表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/24

第1話 悪魔

まさに絵に描いたような中世ファンタジーの街並み

世界の中心にある大都市 ステラ


石畳の道が入り込んでいて、古い時代の建物が立ち並び

市場からは色とりどりの物品が陳列され、騎士や商人、

様々な人々が交わっている。


そんな中一人の男性の叫び声が

街の外から響き渡る


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

「死ぬ!」

「死ぬ!!」

「死んでしまう!!!」


男性は大声を上げながら

街に向かって全力で駆ける


そして、街の門を抜けた途端、石に躓いてバランスを崩す


「あ゛!?」


その勢いのまま盛大に石畳の上を転がる


「がは!」

「ごほ!!」

「んがああああああああ!!?」


最後に派手な音を立てて見事に住宅の壁に激突。

壁が軽く揺れ、上から洗濯物がふわりと降ってきて、彼の顔に覆い被さる


そんなただならぬ状況に通行人たちが目を丸くして見ている。


「だ・・・大丈夫ですか?」

周囲の通行人たちが心配そうに近づき、その中の一人が彼に声をかける


「だ・・・大丈夫です。」

彼は小刻みに手を挙げながら返事をする


男の名前はリュウセイ

背は高く年齢は30前後ぐらいの外観で

髪は濃い橙色で腰ほどまで長く、三つ編みをしており


服装は白いシャツに黒いジャケット

そしてダークグレーのパンツ


左手には自身の身長ほどにもある長い刀を手にしていた。


リュウセイは全身に大怪我を負っており

先ほどの転倒とはまた別の傷を抱えていた


それを気に掛けた住民たちが声をかける


「ひどい怪我・・・何かあったのですか?」

「近くに凶悪な魔物が現れたとか?」

「いや・・・もしかしてアルテミスに襲われたのですか?」


心配そうにする住民たちとは裏腹にリュウセイは照れ笑いをしながら答える


「いや・・・お恥ずかしながらそんな大層なものではありません。

街の周りに出現する弱い魔物、ハネウサギにやられそうになって逃げてきました」


「・・・・・・・」


住民たちは少し黙ったあと


「あっはっはっはっはっは!」

「あんな小動物にやられそうになるなんて!」

「今時めずらしいよ!」


手のひらを返したかのように住民たちは笑い声を上げる


「なんだよ、心配して損した」

「じゃあね、おじさん。またやられないようね」


住民たちはその場を後にして立ち去る


「全く・・・ひどい人たちですね。

大怪我してるっていうのに・・・」


リュウセイが視線をおろすと一人の子供がいた


「君は?」


その子供は特徴的な帽子をかぶっており、そこから淡い青色の短い髪がはみ出ている

背格好に合わない大きめの上着に、膝が出ている半ズボンを履いている。

腰には背丈の割には大きめの剣を腰にかけており、

瞳も顔も丸く、とても可愛らしい見た目だった。


「自分は・・・あなたと同じ旅の者です。

それより、いくつか回復薬を持っているので差し上げましょうか?」


思いがけない施しにリュウセイは笑みを浮かべる

「ありがとな、かわいい嬢ちゃん。でも俺は大丈夫だ」


「じょ・・・嬢ちゃん・・・?」

リュウセイの言葉にその子供は少し不機嫌になる


「あ、あの・・・よく間違われるのですが、

僕は『男』です!!」


その言葉にリュウセイは目を見開き驚きの表情を浮かべた

「え!?男!?

そんなかわいい見た目してるのに!?」


「む〜・・・!」

その少年は眉をひそめてリュウセイを少し睨む

そしてリュウセイはその少年の瞳の奥に力強い意志のようなものを感じた


「・・・いや、笑ったりしてすまなかった。

お前も戦士だったんだな。俺はリュウセイ。君は?」


リュウセイの突然の態度の変化に少し戸惑いつつも

少年は答える

「僕は・・・えっと・・・

ゆう・・・かんな男になりたいセナと言います」



「なんだその前置き・・・」

多少不自然な返答にリュウセイは苦笑いをする



「見つけたぞ!変な帽子のガキ!!」

会話する二人に横から声を上げる男が現れる


男は大柄で巨大な斧を背負い

バンダナに髪は立てており、上半身は裸の上に黄色い上着を羽織っている。


そして後ろには彼の仲間であろう人物が三人ほど立っていた


大男の登場により、セナの表情は強張ってしまう

「あ・・・あなたは・・・」


「その首飾り!俺に渡してもらうぜ!!

