フルスイング魔法使い
今日もいつも通りの一日が始まると思っていた。
「いらっしゃいませ」
勢いよく開けられたドアから入ってきた青年にその声はかき消された。
「僕を魔法使いにしてください」
「え?」
「僕を魔法使いにしてください」
「大丈夫、聞こえてるから」
「よろしくお願いします」
「えーっと、此処が何の店か分かってる?」
「はい、カスタール魔道具店ですよね」
「魔法使いになりたいなら、魔法学院に通えばいいだろ
なんでうちに来たんだ?」
「先輩がここに行ってみろって」
「先輩?」
「はい、僕は冒険者をしてるんですけどそこで知り合ったクロスナ先輩です」
「あ~、あいつか」
「これを渡してみろって言われました」
そういって一通の手紙を渡された。
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お前がこの手紙を読んでいるってことは無事に到着したみたいだな。
そいつもお前と同じようにMPだけが多いタイプでINTが低くて学院ではやっていけないだろう
一つお前と違うのは見ての通り冒険者をやっていられるくらいには体が出来てる。
そこでアレが使えるんじゃないかなと思ってお前を紹介した。
お前が断念したアレをコイツに託してみないか?
倉庫で眠らせるには惜しい代物だろ?
クロスナ
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「君の名前は?」
「チップです」
「チップ君はこの手紙の内容を知っているか?」
「いいえ、店の場所と手紙お受け取って後はお前次第だって言われました」
「相変わらす適当な奴だ」
「僕は魔法使いになれますか?」
「そうだな、とりあえずこれに手をのせてみろ」
「魔力を量る道具ですね」
「ああ、手紙には書いてあったが一応確認してからだ」
自作の測定器に手をのせてもらい確認する。
ギルドに置いてある物より詳しく情報が取得できるようにしてある。
確かに手紙に書いてあった通りのようで俺ほどではないがMPが多く、INTがかなり低いこれでは初級魔法すら発動に苦労するだろう。
「どうですか」
「ひとつ言っておく、魔道具店で出来ることは魔道具を売ることだけだ」
「ダメ…ですか」
「出来ないとは言っていない、だだし普通の魔法使いになれないがいいか?」
「はい」
「ちょっと待ってろ、取ってくるから」
そういって倉庫に封印していたアレを取り行き、専用のケースごとカウンターへ置いた。
「これが、チップ君を魔法使いにする魔道具だ」
「え?これってバットですよね」
「よかった、知っていたか
これは異世界から伝わった野球というスポーツで使う道具を元にした魔道具だ。
野球はやったことが有るか?」
「少しだけなら」
「バットの振り方さえ分かればいい」
「それで殴るんですか?」
「一応そういう使い方も出来なくはないが、本命は持ち手のところにあるこの穴だ」
「この穴ですか?」
「ああ、クロスナが使っている剣を知っているだろ
あれの基になった魔道具の一つだ」
「え、もしかしてあんな風に魔法剣を使えるんですか?」
「あれは特別性だから、これにそこまでの機能は無い」
「…そうですか」
「だが、これにはもっとシンプルな機能を付けてある
持ち手にセットした魔石の属性に合わせて、バットを振った人間のMPを使って魔法を打ち出すというものだ」
「すごいです」
「ただ、欠点があって軽く振っても魔法は発動しない
そして、スイングの力強さによって発動する魔法の威力に差がある
あとは、打ち出した魔法がボールの形でバットの軌道にそった場所にしか飛ばない」
「どういうことです?」
「使ってみたほうが早いから、ちょっとついてこい」
そういって店の裏の試験場に案内し的を設置する。
「これから使い方を教える」
「よろしくお願いします」
「まずは、魔石をセットする
今回は、安全に配慮して水属性の魔石をセットした
あとは、魔法を使う意思を持ってバットを握って構えると球状魔力が形成されるから、それをバットで打つ」
