もし僕がラブコメの主人公なら
いつもと変わらない朝。
幾度となく鳴り響くアラーム、寝癖のついたボサボサの髪、まな板を包丁で叩く音、垂れ流されてるテレビのニュース、いつも通り制服に袖を通し、いつも通りの学校への道のり。
そう、いつも通り…の、はずだった。
「そこどいて〜〜!!」
ガタガタと音をたてながら、とてつもない速さで自転車に乗った黒髪ショートの天真爛漫!といった感じの美少女が今!僕…の前を歩いていたイケメンとぶつかる。
「うぉわっ…!」と少し情けない声を出したイケメン君とちょっと心配になるレベルの転び方をした美少女ちゃんとが見つめ合って、「今パンツ見たでしょ!」とか言っているのを、僕は傍観していた。
(僕には関係ない…無視して早く学校に…)
ふと、美少女の膝に目をやると、擦りむいた傷から血が出ていた。あらまあなんということでしょう僕のポケットには何故かちょうどいい大きさの絆創膏があります。さてどうするべきでしょうか!その答えは!
さらっと横を通って自然な感じでポケットから絆創膏を落とす!これがベスト。
「あの〜これ落としてるけど…」
とイケメン君…よく見るとたしか同じクラスの…浜城優也…?だったか?多分。
(いや話しかけんなよ〜なるべく関わらないようにしてたのに〜)
「あっそれ使っていいですよ〜」
と早口で言ってそそくさと退散する。これでよし。僕はそのへんにいるただのモブキャラです!
少し遠のいたところから「ありがとう!」と元気な男の声。振り返ってみると、美少女ちゃんも軽く会釈をしていた。というか、見覚えのない美少女…だが僕達と同じ制服を着ていた。まさか!転校生…?なんということだ!正にラブコメの王道的な出会い!彼はきっと彼女との紆余曲折を経て、ハッピーエンドを迎えるのだろう。僕はその物語に背景として映る名前すら無い…
(モブキャラ…か)
…ふと、考えることがある。
もし…僕がラブコメの主人公なら…彼と彼女のような…劇的な出会いがあるのだろうか。
身長は160ちょい、学力は平均より少し上、趣味は読書、部活は文芸部、友達は0、ラインの通知は公式ラインか家族のみ、いつも教室の隅で本を読んでる。顔は…みなまで言うな、下の上…いや下の中だ。そう!こんな僕こそが!潮波高校2年C組出席番号6番!影野翔!苗字が暗いから名前だけでもと明るい名前をつけられた可哀想なプロのモブキャラです!
窓際の席はいい、夏は風が入ってくる。日差しを直に食らうことになるがそれをかき消すこの心地良い風が、僕を優しく包み込む。
「それではホームルームをはじめま〜す」
と元気な声で担任の朝宮先生が声を掛ける。
「突然ですが今日は転校生を紹介します!」
わかってるぞ僕は。この後はあの美少女が来て、「あー!!君は朝にパンツ見てきた…変態!」「ちが…見てねえよ!」みたいなことを言って彼らのラブコメの幕開けとなるのだろう。
「それでは入ってきてくださ〜い」
ガラガラと戸の開く音がして、今朝にも見た美少女が入ってくる。髪をなびかせながら入ってくる彼女はやはりラブコメの正ヒロインのようで…
「あ~!」
ほら来た
「朝に絆創膏渡してくれた前髪長い人!」
ん?…ん!?!?
「え僕!?」
と自分を指差してみると、コクコクと首を縦に振る。
「あら二人は知り合いなの?じゃあ影野君の席の隣も空いてるし美咲ちゃんは彼の隣ね♪」
と言う満面の笑みの朝野先生。ふと見るとクラス中がなんでお前が…みたいな顔をしている。僕もそう思っている。
「私の名前は佐藤美咲!今日からよろしくね!影野君♪」
(な…ななな、なんでこうなったぁ〜!?)
僕は!!ラブコメの!!主人公じゃなーーい!!
初めて書いてしかも思いつきであまり時間もかけずに書いたのでこれがいいものなのかとか書き方合ってるのかとかなんにもわかりません。忌憚の無い意見を下さい。
僕は主人公陰キャで3.4人くらいのヒロインといろいろある感じのラブコメが好きなので、これからも魅力的なヒロインを描ければなと思っています。