弱いお前が持っていてもしょうがねえ!

冒険者ランキング4位の俺、アースが有効活用してやるよ!


これで・・・今度こそアルテミスを討つ!!」


セナは恐怖を感じつつも言葉を返す

「こ・・・断ります!これは大事な人からもらった大事な首飾りなんです!!

あなたには渡しません!」


アースの目つきが鋭くなり、背負っていた斧を引き抜く

「じゃあ!この世界のルール通り無理やりにでも奪ってやるよ!」


実力行使・・・だとすれば


「待てい!」

リュウセイが声を上げる


「なんだあ・・・てめえ・・・?」

アースはリュウセイを睨みつける


「なんだなんだ?寄ってたかって・・・

暴れたいなら俺が相手になってやるよ」


リュウセイの言葉にセナはあわてふためく

「な・・・!?ま、待ってください!この人は関係ありません!!

戦う必要もありません!逃げてしまえば・・・」


「逃げるって・・・どこへ?」

リュウセイの言葉に、セナが振り返ると

アースの仲間たちが退路を塞いでいた


「アースって言ったな、お前

俺が相手になってやる」


リュウセイの発言にアースは激怒する

「突然出てきて何言ってんだてめえ!

・・・!?いやまて・・・!お前・・・その刀・・・!?」


アースが目についたのはリュウセイが手にしている刀


「お!知ってるのか?お目が高いな

超大業物『天野叢雲』だ」

リュウセイは見せつけるように刀をかざす


「なんで・・・無名のお前が持ってるんだよ!」

超大業物は、世界に数人しか持てないと言われている


「『ある人』から譲り受けてね・・・

じゃあこういうのはどうだ?お前たち四人まとめて俺が相手にする

お前たちが勝てば刀と首飾りをやろう

だが!俺が勝てばもうこの子には手出しさせんぞ!!」


アースたちが追っていたのはセナのもつ首飾り

しかし、第三者の介入に多少苛立たしい感情が湧き上がるも

自身は世界でも上位に立つ存在

さらには四人がかり。負けるはずがない


それどころかリュウセイのもつ刀を手にするチャンス

条件を飲まない理由がない。アースは少し黙ったあと


「・・・いいだろう。だがこれは勝負前の『約束事』!

逃げるのも、周りに助けを求めるのもナシだ!!」


「ちょ・・・ちょっとリュウセイさん!」

セナは慌てるがリュウセイは余裕の笑みを見せる


「大丈夫だ。離れてろ」


・・・・・・・


アース、そしてその仲間たちが

リュウセイを囲む


「・・・」


多少の沈黙のあと

最初に攻撃を仕掛けたのはアース


「おおおおおおおおおおお!!!!」

大声を上げながら巨大な斧を振り上げ、重く鈍い一撃が頭上から振り下ろされる。その圧倒的な威力は地面を割らんばかりだった。

だがリュウセイは瞬時に後方に跳びその一撃を回避する。


続けざまにアースの仲間が槍でリュウセイに突きを仕掛けるも、手にした刀で軌道を逸らす

さらに別の仲間が短剣で切り掛かるも身体を低く落とし、わずかな間合いで短剣をかわす。


三人がかりで攻撃をし続けてもリュウセイは傷一つつくことなく全ての攻撃を捌く。

その異常な反応速度にアースたちは戦慄する

「な・・・なんだこいつ!?なんて回避能力だよ!?」


「こいつ、本当に人間か?」

短剣を構える男の声がわずかに震える。


「ふざけるな……今のを全部避けたってのかよ!」

アースは顔を歪める。その目には怒りとともに、隠しきれない動揺が浮かんでいた。


人間離れの見切りの能力、そして世界に数人しか持たないと言われいる大業物を手にしている

「お前・・・まさか・・・!?」

アースたちの表情は焦りで曇り始めていた。これまで培った戦場の経験も、己の腕前への自信も、目の前の男によって無残に崩されつつあった。


リュウセイは高く飛び上がり、アースたちと距離をとる


「ならば広範囲攻撃だ!俺の鞭は音速を超える!」

四人目のアースの仲間が鞭を振り下ろす。

その瞬間、リュウセイの刃が閃く


「・・・な!?」

気がついた時には鞭の先端部分が断ち切られていた


人間離れの神業にセナは息を呑む

しかし、一つの疑問が湧く


「リュウセイさん・・・すごい・・・。

でもなんであんなに避ける能力があるのに体は傷だらけなんだろう?

