第3話 共闘
リュウセイとアルテミスは戦闘の構えをとる
それを見ていた
天使レミエル
「何だ、結局和解したのですか。
説得も虚しく二人には争って欲しかったのですが・・・」
「悪趣味な奴め」
「それにしても意外ですね。悪魔の子が人間の言うことを聞くなんて・・・
ですが私には関係ありません。」
レミエルは右手を前に出し・・・
「来るぞ!」
いくつもの氷刃が二人を襲う
自身の身長以上の大きさもある氷の刃
一撃でも喰らえばひとたまりもない
「な、なんて威力だ。」
危機的状況のリュウセイ達に対しレミエルは余裕の表情を浮かべていた
「強すぎる魔力というのも困りますね。
圧倒的すぎてつまらない」
攻撃を続けるレミエル
それに引き換えこちらは防戦一方 剣も欠けてしまって攻撃手段がない
アルテミスも氷刃を避けるのに精一杯
影に隠れる能力があっても隠れる影がない
状況を打破するにはアースに奪われた刀を取り戻す必要がある
アルテミスにやられたアースはレミエルの後方で地面に横たわっている
そこに刀も近くに転がっている
「あれを取り戻せれば・・・」
リュウセイは全力疾走でアースの元まで駆け寄る
しかし
「させませんよ」
レミエルは足元から巨大な氷の壁を作りだす
アースまで、刀を取り戻すまでの道が閉ざされてしまった
「く・・・ちくしょう!」
その時だった
「リュウセイさん!」
やってきたのはセナだった。レミエルの後方、つまりアースのいる方向から
「返してもらいますよ!僕の首飾りとリュウセイさんの刀!」
そしてセナはアースから刀と首飾りを取り戻す
「なんですか?この子供は・・・?」
レミエルはセナに向けて氷刃を放つ
「セナ!あぶねえ!!」
セナの足に力が入る
次の瞬間、セナは高く跳び上がる。自身の身長の5倍以上の高さを
先程放ったレミエルの氷刃を避けるが・・・
「跳び上がって避けましたか・・・
ですが空中では身動き取れないでしょう」
追い討ちをかけるようにレミエルはセナに氷刃を放つ
セナは冷静に氷刃を見極める
「僕の能力は跳ぶこと、ただ『跳ぶ』だけではありません!」
セナは首飾りを身につけ
「【空間跳躍】!!」
空中にいる状態からさらに飛び上がり、氷刃を避ける
まるで空をステップしているかのように
「僕の能力【空間跳躍】は、空中であってもさらに跳ぶことができる能力です!」
セナはレミエルの作り上げた壁よりも高く跳び上がり
「リュウセイさん、刀です!」
リュウセイに向けて刀を投げる
そしてそれをリュウセイは受け止める
「助かったぞ!セナ!!」
リュウセイは刀を抜く
「だ・・・だめだ・・・。」
アースが意識を取り戻し懸命に声をだす
「あの刀、全然斬れないんだ・・・。大業物と言われているのに」
リュウセイの口元が笑う
「この刀、使うにはコツがいるんだよ」
リュウセイはアルテミスの前に立ち
「待たせたな、アルテミス!ここから反撃だ!」
リュウセイは刀を抜き、
アルテミスに放たれる氷刃を全て切り捨てる
その光景にアースは驚愕する
「な・・・!?俺の時は切れ味がすごく悪かったのに・・・!?」
「これは妖刀『天叢雲』 持ち主の怪我が大きいほど切れ味が増す
とんだじゃじゃ馬なのさ」
その性能に、セナは合点がいった
「刀の威力を最大限に活かすためにリュウセイさんは
常に瀕死の状態を維持してるってわけですか!?
ありえない!異常ですよ!!」
ハイリスクハイリターン極まりない性能
だが、人間離れの回避能力を持つリュウセイとは極めて相性のいい武器
流れは完全にこちら向き。このままいけばレミエルを倒せるかもしれない
次の一手は・・・
「セナ、逃げろ!!」
リュウセイは大声で指示をだす
「え!?逃げろって・・・?」
セナは少し困惑する
「アースやその仲間たちを連れて逃げろ!!」
「・・・やっぱり、僕は無力なのでしょうか?」
誰かの役に立ちたい、勇敢な男になりたいと思っても
力がなければ意味がないのだろうか・・・?
「違う!お前の強さは強大な敵を倒すことじゃない!
命や希望をつなぐ力だ!!」
「お前は、俺が思ってた以上に勇敢な『男』だったぞ!
