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第12話~アンジェロの抗議~

ご興味を持っていただきありがとうございます。

この話も楽しんでいただけたら幸いです。

よろしくお願いいたします。

(あれは……アシュリーとアンジェロか?)


 アンジェロが恐怖に染まった表情でアシュリーに訴えていた。


(あの爆発を間近で見たらこの反応になると思うが……どうしてこうなったんだ?)


 疑問を感じつつも、二人のところまで歩いていくことにする。


「ですからお願いです! あいつを退学にしてください!!」

「これはきみがあえて起こさせた爆発だろう? 彼女は何度も断っていたじゃないか」

「そ……それは……」


 二人まであと五メートルくらいの距離で立ち止まると、そんな会話が聞こえてきた。


(なるほど、アンジェロがバーバラをけしかけたのか……それで……)


 何となく状況を察することが出来たため、そのまま会話を聞くことに決める。

 その間、後ろではフランシスが心配そうに俺のことを見ていたので、大丈夫だという風に頷いてみせた。


「でも……! 魔法もまともに使えないヤツが魔法学校にいていいはずありません!」

「俺も魔法を使えないが教員をやってもいいのか?」

「……えっ!?」

「ラビさん、早いですね」


 俺の言葉に、言い合っていた二人が同時に振り向いた。

 視線が俺に集中する。


「ラビ? 来てくれたの?」


 バーバラもようやく俺の存在に気付き、声をかけてくれた。

 アシュリーとアンジェロと話をするよりも前に、バーバラに事情を聞く。


「どうして俺のいないときに魔法を使ったんだ?」

「ここなら誰もいないからって、あいつに見せてほしいって言われたのよ」


 バーバラは不機嫌そうにこちらをみているアンジェロをちらりと流し見ると、すぐに視線を俺の方に戻した。


(あいつの狙いは恐らくバーバラの退学だろうな)


 状況的に考えて、そうとしか思えなかった。

 アシュリーも偶然訓練場にいたとは考えにくい。


「話を聞かせてくれてありがとう」

「い、いえ……私はどうすれば……」

「とりあえず、寮へ戻れ……フランシス!」

「え? あ! は、はい!!」


 食い入るようにクレーターを眺めていたフランシスだが、小走りにこっちへ近づいてくる。


「フランシス。バーバラを寮へ送ってくれるか?」

「わ、わかりました! バーバラさん、行きましょう」


 フランシスは俺の言葉を聞き、バーバラと一緒に訓練場を後にしていく。


(こっちはこれでいい。後は──)


 安堵の息を吐きながら、俺はアシュリーたちに近付いた。


「アンジェロ、意図的にバーバラに爆発を起こさせたな? どういうつもりだ?」

「あ、いや、だから……」


 俺に問い質され、視線を泳がせるアンジェロ。

 一方、アシュリーは肩をすくめてみせた。


「彼は僕にバーバラさんがどれだけ危険な存在かを訴えてきただけです。あまりに必死だったから、一応来ました」

「そうなのか。それで、アシュリーの判断は?」

「そうですね……」


 アシュリーはクレーターに視線を移し、顎に手を当てて考える。


「誰にも被害がないので特に問題はありませんね」

「そんなっ!?」


 アンジェロが信じられないというように目を見開いた。

 確かにクレーターができた以外には何の問題もないように思える。

 俺は客観的に判断してくれているアシュリーにあえて判断を委ねることにした。


「いいのか? 暴発するかもしれないんだぞ?」

「その時は退学処分でいいんじゃないですか?」


 にっこりと微笑みながら答えるアシュリーの言葉に裏は見えない。


「そうだよな」

「ええ、ここは魔法の学び舎なのですから……失敗して爆発することなんて日常茶飯事です」

「ありがとう。参考になった」


 俺がアシュリーに礼を言うと、アンジェロが俺たちの間に割り込んできた。


「なんでですか!? さっきの爆発を見ましたよね!?」


 アンジェロは俺ではなくアシュリーに対して強く主張している。

 おそらくだが、昼間に俺がバーバラを庇うのを目の当たりにしたからだろう。


「ええ、はっきり目の前で見ましたよ」

「だったら!」

「あなたは可能性があるからとすべてを排除するつもりですか?」


 反論しようとしたアンジェロの言葉を遮り、はっきりと告げた。


「先ほども言いましたが、この学でバーバラさんが爆発させないように学べば良いだけですよね」

「しかし……あの爆発は王宮魔法団でも……」

「私たち教員が王宮魔法団に劣るというのなら、あなたはそちらの方々に学びを乞えばいいのではありませんか?」

「そ、それは……」


 淡々と答えるアシュリーが俺と視線を合わせた。


(なるほど、そういうことか)


 アシュリーの意図を理解し、俺はニヤリと笑ってみせた。


「俺は王宮魔法団を魔法使いとして尊敬しているが、防ぐことに関しては負けていると思っていない」

「ぐっ……ラビさん……あなたは……」


 俺の言葉が癇に障ったのか、アンジェロの表情が歪む。


「……ふん! もう結構です! 僕はこれで失礼します!! 後悔しても知りませんからね!!」


 そう捨て台詞を残すと、アンジェロはそのまま訓練場を後にした。


(あいつ、完全に拗ねてたな……)


 去っていく後ろ姿を眺めながらそんなことを思うのだった。


「さて、ラビさん。お騒がせしました」


 アンジェロの姿が見えなくなると、アシュリーは申し訳なさそうに頭を下げた。


「気にするな。むしろ助かったよ」


 頭を下げるアシュリーに、笑顔で応える。

 正直言って、アシュリーがバーバラの退学を望まないでくれて助かった。


「それにしても、どうしてアンジェロ王子は下級魔法学校に来たんですかね?」

「どういうことだ?」


 アシュリーが不思議そうに呟いたので聞き返す。


「彼は上級魔法学校の推薦をもらっていたんですよ」

「そうなのか!?」

「ええ、全属性の魔法に高い適性があるみたいなんです」

「才能の塊だな……」


 アシュリーの説明を聞き、俺は驚きのあまり目を丸くしてしまった。

お読みいただきありがとうございました。

次回も書き上げたら更新させていただきます。

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