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第4話 出発

思いの外読んでくださってる方がいて嬉しいです


中年の旅人リュウセイと

悪魔の子 アルテミス


二人は出会い、そして壮大な旅が始まった・・・。


わけでもなく



「いねえ!」

「いねえ!!」

「いねえええええええええ!!!」


「アルテミスがいねえ!」


街の外れの廃墟

一人で叫び続けるリュウセイ


「ちくしょう!待っててくれって言ったのにいねえじゃねえか!」



ー数時間前ー


リュウセイはアルテミスに問いかける

「なあ、アルテミス、お前はどこに向かっているんだ?」


「私は、大陸の最北にある教会に向かっている」


「教会?なぜまたそんなところに?」


「呪いを・・・解くためだ」


「呪い?」


「私の右目には呪いがかけられている」


「右目?右目はどうなっているんだ?髪で隠れてよく見えないが」


「・・・見えないんだ。右目だけ真っ暗で何も見えない。

時折、何かを訴えるように激痛が走る

病気やそういった類ではなく、呪いによるものだと聞いた。

だから私は、呪いを解くために旅をしているんだ」


右目よりも禍々しい右手

そちらの方が人智を超えたものだと思ったが、リュウセイはそこに言及するのをやめた


「呪いを解くために教会に行く・・・

そういえばあったな、そんな話

しかし北の教会までは相当な距離がある。険しい旅になるぞ」


「それでも私は行かなくてはならない」

アルテミスの意思は固い


「わかったよ。お前がどこに行こうが、俺はついていくからな」


「それにしても、長旅になるなら準備は必要だ。

お前が街中に入るとまた騒ぎが起きそうだから俺が色々買い出しに行ってくるよ。少し待っててくれないか?

それに、セナにもあいさつしていきたい。あいつ、心配してるだろうから・・・」


「・・・」

アルテミスは黙ったままだった


ー中心都市 ステラの中央広場ー


そこにセナが一人待っていた。リュウセイが視界に入った途端

歓喜の声と共にすぐにリュウセイの元に駆け寄る

「リュウセイさん!よかった!無事だったんですね!!」


「ああ、心配をかけたな」


・・・


「ところで、アルテミスはどうなったのですか?」


リュウセイは先ほどの経緯をセナに話した・・・


「アルテミスと和解・・・

にわかには信じられません。」


「いや、話せば案外わかるやつだったぞ」


「アルテミスはともかく、あの『天使』と名乗る存在も気になります

あれは魔物とは違う。一体、何者なのでしょうか?」


セナは一瞬だけあの戦場に立ち、天使とも接触している

それだけでもわかるアルテミス以上の異質で凶悪な存在


「俺はなんとなく予想できる。おそらく今後は別の天使が立ちはだかるだろう」


「な!?敵はあれだけじゃないのですか!?

