだと思うの!」
「そのセリフは俺と最初に会ったときにするべきだったな」
話をすればする程に俺をムカつかせるのはコイツの才能なのか? 不愉快すぎんだろ。
俺は魔力を操りタリシアを捕縛した。
「何よこれは!?」
「俺の魔力で貴様を捕まえた、もう逃がさんぞ」
「くっま、魔法が使えない!?」
えっそうなの? そんな効果までは俺も知らんかった。
しかし最早そんなことはどうでもいいんだ。
時は来たのだから。
「さあっフィナーレといこうか!」
「なあっ!?」
捕らえたタリシアを上空へと移動させていく。
声が聞こえる高さのうちにヤツに色々と説明をしてやることにした。その方が恐怖を与えられるかと思ったんだ。
「良いことを教えてやるよ。俺の魔力は俺の意思一つで爆発する燃料にもなる、さながらニトロみたいなもんでな」
「ニトロ!? 魔力が爆発!? さっきからキサマは何を言って……や、やや辞め──」
流石は魔導師団の偉いヤツだ、理解が早いな。
そう、これは………打ち上げ花火だ!
「───はぁあっ!」
ドッカァアーーーーーーーンッ!
「ふっ汚ねぇ花火だ……ってか」
タリシアを捕らえていた魔力を爆発させた。復讐の打ち上げ花火である。
無論日本で見た本物の花火と比べられるレベルのそれじゃないがな。空中に漂う煙も無駄に濃くて見苦しいし。
そんな煙の塊の中から俺はタリシアを取り出して地面に放り捨てる。
煙が消える、そこにはこんがり焼かれた、頭がアフロになっている面白生物の姿があった。
「ふがっがはぁあ……」
「アッアレは生きてるのか?」
背後から声が聞こえた、さっきまで暴れてた魔族である。
なんかドン引きしながらもその一人が話しかけてきた。
「ああっ爆発させたのはヤツを捉えていた魔力のごく一部だったんだよ、一応は即死とかしないように残りの魔力でガードしてたんだ。まっ死にはしないが死ぬほど怖くて痛い思いはしただろうがな」
「…………」
背後にいる魔族全員がドン引きしてる気配を感じる。
まあ仕方ない、俺の異世界復讐物語を全く知らないモブキャラに理解しろと言うのも酷な話だ。
別にこの魔族達には用もないのでさっさと先に行くことにしよう。
「俺は城の奥にいるカスに用がある、そこのこんがりアフロに用があるのなら好きにしてくれ」
「カス? えっソイツはもうほっておくのか?」
「ああっもうアレへの復讐は済んだからな、後は焼くなり煮るなりおたくらが好きにしろ。俺が手を汚す必要がないなら、どうにでも好きにしてくれていいぞ」
「…………」
再びドン引かれてる気配の視線を受けた。
手を汚したくないのは誰でも同じだと思うのだが……解せぬ。
まっいいか。
「それじゃあな」
「………あれ、本当に人間か?」
「全く分からん、けど絶対に手を出すなよ」
「そんなことしたら俺達まで全滅だな」
「違いない」
魔族達にコソコソ何かを言われながら俺は王城に侵入した。
待ってろカス王、次はお前だ!
男女平等打ち上げ花火です。