それも弱い魔物たちにやられたって・・・」



相手の力量を測ったリュウセイは一気に勝負を決める


「!?」

気づいた時にはもう遅い

瞬時にアースの懐まで距離をつめる。リュウセイが刀を抜こうとした

その時・・・


「え゛っ!?」

足元が滑り出す。

街に入った時にぶちまけてしまった洗濯物を踏んでしまい

リュウセイは盛大に転んでしまう。


その隙をアースが見逃すわけがない。巨大な斧がリュウセイに振り下される


「だああああああああ!タンマタンマ!!」


・・・・・・・・・・・・・・


中心都市ステラ

その都市のさらに中央にある広場

そこにリュウセイとセナは魂が抜けたかのように黄昏ていた


「取られ・・・ちゃいましたね・・・

僕は首飾りを、リュウセイさんは刀を・・・」


「ああ・・・」


程なくしてリュウセイはセナに頭を下げる

「すまん!俺が負けてしまったせいでお前の大事な首飾りまで失ってしまった!!」


錯乱するリュウセイを宥めるようにセナは優しく声をかける

「いえ・・・リュウセイさんのせいではないですよ。

きっと僕だけだったとしてもいずれ首飾りは奪われていたと思います。」


「・・・・・・・」

「・・・・・・・」


二人は少し黙ったあと、リュウセイは小声で呟く

「リベンジだ。」


「え?」


「リベンジだよ!あのアースって奴らに!!

そして刀と首飾りを取り戻す!!」


不慮の事故により敗れてしまった自分

怒りや興奮は収まらない

ただ、アースたちを追うなら一つの疑問が湧く


「リベンジはともかく、アースたちが今どこにいるかわかってるんですか?」

「知らん」

リュウセイは即答する


「・・・」

案の上の返答にセナはため息を吐く


「まずはメシだ!メシに行くぞセナ!!腹が減っては戦はできん!!」

「ま、待ってください!僕はそんなにお腹減ってないですよ!」


リュウセイはセナを引っ張るように半ば無理やり二人は飲食店に向かう


・・・・・・・・・


飲食店 『ミツボシ』


店内は微かに足音が響き、天井から下がる暖色のランプが店内を優しく照らしている。テーブル席に並ぶ客たちの間からは、食器が触れ合う小さな音や、談笑する声が混じり合っている。


二人は適当に空いている席に座ったところ、

店の奥から店主と思われる大きな額と髭が特徴的な男性に声をかけられる

「いらっしゃい、何にします?」


「俺は海鮮パスタで」

「じゃあ僕はシーザーサラダON半熟卵で・・・」


二人は料理を食べている間、何気ない会話を始める


「なあセナ、お前はなんで旅をしているんだ?」


「僕は・・・えっと頼まれたお使いをしている最中です。

地元の人たちからお守りとして首飾りをもらったのですが、道中アースに目をつけられて逃げている最中でした。そこでリュウセイさんに出会って・・・

リュウセイさんこそどうして旅をしているんですか?」


「俺は、『ある人物』を追っている。そいつは狡猾で、易々と姿は表さないと思うが・・・」


「そうですか・・・。あれ?リュウセイさん、話は変わりますけど怪我はだいぶ治ったんですね。」

「時間経過すれば大概の怪我は良くなる」


「そういうものなんですか?」

セナは思わず苦笑いをする


二人の会話が落ち着いたところ、

周りの客たちの会話が耳に入ってくる


「なあ、誰がアルテミスを倒せると思う?」

「やっぱり冒険者ランキング上位の誰かじゃない?

ほら、イリスを倒したのはランキング2位のオリオンだし。今は行方不明だけど」


「でも上位の人たちって色々クセのある奴らばっかりだよな」


「ああ、

ランキング1位のナガレは引退

3位のギンガはアホって言われてる

意外と4位のアースがアルテミスを倒しちゃうんじゃない?

さっきすれ違った時、新しい武器を手に入れて『アルテミスを倒す』って意気込んでいたし」



「「アース!?」」


リュウセイとセナは勢いよく立ち上がり

そしてその客に詰め寄る

「アースはどこにいるんだ!?教えてくれ!!」


突然言い寄られて客は少し慌てる

「な、なんだあんたら!?

