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第18話 家族

一番好きなエピソードです

ここまで読んでくださった方がいれば嬉しいです


瀕死の星野に寄り添うアルテミス。

星野の呼吸は浅く、声はかすれていたが、それでも涙を流しながら必死に言葉を紡ぐ。


「アルテミス・・・逃げましょう・・・!」


「逃げる・・・?」


アルテミスは僅かに眉を寄せた。


「ええ・・・私の【物質転送】でここから遠くへ・・・」

「あいつには勝てない・・・あなたまで失いたくない・・・!」


震える声で訴える星野。しかし、アルテミスの瞳には迷いはなかった。


「それはできない。」


「アルテミス・・・どうして・・・?」


「オリオンは・・・まだ何か隠しているはずだ。もしそうなら——リュウセイは負ける。」

「それに・・・イリスを助けないと。」


「イリスは・・・『いつか』私が助けるから・・・!」


星野は必死に説得しようとする。だが——


「イリスはきっと、『今』助けてほしいと思ってる。」


アルテミスの声は静かだったが、確信に満ちていた。


「なんとなくわかるんだ。イリスは・・・私じゃなきゃ助けられない。」


「星野も言ってただろ? 家族は、大事にしなきゃいけないって。」


「それは・・・」


星野の涙は止まらない。


「あなたまで失ってしまったら・・・世界中で争いが起きてしまう・・・。

そして・・・私は、謝り続けなければならない・・・。

イリスにも、アルテミスにも・・・そして、世界中の人たちにも・・・!」


「ごめんなさい、アルテミス・・・。私はあなたたちの親のつもりだったのに・・・」

「何も・・・何もしてあげられなかった・・・。」


「私は・・・自分の子供も、以前に作ったAIも・・・あなたたちにも・・・不幸な思いをさせてしまった・・・!」

「やっぱり私は・・・『親』になんて、なってはいけなかったんだ・・・!!」


その言葉に、アルテミスは静かに首を振る。


「それは違うぞ、ホシノ。」


「・・・え?」


「私には、『親』というものがなんとなくわかる。

きっと、幸せに、正しく導いてくれる存在なのだと思う。」


「イリスも、私も・・・間違ったことをした時は、優しく叱ってくれただろ?」


「喧嘩することもあったけど・・・三人で過ごした日々・・・

すごくすごく、幸せだった。」


「ホシノは・・・私にとって、とってもとっても大事な存在なんだ。

イリスだって・・・きっと、そう思ってる。」


「アルテミス・・・」


星野の頬を伝う涙。

それは悔しさからなのか、悲しさからなのか——

それとも、嬉しさからなのかはわからない。


だが、星野の体は限界を迎え、次第に薄れていく。


「最後に・・・お願い・・・聞いてくれる・・・?

もう・・・逃げようなんて言わないから・・・

抱きしめ・・・させて・・・!」


「・・・ああ。いいぞ。」


アルテミスがそう言うと、星野は力の限り抱きしめた。

きっと、これが触れ合える最後の時間。


「うっ・・・! 愛してる・・・!! アルテミス・・・!」

「お願い・・・消えないで・・・!」

「そして・・・イリスを・・・助けてあげて・・・!」


「当然だ・・・。」


アルテミスは優しく、けれど力強く答えた。

「そして私も、大好きだ。ホシノ・・・。」


その瞬間、星野の体は光の粒となり、消え去った。


現実世界——


ゲーム画面の前で、星野は涙を流し続けていた。


・・・・・・・・・・・・・・・


「うおおおおおおおおおお!!」


冒険者達と戦い続けるリュウセイとアース

アースは二人の冒険者と戦っており


リュウセイの目の前には四人の冒険者と剣を交えており

そして遠距離からの攻撃も襲いかかる


オリオンも指からレーザーを発射し攻撃するが

リュウセイは避け、別の冒険者に命中し消滅する


「お前・・・味方もろとも攻撃するのか・・・!」


「アルテミスさえ奪ってしまえばどうでもいい。

よし、やれ!」


オリオンの指示のもと、冒険者の一人は遠距離から右手を前にだし叫ぶ

「能力【空間爆破】!」


「な!?」


リュウセイ含め3人の冒険者もろとも巨大な爆発に巻き込まれる

咄嗟に気づいたリュウセイは岩陰に身を隠し、ダメージを抑える


爆発に巻き込まれた3人の冒険者は消滅し

リュウセイも多大なダメージを負っていた。他勢に無勢

状況は圧倒的に悪い


だが、それを見ていたオリオンの仲間達にも不信感が募る


「なあ・・・俺たちのやってることって正しいのか?」


不正の限りを尽くすオリオン


「ああ・・・」

金や名声のためにオリオンに協力したが

死に物狂いに戦うリュウセイやアルテミスを見て

自身の行動に疑問を持つ


・・・・・・・・・・


多くの冒険者を相手に防戦一方のリュウセイ

オリオンは確信する。今のリュウセイなら倒せると


「よし!俺もそろそろ祭りに参加するか」

オリオンは背中の大剣を抜き、リュウセイのところに向かおうとするが


「【地烈衝波】!!」


「な!?」

オリオンの地面から衝撃波が地面を伝って地上に現れる


「があああああああ!?」

オリオンも思わぬ一撃に思わず面を喰らう


攻撃したのは、オリオンの行動に疑問を冒険者だった

「オリオン!やっぱりお前の行動に賛同できない!

お前を止める!!」


オリオンに反旗を翻したのは一人だけじゃない

四人の冒険者がオリオンに立ち向かう


「なんだあ・・・てめえ・・・?」


反逆した冒険者達は一斉にオリオンを攻撃するが・・・


「【実体障壁】能力の解放!