危険すぎますよ!アルテミスと旅をして、さらにそれを上回る強さの天使たちと戦うなんて!」


「アルテミスは危険じゃねえよ・・・

それに、俺はどうしても会いたい奴がいる。そのためにはアルテミスと一緒に旅をする必要があるんだ」


「それにしても、北の教会に行くには果てしない道のりですよ・・・


現在僕たちがいるのは

大陸の中心都市『ステラ』


北に行くと

まず森があり

そこを超えたら小さな村「ツィンクル」

そして山を越えたところに

交易都市「グローム」

そこから荒野を超えた先に北の教会があります」


「まあ、アルテミスが行きたいって言うなら俺はついていくだけだ」


そしてリュウセイにも一つ疑問があった

「ところで、あのアースと仲間たちはどこに行ったんだ?」


「ああ、アースは仲間を連れて現在宿で休息中です。

あと、それだけじゃありません。アースから剣をもらいました」


「剣?ああ、す、すまん。お前から借りた剣も壊れてしまったからな・・・」

交換条件のつもりでセナから拝借した安物の剣

レミエルとの戦いで破損してしまう。


それでもセナは特に気にする様子もなく、アースからもらった剣を嬉々として取り出す


「レイピアか・・・」

レイピア 細身で先端の鋭く尖った刺突用の片手剣。


「アースは言ってました

『お前は非力だが素早く、能力でトリッキーな戦いもできる。普通の剣よりこっちの方が向いてるだろう。

仲間を助けてくれたお礼だ。そして首飾りを奪って悪かった。』と・・・」


アース、横暴なやつだったが、意外と義理堅い

そして、ルールは守るやつだった


「それじゃあ、リュウセイさんとはここでお別れですね。

僕が向かうのは西の果てです。もう会うことはないかもしれませんがお達者で」


「ああ、お前に会えて良かった。お前の旅も無事に終えれるといいな」


たまたま街で偶然会った二人

奇しくも行動を共にすることが多かったが、ここからは別々の道を征く


それからリュウセイは街中で必要な物資を買い揃え

廃墟で待っているアルテミスの元に向かう


ーそして現在ー


街の外れに一人残されるリュウセイ


「いや、確かに俺も数時間待たせてしまって申し訳ないと思ってるけど、勝手に一人で行くのはダメだろ!

あいつを狙っているやつはたくさんいるし、またあの天使が現れたらどうするんだよ!」


だけど、どこに向かったのはわかっている


「北の教会か・・・」

リュウセイは北に向かって走る・・・。


ー北の森ー


リュウセイの予想通り、アルテミスは一人、深い森の中を歩み続けていた

森の中はひどく静かだった。木々は高くそびえ立ち、その枝葉が天を覆い隠すように絡み合い、淡い緑の光が細い筋となって地面に落ちていた。


アルテミスはその中を迷いのない足取りで進んでいく。


そんな中、通路の向かい側に二人の少女の冒険者と遭遇する

一人は身長はやや高めで筋肉質のある軽装な鎧を纏った剣士と

もう一人はアルテミスと身長はあまり変わらない杖を持った小柄な少女だった


冒険者達はアルテミスの存在に気づく

「あ、あれは・・・アルテミス!?」


二人の少女達は恐怖し、その場で立ちすくんでしまうが、

アルテミスは二人の少女に背を向けて歩き進める。その動きには一切の迷いがなく、まるで相手がその場に存在しないかのようだった。


「ま、待って!」

剣士の少女が呼び止める


「ん?」

反応するようにアルテミスは足を止める


「あなた、アルテミスでしょ!?」


「ね、ねえ・・・ちょっと!」

杖を持った少女が引き止めようとするが


「大丈夫だって!」


小柄な少女は怯えているが

剣士の少女はアルテミスに近づいていく


「そうだ。私はアルテミスだ」


「すごい!アルテミスだ!!

初めて見た!」


目を輝かせながら話しかける少女に対し

アルテミスは少し困惑する


「あ、どこかに向かってる途中だったよね。

呼び止めちゃってごめんね。

そうだ!これあげる!!」


剣士の少女から渡されたものは

手のひらに収まるほどの小さな包み


「チョコレートだよ!

確か好きだったよね!!」


「あ、ああ。ありがとう・・・。」


アルテミスは少女から小包を受け取る


「じゃあね!」

少女たちは手を振りながら去っていく


アルテミスは再び歩を進める


道中、受け取った小包を開けると

4つほどのつまめるほどの小さなチョコレートが入っていた


アルテミスはチョコレートをつまみ、口に運ぶ

とろけるような舌触りと

口の中に広がる甘い香りに思わず頬が緩んでしまう


「おいしい・・・」

どこか懐かしさを感じる甘み

何かを思い出せそうな・・・



アルテミスは至福の一時を感じた

しかし、その至福も束の間


目の前に立ちはだかる一つの影

この感じ・・・忘れはしない



目の前に現れたのは

紅い髪に体格は大きく逞しい筋肉

翼をもち、神話に登場する神のような姿

そして生気を感じない無機質な眼



「よお!アルテミス!!

俺の名前はミカエル!お前をぶっ倒しにきた!!」


「天使・・・!」

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