アースを見かけたのは1時間ぐらい前だから今はだいぶ離れているんじゃないか?」


1時間前 リュウセイがアースに敗れた時間帯とほぼ同じ

結局、大きな手がかりとはなっていない

「結局振り出しですね・・・」


二人が落胆しているところ



「アルテミスだあああああああああああ!!!」

店外から大きな声が響きわたる


「街の外れの廃墟に、アルテミスがいた!」

「みんな逃げろおおおおおおおおおおおお!!!」


その叫び声と同時に店内は急に緊迫した雰囲気となる


「マジかよ!逃げろ!!」

「また襲われたらたまったもんじゃねえ!!」


店内にいた客たちは脱兎のごとく一目散に店から飛び出す

セナもリュウセイに訴えかける

「リュウセイさん、僕たちも逃げましょう!」


しかし、リュウセイは緊迫した表情ながらも口元は笑っていた

「アルテミス・・・こんなに早く会えるなんてな・・・

セナ、俺はアルテミスのところに行く」


リュウセイの言葉にセナは驚愕する

「な!?正気ですか!?

もしかしてリュウセイさんが追ってる人物ってアルテミスですか!?」


「正確には違う。俺の目的のためにあいつは必要なんだ」


「アルテミスがどれだけ危険か知っているんですか!?

見た目は少女ですが、

目にも止まらぬ早業で多くの冒険者たちを一瞬で仕留める、『悪魔の子』と呼ばれているんですよ!!」


慌てるセナに対してリュウセイは落ち着いた口調で答える

「なに、俺はアルテミスを倒すわけじゃない。ただ会って話がしたいだけなんだ」

「それに、アースたちはアルテミスを倒すと言っていた。アルテミスの元に行けばアースたちに会えるかもしれない」



リュウセイの言ってることは筋が通っていた。

まず自分たちの目的がアースに奪われた刀と首飾りを取り戻すこと


セナは少し黙ったが

「・・・わかりました。でしたら僕もついて行きます!」

二人の意見は合致し、アルテミスが現れたと言われる町外れの廃墟に向かおうとするが、

一つ疑問に思うことがあった


「リュウセイさん、武器なしの丸腰状態で行くのですか?」

今のリュウセイは完全な手ぶら状態

アースやアルテミス、もしかしたら他に危険な敵がいるかもしれない場所に向かうには無防備すぎる


「それもそうだな、セナ、腰にぶら下げている剣、俺に貸してくれないか?」


「い、良いですけど僕の剣は安物でリュウセイさんが持っていた刀とは品質はかなり低いですよ」

セナの腰に身につけている護身用の剣をリュウセイに渡した


店に残ったのはリュウセイとセナ、そして・・・


「なあ、店主のおっさん、あんたは逃げないのか?」


リュウセイの問いに店主からの返答は

「いらっしゃい、何にします?」


「あ、ああ、いや、なんでもない・・・」

リュウセイは何かを察したように店を後にする



・・・・・・・・・・・・・


ー町外れの廃墟ー


中心都市の賑わう街中とは対照的に、

まるで大地に忘れ去られたかのようにひっそりと横たわっていた。20軒ほどの建物が並んでいるが、どれも崩れ、傾き、かつてそこに人々が暮らしていた面影はほとんど残っていない。


リュウセイとセナは息を殺しながら廃墟の街中を歩いていると数人の人影があった。

それは、忘れもしない。アースとその仲間たち


「見つけたぞ・・・アース」


そして、彼らの視線の先には一人の少女


その少女は鮮やかな赤い髪が風に踊るように揺れ、腰のあたりで左右に分けられたツインテールが特徴的だ。右目は長い前髪に隠れて見えないが、露わになった左目の鋭い視線が、見る者全てを射抜くようだ。


だが、最も目を引くのは彼女の右腕だった。

肘から先の右腕は、他の部分と明らかに違っていた。肌がどす黒く変色し、不気味な艶を放っている。生命を侵食したかのような異質さがそこにあった。


「あれが・・・悪魔の子 アルテミス・・・。」

初めての長編

構成の難しさを痛感しております。

第1話だけ書き直す可能性が高いです


読んでくださってありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