バリアの形状を球状にし、俺の周囲に出現させる」


オリオンの周囲には半透明の球状のバリアを囲い、冒険者達の攻撃を防ぐ


「な!?」

「バリアだと!?」

「こいついったいいくつ能力を持っているんだ!?」


「無駄なんだよ。俺を倒すのは」

オリオンの指先にレーザーが発射され、反抗した冒険者達は消滅する


アースと戦っていた冒険者二人もやられ、消滅していた

オリオンと手を組んだ冒険者達は残り10人


「ちっ!あの邪魔さえなければあの剣士は確実に倒せたってのに・・・」


周囲の冒険者に呼びかける

「俺のバリアは絶対無敵だ

俺ごと撃っても構わん。あの長髪の剣士を仕留めろ」


そう言ってオリオンはリュウセイに向かう


「オリオン!」


リュウセイは刀を抜きオリオンに斬りつけるが、バリアには傷ひとつつかない


「せっかくだからおまえの名前も覚えてやるよ!

・・・リュウセイか!無念を抱えながら消えろおおおおおお!」


オリオンの能力は把握しているだけでも


肉体の強化・修復

物質や自分の体を浮かす

レーザーを放つ

バリア


がある。それでもリュウセイは臆することなくオリオンに立ち向かう


しかし、リュウセイの攻撃は一つも通らず

オリオンのレーザー

周囲の冒険者の援護攻撃


リュウセイはどんどんダメージを負っていく


アースも周囲の冒険者の相手に手が回らない状態

少しでも攻撃を自分に向けさせ、リュウセイへの被弾を減らすだけで精一杯


だが、リュウセイは残りわずかな体力でも攻撃を躱し続ける

それにオリオンは痺れを切らす


「ちくしょう・・・どんどん当たらなくなってきやがった・・・!

おい!!」


声をかけたのは一人の冒険者


「能力【衝波咆吼】!」

両手を前に出し、リュウセイに向け、衝撃波を放つ


「な!?」


オリオンはバリアを解除し、捨て身でリュウセイの腕を掴む


「へへ、逃さねえ・・・」


襲いかかる衝撃波でオリオンとリュウセイ諸共教会内に吹き飛ばされる。


ー教会内ー


「うおおおおおお!!!」


リュウセイはオリオンに斬りつけるが、強化された体には攻撃もなかなか通らず

傷はすぐに再生する


「無駄だ。今ごろ外で大爆発を起こす準備をしている

どこに起きると思う?躱せるか?躱せた後も倒壊する建物から逃げられるか?

リュウセイ、お前は終わりだ。」


オリオンは再びバリアを張り、空中に浮遊して天井から逃げていった

そして・・・


「【空間爆破】」


巨大な爆発と共に教会は大きな音と共に崩れ落ちる・・・

「終わりだ」


その刹那

リュウセイは、一つの過去を思い出す——。


……15年前。


「……お兄ちゃん! お兄ちゃん!!」


「どうした、月美?」


「足のケガ、もう良くなったの?」


「ああ……でも、まだ松葉杖は必要かな。」


「じゃあ、また一緒に街で買い物できるね! ぬいぐるみが欲しい!!」


「まったく、お前は……。」


・・・


「えへへ、お兄ちゃん、ありがとう! やっぱり優しいね!!」

「もし生まれ変わったら、またお兄ちゃんと一緒にいたいな!!」


「生まれ変わったらって……そんなこと言うなよ。」


・・・


「そこの君! 危ない!! 鉄骨が落ちてくるぞおおおお!!」


「——お兄ちゃん!!」


「月美!? ……っ!」


ガシャアアアアアン!!!


「た、大変だああああああ!!」

「女の子が鉄骨の下敷きになったああああああ!!」


「つ、月美……っ!!」


・・・・・・・・・・


「・・・ご臨終です。」


「そんな・・・! 月美は・・・幼い子供なんですよ・・・!!」


「なんで・・・なんでこんな・・・。」


「俺が・・・俺が、あれを避けられたら——

月美を・・・死なせなかったのに・・・!」


・・・・・・・・・・


ケガが治った後、俺は何かに取り憑かれたように回避の訓練を始めた。

砂利を空に放り投げ、それをすべて避ける・・・そんな無謀な練習を。

何回も、何百回も、何万回も、10年以上も・・・。


・・・こんなこと、したって無駄だってわかってる。


だけど、やらずにはいられなかった。

避けられなかった自分が、何より許せなかったから。


見切りの能力なんて、現代では何の役にも立たない。

せいぜいゲームに勝てるくらい。


『ステラ・ストリア』でランキング1位になったところで、虚しさは消えなかった。


そんなある日——。


「紹介しましょう! 『イリス』と『アルテミス』です!」


ゲーム内に現れた少女、アルテミス。

——北欧神話に登場する『月の女神』と同じ名前。


「・・・アルテミス・・・月の女神・・・?」


「——月美・・・?」


『生まれ変わったら、またお兄ちゃんと一緒にいたいな!!』


気がつけば、俺はアルテミスと月美を重ねていた。


わかってる。

こんなの、ただの妄想だってこと。

だけど・・・気にせずにはいられない。


アルテミスは狙われている・・・。


そうだ・・・守るんだ・・・俺が。


——そのために、ひたすら回避の訓練を積んできたんだから。


・・・・・・・・・・・・


「さて、残りはアルテミスと雑魚だ」

倒壊する教会を背に勝利を確信するオリオン

だが、視界に入った冒険者達は崩れた教会跡を見て唖然としていた


オリオンが恐る恐る振り返ると・・・


教会跡から立ち上がってるリュウセイの姿があった

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