説明しながらバットで魔力球を打つ、打ち出された魔力球は俺の魔力を使い成長し魔法の水球となって的を目掛けて飛んでいくが僅かにずれて試験場の結界に当たり弾けた。
「外れたか
こんな感じで慣れないと目標に当てるのも難しい
これを戦いながら行うとなれば、俺には想像も出来ない」
そう言って諦めさせようと思いながら振り返ると、目をキラキラと輝かせながらこっちを見ていた。
「やってみてもいいですか!」
嬉しそうにバットを受け取り、スイングモーションに入るチップ君は野球の経験を少しだけならといっていた割には、妙に様になっているように感じた。
そして、軽く振ったように見えたスイングから打ち出された魔法が見事に的の中心をとらえた。
確かめるように二度三度と繰り返しながら、スイングスピードを上げていく。
それに合わせて魔法の速度や大きさ硬度が増していく、そしてすべてが的を外れることなく命中する。
そして最後に、こちらからも分かるほどの気合の入ったフルスイングを行った。
目にもとまらぬ速さで打ち出された巨大な水球が的を破壊し、弾けて雨を降らせた。
まさかあの的を壊すほどの魔法を発動させるとは思わなかった。
ずぶ濡れになりながら感極まった様子のチップ君がこちらに駆け寄ってきた。
「すごいです、先輩の言っていて通りだ!」
「どうやらその魔道具は、チップ君を選んだみたいだね」
「選ぶですか?」
「ああ、魔道具師の間で言われている言葉さ
『人が魔道具を選ぶんじゃない魔道具が必要な人を選ぶんだ』と
そういった魔道具は、製作者の想定していた以上の効果をもたらすといわれている
俺には、そのバットを本気で振っても君の半分以下の魔法しか発動できなかったよ
ただし、選ばれたからと言って慢心する事の無い様にそうした冒険者は早死にするし、魔道具にも見放される」
「見放されるですか」
「肝心な時に発動しなかったり、効果が想定していたものより低くなったり様々だな」
「それは手入れを怠っているからじゃないんですか?」
「そうかもしれないが、そうじゃないかもしれない
慢心せず手入れを心がけて愛用すれば、どんな道具も答えてくれる
感謝と誠実さを忘れない皆に憧れられるような冒険者になってくれると嬉しい」
「はい、努力します」
「それでは、お会計の時間だ」
「そういえば値段聞いてなかったですね
こんなすごい魔道具、僕に払えるのかな」
「バットは出世払いでいい
まずは専用の魔石を各属性分でこんなところだ」
「こんなに安くていいんですか?」
「ああ、魔石は消耗品だから定期的にメンテナンスと一緒に買い来てくれれば大丈夫だ」
「分かりました」
「その魔導バットにふさわしい持ち主になってくれれば、作ったものとしてはこれ以上ない喜びだ」
「心がけます!ありがとうございました」
そういって金貨数枚を払って店を後にするチップ君を見送った。
もしかしたら自分にもあったかもしれない未来が、彼を通して観ることが出来たらと願いながら。
ここはカスタール魔道具店。
魔力だけは無駄にある店主が営む隠れた名店。
ご家庭から探索のお悩み、武器の開発と魔道具関係なら何でも取り扱うあなたの欲しいを形のにするあなたのためのお店。
ご来店お待ちしています。
はじめまして&お久しぶりです。
久しぶりに書いてみました。
お読みいただきありがとうございました。
楽しく読んでいただけたら幸いです。
ちょっと短いですが、思いついたので投稿してみました。
カスタール魔道具店シリーズ的な感じで短編を不定期で書いていけたらと思っています。
初期作から5年くらい経過していますが…。
途中まで書いていたのですが、会話オンリーになりそうだったのでどうにかならないかと思っていたのですが、登場人物が二人しかいないので会話するしかないかと開き直って書いてみました。
生成AIにて主題歌を作ってみました。
よかったら聞いてみてください。
ランキングタグでリンクを張ってみたけど怒られないかな