刀、ありがとうな!!」
「命や希望をつなぐ・・・」
言われて初めて気づく自分の強み
今まで感じたことのない闘志が芽生える
「とは言ってもアースと仲間含め四人担ぐとなると・・・」
「俺が・・・二人担ぐ。体力もある程度回復した」
アースが立ち上がり、自身の仲間を二人担ぎ上げる
セナは残りの一人を担ぎ、その場から走り去っていった
「盛り上がってるところ悪いですが、もう戦いは終わりにしましょう」
レミエルの体が不気味な静寂をまとったかと思うと、徐々に異様な輝きを放ち始めた。
「私の能力は氷であらゆるものを創る【氷結創造】!
その能力さらに解放させましょう!!」
「能力の解放だと!?」
レミエルの全身に氷が鎧のように纏う
「何だ・・・ただ全身に氷を纏っただけか?
これなら俺の刀でも斬れそうだ!」
リュウセイは少し拍子抜けし、レミエルに斬りかかるが・・・
氷の鎧にはわずかな傷を与える程度だった
しかし、その傷もすぐに再生する
「な!?硬え!!これが氷の硬さなのか!?」
レミエルは笑いながら答える
「能力の解放 それは自身の能力を向上させることができます
基本の能力に加え、魔力は大きく消費しますが
性質をも変えることができるのです。」
続けてレミエルは喋り続ける
「私は氷の性質を変えて、より硬度を高めたのです。
これであなた達は私に傷ひとつつけることはできない。
そして・・・あなた達は私に近づきすぎました」
「絶望の花を咲かせましょう!
奥義!氷華輪廻!!」
「まずい!!」
レミエルを中心に巨大な氷刃が地面から突き出す。
先ほど繰り出してきた氷刃とは比でない。
その巨大な氷刃にリュウセイとアルテミスは吹き飛ばされ
数十メートルにも及ぶ氷刃達が辺り一帯を埋め尽くす
・・・・・・
レミエルは自身の出した氷刃の周りを徘徊する
「ふむ、少しやりすぎてしまいました。
これでは悪魔の子がどこに行ったのかわからないではないですか」
周囲一帯は氷刃で埋め尽くされており、周りの状況も把握でない状態だった
「ん?自身の能力で出したものは任意で消すことも出来るのですか?
やってみましょう」
『何か』と話している様子のレミエル
そして辺り一帯の氷刃が消えたところ、
リュウセイただ一人が地面に膝をついていた。
レミエルは少し困惑する
「む?悪魔の子がいないですね。死んだのでしょうか?
いやしかし、死んだのであれば反応があるはず。おそらく逃げたのでしょう」
「仕方ありません。そう遠くに行ってないはずだから探してとどめをさしていきましょう」
レミエルはそう言って場を後にしようとすると・・・
「待ちやがれ!!」
リュウセイが呼び止めるが・・・
レミエルはリュウセイに背を向けたまま口を開く
「いいですか?私はあなたに興味はありません。せっかく助かった命です。
大事にしてはいかがでしょうか?」
「アルテミスを狙うなら、俺はお前を倒す!」
「・・・よく言いますね。私に傷ひとつつけられない分際で」
「ああ、だから俺は能力を使う!!」
「能力ですか。だったらなぜ先ほど使わなかったのですか?」
「俺は魔力が少ないから頻繁に能力は使えないし、それも大した能力ではない。
だが、お前の能力の全貌がわかれば、倒すことができる!!」
リュウセイは居合いの構えをとり、周囲には白いオーラが集まってくる
「わかりました、いいでしょう。ならば確実にとどめをさして差し上げます。」
地面から氷が生えていき
氷の壁が二人を囲む
「いいことを教えて差し上げましょう。
この壁はどんどん狭くなっていきます。
あなたが回避能力に優れていても逃げ場がなくなれば避けようがないでしょう」
相手の不敵な笑みと共に、氷刃が一斉にリュウセイを目指して放たれる。鋭利な刃が風を切る音を伴い、まるで星の雨のように迫りくる。
攻撃を仕掛けながらレミエルは話す
「ふふ、どんな能力かはわかりませんが、使わせませんよ。
しかし、あなたも物好きですね。あの悪魔の子を守ろうとするなんて
あいつが死ねば、全てが丸く収まるのに」
「お前に・・・あの子の、アルテミスの何がわかる!?」
「あなたよりは知ってるつもりですよ。なぜなら私たちは・・・」
次第に狭くなっていく氷のドーム。リュウセイもついに逃げ場がなくなり
氷の壁に背をつける
「終わりです!強力な一撃で葬ってあげましょう!
硬度も極限まで高め、弾くことすらさせません!!」
自身の身長よりも一回り二回りも巨大な氷刃がリュウセイに放たれる
リュウセイは背後の壁に背を預け、一瞬だけ静止した。その瞳には鋭い光が宿り、相手の動きを正確に見極める。
「能力発動!【練気一閃】!!」
その瞬間、リュウセイの脚が壁を蹴った。リュウセイの体が矢のように前方へと放たれる。右手に握られた刀を突き出し、巨大な氷刃を両断する。
その勢いのまま刃先がレミエルの胸元を正確に捉え、氷の鎧もろとも貫通する。
「が、がはぁ!ば、馬鹿な!?」
レミエルの氷の鎧は砕け地面に落ちる
「俺の能力【練気一閃】は、居合いの構えをとりオーラを溜める。
そして溜めたオーラの分だけ攻撃の威力が増す。極めて単純な能力だ」
レミエルに与えたダメージは致命傷。しかし
「ぐ、ぐぐ・・・許しません。」
レミエルにはまだ余力があった
「くっ・・・!倒しきれなかったか!!」
レミエルの冷たい手がリュウセイの腕を掴んだ瞬間、
腕の表面に薄い氷が張り付き、その冷たさは骨まで届くようだった。
凍結は留まることを知らず、腕から肩へ、そして胸元へと侵食していく。皮膚の感覚が次第に失われ、冷気が内側にまで染み込むような鈍痛が全身を蝕む。
「はあはあ・・・もう逃しません。このまま全身を凍りつかせ、粉々に破壊して差し上げます」
リュウセイは必死に抵抗するがレミエルの腕を振り払うことはできなかった
「最後に聞かせてください。なぜあの悪魔の子を庇うのですか?
あなたを見捨て、逃げ出すようなやつですよ?」
リュウセイは瀕死になりながらも答える
「俺の目的のために・・・。そしてあいつが不憫だと思ったからだ。」
「そして・・・お前はひとつ間違いを言っている。」
「間違い?」
「アルテミスは逃げたんじゃねえ!
ずっと潜んでいたんだ!!俺の【影】に!!」
次の瞬間、リュウセイの影からアルテミスが飛び出した。
闇を裂くように舞い、伸縮自在の鋭い爪がレミエルを狙う。
「な!?」
驚愕する間もなく、アルテミスの爪は目にも止まらぬ速さで振り抜かれた。鋭い刃がレミエルを切り裂く
氷の鎧がない状態ではアルテミスの攻撃も通用する
「が、があああああ・・・。」
レミエルは地面に膝をつき、そのまま倒れる
今度こそ立ち上がることはできないだろう。
周囲にあった氷の壁も溶け出し、元のいた廃墟の街並みに戻る
レミエルは横たわりながら言葉を放つ
「ぐ・・・油断しました。
ですが、覚えておいてください。」
「我々天使はこれから何度も悪魔の子を討ちに立ちはだかります。
いつまで生きていられるか・・・。せいぜい頑張ってください・・・。」
そう言い残し、レミエルは
「消えた・・・。」
度重なる戦いも終わり、
息をつこうとすると
アルテミスは歩き出し、その場から離れていく
「待ってくれ!!」
アルテミスを呼び止める
「俺の名前はリュウセイ!
ある男を追って旅をしている!!そいつは必ずお前を狙ってくる!」
「その男に会うまで、一緒に旅をさせてくれないか!?」
アルテミスは少し黙った後・・・
「・・・好きにすれば?」
「はは・・・。」
リュウセイはアルテミスの元に走っていき・・・
ともに歩んでいく
リュウセイとアルテミス
この二人の出会いが、いずれ「二つ」の世界の運命を大きく変えていくのであった。
ーとある場所ー
会議室のような部屋
円を描くように机が配置されており、その周囲に数人が座っていた。
「レミエルがやられるとは・・・」
「申し訳ございません・・・。」
「まあいい、駒はまだ二つある。」
「我々がアルテミスを討つことにより、平和がもたされるのだ」
・・・・・・・・
これで一区切りです。
10万文字ほどの物語ですが、終始こんな感じです
後半で伏線回収やバトルも盛り上がる(つもり)ですが、現段階でつまらないようであればこの辺で切った方がいいと思います。
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